【脱炭素・資源回収】現場の作業性を優先したEV導入で、資源回収の質を守り脱炭素を推進
(ELF EV / いすゞ自動車)


※下記は自治体通信 Vol.73(2026年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
持続可能なまちづくりにおいて、資源回収は地域環境と住民生活を支える不可欠な活動である。カーボンニュートラルの実現が自治体の責務となるいま、この資源回収の現場にも脱炭素化への対応が求められている。こうしたなか、大田区(東京都)内の資源回収を同区から受託している大田区リサイクル事業協同組合は、資源回収車両のEV化を進め、回収業務の安定稼働と環境対応の両立を実現した。取り組みの詳細について、同組合の理事3人に聞いた。



「1ナンバー」車両では、狭隘な道を通行できない
―資源回収車両のEV化を推進することになった背景を教えてください。
西 大田区リサイクル事業協同組合は、大田区内にある23社の民間事業者が結集し、区全域の資源回収業務を担っています。この仕事を始めてから30年以上が経過し、地域住民の協力のもとで資源循環の一翼を担ってきました。昨今、カーボンニュートラルの実現やSDGsへの対応が社会全体の重要な命題となっているなか、環境への配慮は組織として当然取り組むべき義務であると考えています。行政の環境政策に先んじて応え、地域を支える組織としての役割を全うするためにも、資源回収車両のEV化は避けて通れない道だと判断しました。
張替 私たちの仕事は、回収した資源を再び世の中に戻していくという、まさにSDGsそのものを体現する業務であるという自負があります。しかし、いくら事業内容が環境に良くても、回収に使うトラックが排ガスを出し続けていては、本当の意味での環境貢献とは言えません。組合員の各企業にEV導入を促すにあたっては、まずは私たち理事が率先して範を示す必要があると考え、令和5年春にEV化の推進を決定しました。
―EV化に向けて、どういったことを重視しましたか。
笠井 もっとも重視したのは、都市部の走行、特に大田区特有の道路事情に適した車両サイズであることです。大田区内には非常に道幅が狭い、狭隘な道路が数多く存在します。住宅が密集している地域では、電柱が張り出していたり、すれ違いが困難な場所も珍しくありません。現在の資源回収ルートは、長年の経験に基づき、現行の2トントラックが通れることを前提に組まれています。もしEV化によって車両が少しでも大きくなってしまえば、これまで曲がれていた角が曲がれなくなり、効率的な回収ができなくなってしまいます。住民の生活に密着したサービスである以上、車両の変更によって作業品質を落とすことは絶対に許されませんでした。
張替 検討を始めた当初は、今回導入した車両とは別のメーカーの車両が候補にあがっていました。しかし、提示されたのは「1ナンバー」登録の普通貨物車サイズであり、どうしても現在の車両より一回り大きくなってしまうことがわかりました。大田区の現場を知る私たちとしては、これでは導入は難しいと頭を抱えていたのです。そうしたときに着目したのが、いすゞ自動車の『エルフEV』でした。この車両は、組合企業が使用しているディーゼル車と同じ「4ナンバー」登録が可能な小型貨物車サイズを実現しており、これならいまの回収ルートを変えずに走れると直感しました。その後、いすゞ自動車首都圏社から試乗会実施の提案があり、理事がそろって参加することにしました。
従来の運転感覚と変わらない。その安心感が導入の決め手に
―実際に試乗してみた感想はいかがでしたか。
張替 加速が非常にスムーズで驚きましたし、ブレーキの利き具合も非常に安定していました。特に印象的だったのは、アクセルを離した際の回生ブレーキの感覚です。他社のEVでは回生ブレーキが強く利きすぎて、まるで急ブレーキをかけたようなカクカクとした挙動になるものもありましたが、いすゞ自動車の車両は現在のディーゼル車で使っている排気ブレーキと非常に近い、自然な減速感でした。現場のドライバーは毎日、回収業務において何度も発進と停止を繰り返します。操作感が大きく変わってしまうと疲労や事故につながりかねませんが、実際に乗ってみて、これまでの運転感覚となにも変わらないことがわかり、それが大きな安心感となって導入の決め手となりました。
―航続距離についての不安はありませんでしたか。
張替 正直なところ、最初は非常に気になっていました。しかし、いすゞ自動車首都圏社による、冬場の暖房使用や荷物の積載状況を考慮した航続可能距離のシミュレーションの結果、私たちの毎日の業務は問題なく行えることがわかりました。資源回収は決まったルートを毎日走るルーチンワークですから、日によって走行距離が大きく変動することはありません。たとえ諸条件によって航続距離が多少変動したとしても、私たちの実務範囲であれば十分に対応できると判断しました。
住民満足度の向上や、職場のイメージ刷新にも寄与
―充電インフラなどの準備はどのように進めましたか。
張替 急速充電器があればより安心ですが、設置費用が非常に高額であるという課題がありました。ただ、シミュレーション結果をもとに検討を重ね、時間をかけて充電する普通充電器でも、夜間の充電で十分に運用可能であるという結論に達しました。そこで、令和7年末から令和8年1月にかけて、まずは当組合の理事を務める会社を中心に合計5台のEVトラックを導入するのと同時に、それぞれの事業所に普通充電設備を設置し、1日の業務が終わった後に充電する体制を整えました。これまでのところ、充電切れによるトラブルなどは発生しておらず、運用は非常に安定しています。
―導入後、EVトラックを運転する作業員の反応はいかがですか。
笠井 現場の作業員からは、「まったく違和感なく、スムーズに業務を行えている」という報告を受けています。むしろ、エンジン音がなくなったことで車内の静粛性が高まり、運転中の疲労が軽減されたという声もあがっています。また、実際にまちなかを走っていると、住民の方々から「EVのトラックなんですね」と声をかけられることもあるそうです。資源回収は早朝から行うこともあるため、以前はエンジン音に対して厳しいご意見をいただくことも稀にありましたが、EVであればそうした騒音トラブルを未然に防げるため、住民満足度の向上につながるのではないかと期待しています。
張替 また、組合として、SDGsの達成に積極的に取り組む事業者を認定する「SDGsおおたスカイパートナー」を取得しました。EVトラックの導入は、そうした私たちの取り組みが目に見える形となる大きなシンボルになっています。加えて、採用面でも良い影響を実感しています。特に若い世代の従業員からは、「最新のEVを運転してみたい」「環境に配慮している良い会社で働けている」という声が聞かれ、職場のイメージ刷新にも大きく寄与していると感じています。
災害時は「走る蓄電池」として、非常用電源の役割も
―EV化をめぐる今後の方針を聞かせてください。
笠井 まずは先行導入した5台について、コスト面やメンテナンス、冬場のバッテリー性能などを詳細に検証していきたいと考えています。私たちの仕事は住民生活を支えるエッセンシャルワークであり、1日たりとも止めることができません。そのため、環境性能を追求しつつも、現場の安定稼働を最優先に見極めていく必要があります。理事を務める会社でしっかりとした実績を積みあげることが、組合企業全体への普及に向けた確実な一歩になると確信しています。
張替 無理に導入を促すのではなく、先行する私たちの実績を見て「これなら現場で使える」と納得してもらうことが大切だと考えています。加盟企業が自発的にEVシフトを選択する流れをつくり、いずれは全23社が最低1台ずつは保有する、地域一体の環境配慮体制を築いていきたいですね。
西 今年2月、私たちは大田区と「災害時における資源・ごみ処理等応急対策活動に関する協定」を締結しました。そのため、EVについては、有事の際の動力源を考慮し、停電時でも燃料補給が容易なディーゼル車とのバランスを保ちつつ、運用していく方針です。また、EVには非常用電源となる「走る蓄電池」として活躍する可能性もあります。平時は環境、非常時は支援と特性を使い分け、地域の安全と持続可能なまちづくりに貢献したいと考えています。

導入事業者の声①
「まるで乗用車のよう」。快適な乗り心地が従業員から好評

EVトラックを導入してまず驚いたのは、静粛性です。ディーゼル車のようなエンジン音がせず、従業員は早朝の住宅街でも「住民の睡眠を妨げないか」と心配することなく作業ができています。「まるで乗用車のよう」と話すほど走りがスムーズなため、乗り心地は好評です。また、従来は業務の終了後にガソリンスタンドへ寄る必要がありましたが、いまは自社に戻って充電器を差すだけで翌朝には満充電になっています。この給油の手間がなくなったメリットはとても大きいです。当初は航続距離を懸念し、冬場の暖房使用を極力控えていましたが、別の事業者から「エアコンをしっかり使っても走行に支障はない」と助言をもらい、いまでは寒さの厳しいときも快適に運転できています。これなら夏場の冷房使用時も安心して業務に当たれそうです。

導入事業者の声②
現場のストレスを減らしつつ、より地域に配慮した作業が可能に

現場のドライバーからは「非常に乗りやすい」と驚きの声が上がっています。EVはディーゼル車のような振動がなく、加速も極めてスムーズなため、長時間の運転でも疲れにくいと好評です。ドライバーの身体的・精神的な負担が軽減されることは、安全運行を維持するうえでも大きなメリットだと実感しています。また、実務上の大きなメリットとして「DPD再生」の手間がなくなったことがあげられます。ディーゼル車では定期的に車両を停止させ、排気ガスの有害物質を燃焼処理する必要がありましたが、EVならその時間は一切不要です。処理中の音や熱が通行人に与える影響も最小限に抑えられ、気兼ねなく作業を行えるようになりました。現場のストレスを減らし、より地域に配慮した資源回収が実現できていると実感しています。

ここまでは、資源回収業務にEVトラックを導入し、安定した業務を継続させつつ、環境対応を進めている大田区リサイクル事業協同組合の取り組みを紹介した。ここでは、同組合を支援した、いすゞ自動車首都圏の担当者に取材。自治体がEVトラックを導入するにあたっての重要なポイントについて、詳しく聞いた。


「実務」と「コスト」の両面が、導入検討時の関心事に
―自治体における資源回収車のEV化の状況をどう見ていますか。
加藤 自治体を訪問するなかで、カーボンニュートラルの実現に対する意識は年々、確実に高まっていると肌で感じています。特に公用車として使われる乗用車に関しては、すでに庁舎への充電インフラ整備が進み、導入が当たり前になりつつあります。一方で、資源回収やゴミ収集を担うトラック、いわゆる「働く車」の電動化については、非常に前向きな関心がある一方で、慎重な検討を重ねているという状況があります。これには明確な理由があり、乗用車とは比較にならないほど、トラックには「実務の継続性」が強く求められるからです。
山﨑 EVトラックの導入を検討する自治体や委託業者がもっとも注視しているのは、大きく2点に集約されます。1つ目は「業務への適合性」です。資源やゴミの収集は1日でも止まれば住民生活に直結し、地域の衛生環境にも甚大な影響をおよぼします。そのため、現在のディーゼル車で通っているような狭隘な道路を同じように走り切れるのか、車両のサイズや仕様が過酷な現場の運用に耐えうるのかといった、実運用面での確実性がなによりも優先されます。そして2つ目が「導入や運用にかかるコスト」です。単なる環境性能の向上という理想論だけでなく、初期の車両価格や充電設備の整備費用、さらには長期にわたる運用において、財政的に無理のないEVシフトが実現できるかという厳しい視点があります。この「実務」と「コスト」の両面で確信が持てないことが、導入への心理的なハードルとなっているのが現状です。

航続距離や消費電力を、詳細にシミュレートできる
―そうした課題を解決するために大切なことはなんでしょう。
加藤 まず重要なのは、データを用いた「業務への適合性」の客観的な検証です。現場の不安を払拭するためには、主観的な判断ではなく、「本当にいまの業務をEVに任せられるのか」を数値で明らかにしなければなりません。次に、コストを考慮した「運用インフラの最適設計」です。車両導入と充電環境の整備を切り離して考えるのではなく、中長期的なコスト試算に基づいた総合的な計画が必要になります。そして、EV化を単なる車両の置き換えと捉えず、業務効率の改善や組織の持続可能性を高める「機会」として前向きに活用する視点を持つことも大切です。そこで当社では、自治体のみなさんがこれらのステップを地域の特性に合わせて着実に踏み、EVトラック導入を成功に導くことができるよう、専門知識を備えた専属チームを結成して伴走支援を行っています。
―具体的な支援内容について詳しく聞かせてください。
加藤 現場でもっとも懸念される航続距離や消費電力については、実際の回収ルートや日々の稼働実態に基づき詳細にシミュレーションすることで、自治体の不安を解消する支援を行っています。私たちは、ドライバーが日々走行している具体的な環境下でどれだけ電力を消費するかを、独自のプログラムを用いて可視化しています。特に、数年が経過してバッテリーが劣化した状態でもそのルートを完走できるかどうかを数値で示すことで、将来的な運用リスクを事前に排除することができます。こうしたデータに基づいた客観的な裏付けを提示することで、現場の責任者が安心して一歩を踏み出せるよう伴走します。
山﨑 また、自治体の業務の継続性を守るため、現場の制約に合わせた車両仕様の提案にも力を入れています。資源回収の現場では、住宅街の細い道や電柱が張り出した箇所など、2トントラックのサイズでなければ通行できないルートが多々あります。これに対し、『エルフEV』は従来のディーゼル車と同等の「4ナンバー登録」が可能な車種も選択でき、これまでの回収ルートやオペレーションを一切変えることなくEV化を進めることが可能です。さらに、普通免許で運転可能な『エルフミオEV』は、深刻なドライバー不足に悩む自治体や事業者にとって、人材採用の門戸を広げ、安定的な運行体制を維持するための極めて有効な解決策にもつながります。
10年後も見据えた試算で、経済合理性を精査
―コスト面の課題についてはどのように支援していますか。
加藤 EVトラックは初期費用こそ高価ですが、補助金を活用した導入コストの抑制に加え、電気代やメンテナンス費を含めた「保有期間全体のトータルコスト」で判断することが重要です。そこで私たちは、10年後を見据えた長期的なコスト試算を行い、ディーゼル車との比較でどのような経済合理性が生まれるかを精査してお伝えします。あわせて、充電器の種類や設置台数についても、施設の受電能力や電力契約に合わせた最適なプランを構築し、過剰な設備投資を避ける設計も支援します。自治体の財政状況に合わせ、リースプランや各種補助金の申請サポートなどもきめ細かく提案できます。
山﨑 EVを導入する場合、運用における充電時間の管理は極めて重要です。多くの現場では「EVに慣れていない」というのが正直なところですので、運用の構築からお手伝いしています。たとえば、業務から帰ってきたら清掃を行い、そこからどのタイミングで充電を始めるのか、翌日の走行距離に対してどの程度まで充電しておくべきか、といった新しい1日のルーティンを定義する必要があります。当社では、独自のコネクテッドサービスを通じた運行データの分析に加え、導入後も定期的にお客さまのもとへ伺うフォローアップを行っています。「使い勝手はどうですか」といった現場の声をていねいにヒアリングし、継続的に状況を確認しながら進めていく伴走体制を大切にしています。

導入によるイメージ向上が、若手や未経験人材の確保にも
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
加藤 自治体のみなさんが必要としているのは、安定した住民サービスの提供という一点に尽きると思っています。ですから、まずは実車を見て、乗って、その性能を肌で感じていただくことが大切です。トラックに関しては、やはり「EV化はまだ早いだろう」と感じている自治体がまだ多いのが実情です。そうした不安を解消し、安心して乗っていただけるよう、当社はいすゞ自動車のEVトラック導入に伴う課題を解決するためのトータルソリューションプログラム『EVision』なども活用し、具体的な運用方法のアドバイスを提供しています。実証データを示しながら、最初の一歩を踏み出すための最適な後押しができればと考えています。
山﨑 EVトラックの導入は、カーボンニュートラルという社会的責任を果たすだけでなく、職場環境の劇的な改善にも寄与します。エンジン音や振動がなくなることでドライバーの疲労は大幅に軽減され、排気ガスのないクリーンな作業環境は職員の健康維持にもつながります。こうした「現場に優しい」という特徴や、最新の技術を駆使する「環境に配慮した先進的な組織」というイメージは、若手や未経験層の人材確保において強力な武器になります。住民サービスの質向上と、選ばれる職場づくりを両立させる手段としてEVトラックの導入を検討したい自治体のみなさんは、ぜひ気軽にご連絡ください。

富士山五合目の急勾配も完走。「過酷な実証」で現場の不安を解消

いすゞ自動車首都圏では、EVトラックに対する「本当に坂道を登れるのか」「荷物を積んで走り切れるのか」といった現場の切実な不安を解消するため、実車を用いた試乗会や過酷な環境での実証走行を積極的に行っています。カタログスペックを説明するだけでは伝わらないEVの真価を、具体的な実績を通して伝えることが私たちの役割です。
その象徴的な取り組みの一つが、山梨県の富士山五合目までをのぼる走行実証です。標高2,000mを超える急勾配の続くルートを、実際に重い荷物を積んだ状態で完走できるかを検証しました。結果として、登り坂での力強いトルクはもちろん、下り坂での回生ブレーキによるエネルギー回収効率の高さも証明することができ、高低差のある地域での運用に対する大きな自信となりました。また、資源回収の現場を想定したデモでは、実際に古紙などの資源を荷台いっぱいに満載した状態でまちなかを走行し、「ストップ&ゴー」を繰り返す実務さながらのテストも行っています。
こうした「実運行に近い条件」でのデータを蓄積し、自治体や事業者の実際の回収ルートに当てはめてシミュレーションを行うことで、漠然とした不安を確信へと変えていただくのです。私たちは、これからも試乗会や運行トライアルを展開し、自治体のみなさんに安心してEVシフトを実現していただけるよう、提案し続けていきます。


| 設立 | 昭和21年11月 |
|---|---|
| 資本金 | 1億円 |
| 売上高 | 1,872億円(令和7年3月期) |
| 従業員数 | 1,918人(令和7年3月末現在) |
| 事業内容 | いすゞ自動車、およびいすゞ自動車販売が供給する大型・中型トラック、小型トラック、バスの販売など |
| URL |



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