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先進事例2023.03.15
連載「大阪発 公民連携のつくり方」第21回

「攻めの行政運営」による地方創生に向け、公民連携の推進は不可欠 インタビュー ブランドチャンネル 大阪府 大阪府泉南市 大阪府公民戦略連携デスク 自治体通信48号

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大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第21回

「攻めの行政運営」による地方創生に向け、公民連携の推進は不可欠

泉南市長 山本 優真

※下記は自治体通信 Vol.48(2023年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第21回目となる今回は、令和5年4月に公民連携の専門窓口として「公民連携担当」を設置予定の泉南市を取材。公民連携に対する考え方や取り組みの成果などについて、市長の山本氏と同市担当者に話を聞いた。

[泉南市] ■人口:5万9,527人(令和5年1月末日現在) ■世帯数:2万6,449世帯(令和5年1月末日現在) ■予算規模:435億616万7,000円(令和4年度当初) ■面積:48.98km2 ■概要:大阪府南部に位置する。泉州沖の人工島につくられ、平成6年に開港した関西国際空港は、一部が市域に含まれている。市内の熊野街道沿いには、国指定史跡など多数の文化財が残っている。特産品は、「泉南あなご」「泉だこ」「水なす」などが有名。
泉南市長
山本 優真 やまもと ゆうま

公民連携の推進に向け、KPIを設定

―泉南市では公民連携の専門窓口を設置すると聞きました。その経緯を教えてください。

 私は、令和4年5月の市長就任以前に泉南市議会議員を2期務めていた頃から、ある種の「はがゆさ」を感じていました。当市には、たとえば関西国際空港や複数の広域幹線道路といった良好な交通インフラ、新鮮な地場食材、多くの歴史・文化遺産といった「ポテンシャル」があるのに、それを地域活性化に活かせていない行政運営に対してです。この10年で人口は約8%減少し、空き家・空き店舗は増え続けています。私は市長就任に際し、地域活性化のために必要なのは、「攻めの行政運営」だと考えました。そのためには公民連携の強化は不可欠で、令和5年4月に新設する成長戦略室に「公民連携担当」を置くことにしたのです。

―「公民連携担当」にどのような期待をしていますか。

 公民連携の推進は当然ではありますが、行政にはない「民間の感覚」をぜひ身につけてほしいです。「攻めの行政運営」に向けて、民間のスピード感やノウハウは不可欠です。たとえば、公民連携事業で開発した都市公園「泉南ロングパーク」を持続的に賑わう公園にするには、魅力的な施設運営のあり方やイベント企画を、今後も運営企業と連携して考えなければなりません。「公民連携担当」を中心に、そうした取り組みによって庁内全体に培われていく創意工夫の意識は、当市のポテンシャルを活かした地域活性化の推進に必ず役立つはずです。私は、「公民連携担当」にこれまでの行政運営の常識を変えるだけの働きを期待しているぶん、KPIを設定して成果を求めていきますよ。

―今後の市政ビジョンを聞かせてください。

 私は全国最年少の市長と言われていますが、「若さ」の特徴を活かし、固定観念に縛られることなく、豊かな発想で地方創生策を手がけていきます。市長就任から約9ヵ月間で、自ら300以上の民間企業と対話を重ねてきました。当市の魅力に磨きをかける事業を公民連携で推進し、「人を呼び込めるまち」にしていきます。


賑わい創出に向けた取り組みを、つなげる「ハブ機能」発揮へ

泉南市 総合政策部 次長 兼 政策推進課長 伊藤 公喜

令和5年4月に、「公民連携担当」を立ち上げる泉南市。公民連携による「攻めの行政運営」で、地域活性化の取り組みを強化する方針だ。その象徴と位置づける事業が、都市公園「泉南ロングパーク」事業。「持続的に賑わう都市公園」の実現に向け、公民連携をどのように推進していくのか。「公民連携担当」を統括する伊藤氏に、話を聞いた。

泉南市
総合政策部 次長 兼 政策推進課長
伊藤 公喜 いとう まさき

公民連携で開発できた公園。年間来園者は約150万人に

―「泉南ロングパーク」とは、どのような施設ですか。

 関西国際空港対岸の「りんくうタウン」内に広がる、約10.7haの都市公園です。大和リースと公民連携事業で開発し、令和2年7月にオープンしました。グラウンドやアスレチック施設のほかに、飲食店、合宿所、温泉施設、バーベキュー施設などが集積しています。本事業は、民間事業者の創意工夫を最大限活かせるようPFI*1制度を活用したもので、事業推進のため、建ぺい率の緩和や固定資産税の減免措置を行っています。コロナ禍におけるオープンではあったのですが、年間来園者は約150万人を記録しています。

―多くの人で賑わっていますね。

 ええ。人口約6万人の当市にとって、初めて「ランドマーク」と呼べる場所を開発できたと考えています。そもそもこの場所は、当市が大阪府から無償で譲り受けたもので、海辺に面した絶好のロケーションを活かした都市公園の開発を目指していましたが、財政難から市単独ではなかなか着手できずにいました。

 そこで、民間活力を導入した公園整備の実現に向け、民間事業者の創意工夫を最大限に活かせるよう、PFI制度を活用しました。今後の運営にあたっては、現在のこの賑わいを持続的なものとするためにも、4月に発足する「公民連携担当」が大きな役割を果たすべきだと考えています。

―どのような役割でしょう。

 賑わい創出に向けた取り組みをつなげる「ハブ」としての役割です。たとえば、庁内の各担当課に呼びかけることで、子育て世帯や高齢者、さらには関西国際空港を利用する観光客に対して、来園を促すさまざまな企画を持続的に展開できるようになります。また、市が公民連携事業で得られた成果を、大和リースとのPFI事業において、さらに活かすことができればと思います。「泉南ロングパーク」は、当市だけでなく、泉南地域全体を活性化する大きなポテンシャルを持っています。賑わい創出に向けた「攻めの行政運営」の象徴となる場所にしていきます。


支援企業の視点

「賑わい創出への想い」を共有する「公民連携担当」は心強い存在

大和リース株式会社 執行役員 大阪本店長 堀越 良一
大和リース株式会社
執行役員 大阪本店長
堀越 良一 ほりこし りょういち

―泉南市との取り組みに、どのような意義を感じていますか。

 数年前まで未整備だった公園用地が、泉南市の積極的な政策と当社のノウハウを掛け合わせたことで、賑わいあふれる都市公園になりました。当社はデベロッパーとして商業施設の開発やPFI事業の運営を通じ、地域の活性化に取り組んできましたが、全国にはさまざまな理由で開発がなかなか進まない行政財産が数多く存在していると認識しています。この「泉南ロングパーク」では、都市公園を一からつくる開発業務と運営業務に携わることができました。自治体が抱えるまちづくりの課題解決に新たな提案メニューが加わったと実感すると共に、今後当社が目指す公益重視型の取り組みにも通じると思っています。

―新たに発足する「公民連携担当」に、どのような役割を期待していますか。

 これまでも泉南市には、漁業組合や地元企業の紹介などを通じた地域とのコミュニケーションの醸成はもとより、来園促進イベントの共催などで非常に手厚くバックアップしていただきました。この4月からは専門窓口ができることで、地域連携や賑わい創出など、私たちの公園事業への想いをより深く共有いただけるものと期待しています。先日も市長や公民連携担当になる職員の方々から、「一緒に盛り上げていきましょう」と心強い言葉をいただきました。都市公園という重要な社会資本の持続的な運営に向けて、ベクトルを合わせた二人三脚の取り組みで、今後も市民満足度向上のお役に立てれば幸いです。

堀越 良一 (ほりこし りょういち) プロフィール
昭和39年、兵庫県生まれ。昭和62年、大和リース株式会社へ入社。店舗建築リース本部営業課(当時)に配属。奈良、神戸、名古屋の各支店長を経て、平成26年、執行役員就任。平成27年、流通建築リース事業部 副事業部長。令和2年から現職。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

KPIを定めて公民連携に取り組む、積極的な「姿勢」に期待

 泉南市と大和リースによる「泉南ロングパーク」事業は、市のランドマークと呼ばれるだけの賑わいを、公民連携によって生み出すことに成功した大規模な公園整備事業として注目されています。

 同市は、公民連携のさらなる推進に向けて、この4月から「公民連携担当」を設置します。そこでは、新規の公民連携事業だけでなく、既存の公民連携事業について新たな企業のノウハウを加えるなど、既存事業の「ブラッシュアップ」を図る取り組みも進めたいとしています。

 公民連携の「実績づくり」について固い決意を持つ山本市長のもと、KPIを定めて積極的に取り組む同市の姿勢に期待します。

※本連載は今回(第21回)をもって終了します。

*1:※PFI : 公共施設などの建設、維持管理、運営などを民間の資金、経営能力および技術的能力を活用して行う手法

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