【児童福祉・DX】児童相談業務を専用システムで支え、「業務効率化」と「判断の質向上」を実現
(AiCANサービス / AiCAN)


※下記は自治体通信 Vol.67(2025年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
近年、自治体へ寄せられる児童相談の通報は、増加の一途をたどっている。機微な情報を扱い、難しい判断を迫られることも少なくない担当職員の業務負担増大は、多くの自治体に共通した課題である。そうしたなか、現在児童相談所設置準備を進めている船橋市(千葉県)では、児童相談業務に特化した専用システムを導入し、業務効率化による負担軽減のみならず、相談対応の質向上も実現しているという。取り組みの詳細について、同市担当者2人に話を聞いた。


ただでさえ心労が多い職員の業務負担が大きな課題
―児童相談業務にシステムを導入した経緯を聞かせてください。
疋田 当市では、令和3年に児童相談所の基本構想を策定し、令和8年7月の開設に向けて準備を進めています。基本構想では、児童相談所の体制整備として、「迅速性と機動性の確保」「家庭児童相談情報の一元管理」を目標に掲げています。これまで、当市の家庭児童相談室では、1人の子どもの相談記録が複数の台帳で分散して管理されており、情報管理の煩雑さはきめ細かな相談対応を実践するうえで解決すべき課題でした。
荒井 また当市では、かねてより家庭などの訪問先へ積極的に出向く「アウトリーチ」を基本とした児童相談対応を心がけているため、訪問先でメモをとり、帰庁してからシステムに入力する作業が夜遅くまでおよぶことが少なくありませんでした。近年、相談件数が増加傾向にあり、県内でもトップクラスに相談件数が多い当市では、職務柄、ただでさえ心労が多い職員たちの業務負担が大きな課題であったことから、記録作成の業務負担を軽減できる機能を持ったシステムを求めていました。
―システムをどのように選定したのですか。
疋田 相談記録等の一元管理や、訪問先でも記録作成が可能なシステムであることなどを要件としたプロポーザルを実施しました。その結果、AiCAN社が提供する『AiCANサービス』という伴走型業務支援システムを選定しました。児童相談所の開所に先立ち、令和7年3月から家庭児童相談室で運用を開始しています。
児童相談所設置に向けて、大きな力となるシステムに
―どのようなシステムでしょう。
荒井 『AiCANサービス』は、児童相談にかかわるあらゆる情報を一元管理できるクラウド型の児童相談業務に特化したシステムで、閉域網を使って庁外でも安全に情報にアクセスできることが最大の特徴です。訪問先でもキーボードだけでなく音声やタッチペンでタブレット端末に入力することができ、従来、大きな負担だった入力作業に係る業務負担が減少しました。タブレット端末を使って安全に情報へアクセスできることで、外出時でも緊急の訪問要請に柔軟な対応が可能となり、迅速性と機動性を高めることもできています。訪問先からシステムにアップロードされた相談内容や記録はリアルタイムで共有できるので、チャット機能によって庁内から的確な助言をもらえる体制も整いました。従来のような判断の負担や孤立感はなくなるはずです。
疋田 『AiCANサービス』には、児童相談業務の流れに即した記録・共有機能が充実しており、現場を熟知した開発体制・運用支援体制を感じています。児童相談所の設置準備を進める当市にとっては、「業務負担の軽減」や「相談対応や判断の質向上」に向け、大きな力となるシステムになっています。


―児童相談業務における自治体の課題はなんでしょう。
大きく3つあります。まずは人手不足。そして、記録業務や情報管理の煩雑さ。さらに、業務過多や業務特性に起因する担当職員の心理的負担の増大です。これらの課題を、各自治体が単独で、しかも現場の熱意や気力で乗り切るのはもはや限界です。そこで当社では、児童相談情報をクラウドで管理し、庁内外での記録作成やリアルタイムの情報共有を可能にする仕組みとして、『AiCANサービス』を提案しています。
―特徴を教えてください。
現場の声や臨床研究の知見を反映したうえで、クラウドと閉域網通信といったテクノロジーを有効活用する仕組みが特徴です。当社に蓄積された児童相談分野の専門的知見を活かし、導入自治体での業務設計や課題解決などの伴走支援も行います。実証実験を実施した自治体へのアンケートでは、記録作成の所要時間は60.7%短縮され、登録情報の量や質が向上したと答えた職員は69.1%にのぼります。
―自治体への今後の支援方針を聞かせてください。
当社では、『AiCANサービス』を通じた関係諸機関との情報連携の促進や、AIを有効活用した、さらなる業務効率化を支援します。また、各自治体や有識者を結ぶプラットフォームの役割を担い、現場を支える制度改正や業務の標準化などの支援も後押ししていきたいです。当社は、自治体の共創パートナーとして、すべての子どもたちが安全に育つ社会をつくる一翼を担っていきます。

設立 | 令和2年3月 |
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資本金 | 1億9,500万6,805円(資本準備金含む) |
従業員数 | 25人(令和7年5月現在) |
事業内容 | 児童相談業務支援事業(児童福祉領域のシステム開発、データ分析、現場への伴走サポートの提供)、調査研究事業 |
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