
※下記は自治体通信 Vol.72(2026年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
令和7年12月17日、一般財団法人GovTech東京が主催した、社会課題解決への新しいアプローチを考えるイベント『Go!公共』が東京・千代田区で開催された。同法人は、小池百合子都知事の肝いりで設立された都庁の外部組織。副知事で大手IT企業の経営経験を持つ宮坂学氏が理事長を務め、デジタル人材育成とDX推進に官民協働で取り組みながら、都と都内62区市町村を含めた行政サービスのDXを進めている。今回は、宮坂氏自ら登壇したイベントの基調講演をレポートする。
公共サービスをより便利に。行政DX推進に専門性を発揮
GovTech東京は、新しい行政DXの仕組みづくりに「オール東京」で挑む目的で設立された。デジタル人材の育成とDX推進に官民協働で取り組み、専門性を発揮して、東京全体のあらゆる行政サービスについてDXを推進していくことをめざしている。
理事長を務める宮坂氏は講演の冒頭で、スクリーンに帆船の写真を映した。そして、「ビジネスの世界では、組織は乗り物にたとえて語られる。そこで大切とされるのが、目的地をどこに決めるか以上に、誰を乗せるかを決めることであり、それが組織の命運を握るといわれる」と説明した。
東京都でデジタル人材を採用するにあたっても、「誰を乗せるか」を意識したという。「東京という世界有数の巨大都市を改革していくための船をつくることにした。そして、情報技術で動かす人を集めて、その船に乗せることにした」と宮坂氏は話した。
そのうえで、GovTech東京を設立し、都と都内62区市町村の行政サービスを動かす船の“乗組員”として、エンジニアやデザイナー、バックオフィスのエキスパートなど、多種多様なバックボーンを持つ人材を積極的に募って、採用した。そして、その人たちに経験とスキルを存分に発揮してもらうことによって、東京全体のDXを推進し、課題解決のスピードを上げていったという。講演では、その取り組みの具体事例と成果も発表された。
行政手続きのスマホ完結を、世界の自治体に広げたい
具体的な取り組み事例のひとつとして「保活(保育園探し)」のDXについて紹介された。実体験として保育園探しに苦労した人からの「なんとかして、大きな負担がかかる手続きをデジタル化できませんか」と要望されたことが、取り組みのきっかけになったという。
従来は役所に足を運んで大量の紙の案内・資料を受け取り、必要となる複数の申請をするために、それを熟読しなければならず、入園までに相当な手間がかかっていた。その課題が、オンラインで保育園の空き状況の確認、見学申請、入園の申し込みまでができる保活ワンストップポータルサイトを立ち上げて運用を開始したことによって解消されつつある。
「いまだ紙に頼りがちでアナログな行政手続きなどを、スマートフォンひとつで完結するように変えていきたい。そして、その成果を広く伝えて、全国、さらには世界の自治体にも展開していきたい」と宮坂氏は抱負を語る。
宮坂氏は、自身が副知事に就任した当時の都庁のオフィスを「どのデスクにも書類が山積みになっていた」と振り返った。また「会議にモバイルPCを持って参加する人は、ひとりもいなかった」と話した。それが都庁でのデジタル人材の採用や、GovTech東京を設立したことによって、たくさんのIT人材が行政DXに携わるようになった。その結果、都庁内の風景は大きく様変わりしたという。
宮坂氏は、多種多様なバックボーンを持つ人材を、行政サービスを動かす船の“乗組員”として迎え入れ、ともに歩んできた2年間を総括。「最大の成果は『DXで公共をよくしたい』と考える人材がたくさんいるとわかったこと」と締めくくった。



左 : イベント後半は公共に貢献するゲストを迎えてのパネルディスカッション
中央 : コンサルティング会社に在籍しながら江東区の行政DXを推進する三上氏(左)

宮坂氏は「設立から2年間の活動成果」と題する講演で「統合年次報告書2025」を作成して公開した狙いを「より多くの人から意見をもらうためにつくった。みなさんからのフィードバックがほしい」と説明した。引き続き、中期経営計画で定めた「サービス品質の変革」「内製開発力の獲得」「持続可能な経営基盤の確立」の3つの軸で、主要な重要目標達成指数(KGI)を設定し、実績を確認しながら計画を推進していくという。

イベント後半のパネルセッションでは「これからの公共」をテーマに、ソーシャルキャリアの魅力や公共分野における人的資本の重要性を深掘りするとともに、キャリアの新しい可能性を探る議論が展開された。パネリストとして、同法人が運営する人材紹介サービス『GovTech東京パートナーズ』を通じて江東区CIO補佐官に就任した三上泰地氏も登壇し、「DX推進は社会課題解決のもっとも有力な選択肢のひとつ」と話した。





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