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「北陸の十字路」に位置する富山県が描く地域ビジョンとは

全県で一丸となって目指すゴールは、「ウェルビーイング先進地域」

全県で一丸となって目指すゴールは、「ウェルビーイング先進地域」

「北陸の十字路」に位置する富山県が描く地域ビジョンとは

全県で一丸となって目指すゴールは、「ウェルビーイング先進地域」

富山県知事 新田 八朗

※下記は自治体通信 Vol.48(2023年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行することが決まるなど、コロナ禍の収束が見通せる状況になりつつある。そうしたなか、各自治体では、アフターコロナを見すえた独自の地方創生策がいよいよ本格化しつつある。たとえば富山県では、県政運営の軸足を、「ウェルビーイング」という概念を中心にすえた「富山県成長戦略」の推進に移している。富山県が、成長戦略の推進を通じて目指す地域の姿とはどういうものか。知事の新田氏に話を聞いた。

ウェルビーイングの実現で、「幸せ人口1,000万」に

―コロナ禍による混乱が続く令和2年11月、新たな知事として就任しました。この間の成果をどのように振り返っていますか。

 まさに、新型コロナウイルス対策に明け暮れた毎日でした。日々感染者が増え、尊い命が犠牲になることで、最優先に対応すべき状況が続きました。そうしたなか、県民の率先した感染拡大防止策への取り組みもあり、感染者数・死亡者数ともに全国平均を下回り、一定の成果を出せたと思います。

 一方、私たち行政が、「経済活動の抑制」と言うべき要請を行わなければならない状況に、一種の無力感を覚えたときもありました。だからこそ、重症化リスクが下がりアフターコロナを見すえられるようになったいま、県政の軸足を、就任後の令和4年2月に策定した「富山県成長戦略」の推進に移しています。そこでは、「ウェルビーイング」という概念を、成長戦略を貫徹するもっとも重要な価値観としています。

―ここでいうウェルビーイングとは、どのような概念でしょう。

 世界保健機関では、健康を「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」と定義し、その「満たされた状態」を指す言葉として「ウェルビーイング」が使われています。成長戦略では、県民だけでなく、本県にかかわるすべての人のウェルビーイングを実現できる県づくりを通じ、「幸せ人口1000万」というビジョンを掲げています。

 ウェルビーイングは多様で幅があり、たとえば「心身の健康」や「経済的なゆとり」、「自分の自由な時間」などの構成要素があります。また、その実感の程度は人によってさまざまだと思います。そのため成長戦略では、県民一人ひとりに合ったウェルビーイングに焦点を当てています。その多様で主観的な意識に一層寄り添う政策を推進し、本県にかかわるすべての人がウェルビーイングを実現できる姿を目指します。

成長戦略が生む経済成長と、ウェルビーイングの好循環

―一人ひとりに合ったウェルビーイングを、どう実現していきますか。

 成長戦略の6つの柱として定めた、「真の幸せ(ウェルビーイング)」「まちづくり」「ブランディング」「新産業」「スタートアップ支援」「県庁オープン化」を基に実現していきます。たとえば「スタートアップ支援」では、起業相談のほかにオフィスや住居のあっせんまで含めた起業支援をワンストップで提供する施設「SCOP TOYAMA」を開設しました。若者を中心に意欲ある人材のチャレンジを最大限支援するものです。また、「真の幸せ」では、たとえば女性が活躍する企業を県が認定する制度を創設しました。多様な人材の活躍促進につながる取り組みです。

 こうした事業を通じて生み出される富山県の力強い経済活動が、県民一人ひとりの「ウェルビーイング」につながり、イキイキと生活する人たちであふれる富山県を形づくると信じています。私は、本県を「ウェルビーイング先進地域」にすることを目指しており、本県には、それを実現できるだけの強みがあると考えています。

―その強みとはなんでしょう。

 まずは「恵まれた環境」です。本県は、水深1,000mの富山湾と標高3,000m級の立山連峰が間近に存在する、世界的にみても稀な地形を有しています。この高低差4,000mの雄大な自然により、本県には、おいしい水や食の多様性、災害の少ない安全な土地など、ウェルビーイングを実現するための基盤が整っています。

 そしてもう1つ、「日本海側の中心に位置する立地」です。そのことで、本県は、東は新潟・長野、西は石川・福井、北は能登半島、南は岐阜・名古屋、さらには日本海を挟んで世界ともつながる「北陸の十字路」に位置づけられます。今後、北陸新幹線の大阪延伸のほか、空港や高速道路の整備が進むことで、本県はさらに多くの人が行き交う交通の結節点になるでしょう。多くの人が集い、さまざまな交流が生まれることで、ウェルビーイングを実現する機会をどんどん創出していけるはずです。

県民とともに、成長戦略を実行していく

―この成長戦略を成功させるためのポイントはどこにありますか。

 私は日ごろから職員に、仕事をするうえで「スピード感」「現場主義」「県民目線」の視点を持つ大切さを伝えており、成長戦略の推進にあたっても同様です。実際、成長戦略策定後の約1年間に、戦略の実現に向けた154件の事業を手がけられたのは、職員にこれらの視点を重視する意識が浸透している表れだと思っています。

 今後さらに、事業推進のスピードを上げるにあたり、多くのステークホルダーを巻き込む仕掛けがカギになると考えています。成長戦略のビジョンに賛同いただいた方々と新たなプロジェクト組成を目指す、成長戦略カンファレンス「しあわせる。富山」の開催はその一例で、すでに2回実施し、多くの県民や県内外の事業者のみなさんが参加しています。行政では考えつかない視点を成長戦略の施策に盛り込み、周囲の関心や知恵を引き寄せながら、必要に応じて成長戦略のアップデートを図る。そして、それらを実行に移していくことは、ウェルビーイング実現への近道だと考えています。

富山県がワンチームとなり、「トライ」を目指す

―新田さんが、県政運営の際に心がけていることはなんでしょう。

 私は学生時代、ラグビー同好会に所属していました。令和元年のラグビーワールドカップで日本代表チームが躍進を遂げましたが、そのときの合言葉が「ワンチーム」です。私も同様に、県政運営では県内15の市町村と県庁を合わせた「ワンチーム」を心がけています。私が知事就任直後に、「『ワンチームとやま』連携推進本部」を立ち上げたのも、そうした意識の表れです。県と市町村が課題を共有し、連携・協力体制を深化させて、引き続き県全体の発展に向けた施策を一丸となって進めていく考えです。

 ラグビーは、選手がそれぞれの個性を発揮した役割を演じてトライをとり、勝利という目標を目指すスポーツです。私たちも一丸となり、県民一人ひとりのウェルビーイング実現という「トライ」を目指します。

新田 八朗 (にった はちろう) プロフィール
昭和33年、富山県富山市生まれ。昭和56年、一橋大学経済学部卒業。同年、株式会社第一勧業銀行(現:株式会社みずほ銀行)入社。昭和58年、日本海ガス株式会社入社。平成12年、日本海ガス株式会社代表取締役社長に就任。平成30年、日本海ガス絆ホールディングス株式会社代表取締役社長に就任。令和2年、日本海ガス株式会社代表取締役社長および日本海ガス絆ホールディングス株式会社代表取締役社長を退任。同年11月、富山県知事に就任。現在1期目。
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