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大阪・関西万博を契機に「HYOGO」を世界に発信

対話と現場主義をモットーにして、「躍動する兵庫」の実現を目指す

対話と現場主義をモットーにして、「躍動する兵庫」の実現を目指す

※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

現在、各自治体がポストコロナ時代に向けての施策に取り組んでおり、新たな独自色の打ち出しを進めている。そうしたなか、兵庫県知事に就任して3年目を迎えた齋藤氏は、「躍動する兵庫」を県政運営のテーマに掲げており、特に大阪・関西万博とさらにその先を見すえた取り組みに注力している。「躍動する兵庫」に込めた想いや、それを実現するための施策とはどういったものか。同氏に詳細を聞いた。

インタビュー
齋藤 元彦
兵庫県知事
齋藤 元彦さいとう もとひこ
昭和52年、兵庫県生まれ。平成14年に東京大学経済学部を卒業後、総務省に入省。省内勤務をはじめ、新潟県佐渡市、福島県飯舘村、宮城県、大阪府と数々の地方自治を経験。令和3年に総務省を退職し、同年に兵庫県知事に就任する。現在は1期目。

県政として「3つの柱」を重視

―知事に就任して3年目を迎えます。現在、注力しているテーマはなんでしょう。

 私が知事に就任したときはコロナ禍の真っただなかで、かじ取りが難しい局面もありました。そうしたなかでも、「躍動する兵庫」の実現をテーマに、令和の新しい時代にふさわしい兵庫をつくっていくことを目指してきました。多くの人に、働きたい、住み続けたいと思ってもらえる。そんな、ワクワクするような兵庫をつくるために、3つの柱を重視しています。それが、「新しい時代の力を育む」「一人ひとりに寄り添う」「人の流れを生み出す」です。

―3つの柱における取り組みを、具体的に教えてください。

 「新しい時代の力を育む」では、特に教育面に力を入れていきます。たとえば、県立高校の生徒からの「トイレを洋式にしてほしい」「体育館にエアコンを整備してほしい」という声を受けて、今年度から6年間で計約300億円を県立学校に対して集中投資し、生徒ファーストの視点に立った教育環境の改善に取り組んでいきます。予算でしっかり支援して、兵庫の未来を担う若者に充実した学校生活を送ってほしいと思っています。

 また、若者の奨学金の返済負担の軽減も図ります。大学生と意見交換をしたところ、多くの学生が奨学金制度を利用しており、その返済負担による将来設計への不安があるとのことでした。そこで、県内の中小企業と連携した奨学金返済支援制度を、就職後5年間で最大約100万円を支援する形に拡充しました。

大阪・関西万博の来場者に、兵庫にも足を運んでほしい

―「一人ひとりに寄り添う」では、どのような施策を行っていますか。

 まず、ヤングケアラー・若者ケアラーを支援しています。このテーマは、支援が必要であってもニーズが表面化しにくい構造となっています。そこで、「兵庫県ヤングケアラー・若者ケアラー相談窓口」の設置や無料の弁当配食サービスの実施などを通じた、悩み相談や福祉サービスへのつなぎといった支援体制を構築しています。

 また、不妊治療支援も強化します。これまで、不妊の原因を調べる検査を夫婦で受ける場合に費用を助成してきましたが、所得が計400万円未満の夫婦に限られていました。そこで、所得制限を撤廃し、支援のすそ野を広げることで、不妊治療を受けやすい環境も整備しています。

―「人の流れを生み出す」についてはいかがでしょう。

 ビジネスと観光の両面での取り組みを強化していきます。

 ビジネス面では、兵庫の成長を支え、世界の製造業をけん引していくために脱炭素やカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めています。官民連携による播磨臨海地域カーボンニュートラルポート形成計画の策定や産業立地条例の改正などを通じて、次世代産業の立地を促進していきます。

 観光面では、令和7年の大阪・関西万博を見すえ、「ひょうごフィールドパビリオン」というプロジェクトがスタートしています。万博への来場者は、国内外から約2,800万人と予想されています。メイン会場の大阪府の夢洲には、県内企業の最先端技術など多彩な魅力を発信する「兵庫県ゾーン」もありますが、ぜひ兵庫にも実際に足を運んでもらいたい。そこで、会場以外の場所でも兵庫の魅力を発信し、人を呼び込む、いわば「拡張型の万博」として同プロジェクトを推進しているのです。

プロジェクトに130プログラムを認定

―プロジェクトの詳細を教えてください。

 たとえば、神戸ビーフの素牛である但馬牛の育成は、先日、兵庫で初めて世界農業遺産に認定されました。このほか、灘五郷をはじめとする酒造りや日本六古窯の1つである丹波焼など、先人の知恵と努力によって受け継がれてきた伝統や産業、文化が兵庫の各地に息づいています。県内各地をパビリオンに見立て、地域の人々が主体となり、それらを発信し、多くの人に来て、見て、体験してもらう取り組みが「ひょうごフィールドパビリオン」です。

 プログラムを募ったところ多くの応募があり、現在130ものプログラムを認定しています。万博を機に取り組みをアピールできる場ができたと、兵庫のみなさんがすごく燃え上がってくれています。同プロジェクトによって、多くの人に兵庫のファンになってもらいたい。また、県内の子どもたちには兵庫の魅力を再発見してもらい、それが「シビックプライド」の醸成につながればと思っています。

 また同プロジェクトでは、もう1つのテーマを発信していきます。

―それはなんでしょう。

 SDGsです。伝統を受け継ぎながらイノベーションを繰り返してきた地場産業や人と環境にやさしい循環型農業など、各プログラムには、地域が持続可能な発展を遂げるための多くのヒントが秘められています。これを、世界に発信していきたいのです。令和5年度の「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に当県が選定されたのも、同プロジェクトが万博の先を見すえた持続可能な取り組みとして評価されたからです。兵庫がSDGsの旗振り役になり、取り組みをけん引していきたいと考えています。

現場に向かい、直接対話することを心がける

―齋藤さんが県政を担ううえで、重視していることはなんですか。

 「対話と現場主義の徹底」です。兵庫は広いですが、現場へ足を運び、自分の目で見て、声を聞くことを心がけています。現場に行くと、数多くのヒントや課題などが見つかりますので、それらを政策形成につなげていきたいという思いです。3つの柱についても、まさに住民の声に耳を傾けることによって生まれた柱だと言えます。

 また、万博が行われる令和7年は、阪神・淡路大震災から30年の節目を迎える年でもあります。これを機に、「震災からの創造的復興」の理念を国内外で共有・継承していきたいと考えています。それが、世界に対する「HYOGO」のブランディングにもつながると思います。そのために、国内外の被災地などと連携し「創造的復興サミット」の開催も検討しています。

 今後もさまざまな施策によって、「躍動する兵庫」を目指します。

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