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先進事例2023.03.15
連載「大阪発 公民連携のつくり方」第20回

公民連携による「共創」を通じて「変わり続ける市役所」を目指す

公民連携による「共創」を通じて「変わり続ける市役所」を目指す

大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第20回

公民連携による「共創」を通じて「変わり続ける市役所」を目指す

門真市長 宮本 一孝

※下記は自治体通信 Vol.47(2023年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化・多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第20回目となる今回は、令和4年10月に公民連携の専門窓口として「公民連携デスク」を設置した門真市を取材。公民連携に対する考え方や取り組みの成果などについて、市長の宮本氏と同市担当者に話を聞いた。

[門真市] ■人口:11万7,937人(令和5年1月1日現在) ■世帯数:6万3,269世帯(令和5年1月1日現在) ■予算規模:962億5,661万3,000円(令和4年度当初) ■面積:12.30km2 ■概要:大阪府北東部に位置する。市域が比較的小さくまとまり、大きな起伏がなく、平坦な地形であることが特徴。そのため、「高齢者や障がいのある人などにとっても暮らしやすいまち」だとしている。もともと農村の余剰労働に依存する農村工業が代表的産業だったが、古川橋変電所の建設を起点に数多くの民間企業が移転し、卓越した技術を持つものづくり産業が盛んなまちとなった。
門真市長
宮本 一孝 みやもと かずたか

これからの行政に求められる「当たり前の見直し」

―門真市が公民連携の専門部署を新設した経緯を教えてください。

 大阪市に隣接する当市は、大手電機メーカーの企業城下町として発展してきた歴史があり、高度経済成長期にあたる昭和35年からの10年間で見てみると、人口は約3万4,000人から約14万人へと一気に増えました。人口増加と共に活発なコミュニティが醸成され、行政と住民による協働のまちづくりも数多く展開してきました。一方で、複雑化・多様化し続ける近年の社会課題に対応するためには、行政サービスの変革が求められています。そこで、民間企業との連携を強化し、社会課題の解決を通じて新たな価値を創出する「共創」の推進を目的として、令和4年10月に「公民連携デスク」を立ち上げました。

―公民連携デスクに、どのようなことを期待していますか。

 共創推進の窓口として情報収集に努めてもらうことはもちろん、職員の意識改革を促す働きにも期待しています。これからの行政運営には、「当たり前の見直し」が求められています。前例踏襲主義では、世の中の変化にうまく対応した行政サービスなど提供できませんから。それでも、実際に民間企業と連携して取り組みを進める現場の職員は、仕事のスピード感など「これまでの当たり前」とは違う状況に戸惑うかもしれません。その際、公民連携デスクには、職員に伴走して「当たり前」の壁を乗り越えるサポート役を期待しています。職員は、そうした成功体験の積み重ねにより変化を恐れなくなるはず。その結果、どんな時代にも対応可能な「変わり続ける市役所」になれると信じています。

―今後の市政ビジョンを聞かせてください。

 当市では、駅前の大規模再開発事業をはじめ複数のプロジェクトが進んでおり、そこでは、行政と民間がパートナーシップを構築し、お互いの得意な分野で力を発揮しながら事業展開する公民連携のまちづくりを展開しています。私たち自身が新たな挑戦をしていくことで、創造的で活力のあるまちづくりを、民間企業と「共創」できると考えています。


認知症予防策の効果検証を積み重ね、健康寿命を延伸できる市に

門真市 企画財政部 企画課 課長 舩木 慎二

門真市は令和4年2月に、東和薬品と協働し、認知機能低下の早期発見と予防に向けたプロジェクトを立ち上げた。同市公民連携デスク担当の舩木氏は、「健康寿命の延伸に大きく寄与するプロジェクト」と期待を寄せる。このプロジェクトを立ち上げるに至った経緯や取り組みの内容などについて、同氏に聞いた。

門真市
企画財政部 企画課 課長
舩木 慎二 ふなき しんじ

全国平均を上回る高齢化率。「健康寿命の延伸」は重要政策

―東和薬品と共に、認知症予防に関するプロジェクトを立ち上げたそうですね。

 はい。当市では、高度経済成長期に一気に増えた子育て世代が現在高齢者層に入っていることから、高齢化率が全国平均を上回る水準です。そのため、「健康寿命の延伸を通じた住民のQOL向上」を、市の重要政策の1つに位置づけており、平成30年度から民間企業と連携して「健康づくりの推進」に取り組んでいます。その1社である東和薬品から、認知症予防に向けたプロジェクトを公民連携で進めていく提案を受けました。日常生活に支障をきたす認知症について、予防に向けた研究を独自に進めることは、まさに「健康寿命の延伸」につながるものだと考え、令和5年度からの実施に向け、現在協議を進めています。

―具体的にどのようなプロジェクトですか。

 まずは高齢者に、東和薬品が提供する「認知機能チェックサービス」を受けてもらいます。その後、食事や睡眠、運動で認知機能の維持・改善を目指す、「健康化プログラム」を一定期間実践していただきます。そこで再度チェックを受けてもらい、プログラムの効果を検証します。この検証を積み重ねて、認知症予防につながる「健康化プログラム」の確立を目指すといったものです。今回のプロジェクトは、市にとっては将来的な社会保障費の抑制も期待できますが、「認知機能の維持・改善」という高度な専門的知見が必要なため、私たち行政だけでは推進できません。まさに、民間企業や地域医師会などとの「共創」により実現できる取り組みだと考えています。

―公民連携デスクとしての今後のビジョンを聞かせてください。

 日々の業務で多忙を極める事業所管課にとって、新たな取り組みとして公民連携に着手することは、リソースの問題などから難しいケースが出てくることがあるかもしれません。だからこそ、私たち「公民連携デスク」が事業所管課に伴走する姿勢を大切にし、一緒になって公民連携の取り組みを進めていきたいと考えています。


支援企業の視点

「デスク」と密に連携し合うことで、学生に多様な成長の場を提供できる

東和薬品株式会社 事業推進本部 次世代事業推進部 次長 佐々木 正隼
東和薬品株式会社
事業推進本部 次世代事業推進部 次長
佐々木 正隼 ささき まさとし

―門真市との取り組みに、どのような意義を感じていますか。

 ジェネリック医薬品の研究開発・製造販売をコア事業とする当社は、健康増進に寄与するあらゆる取り組みを進めています。高齢化率が高い門真市にとって、「健康寿命の延伸」は重要な政策課題であり、今回の認知症予防に関するプロジェクトを通じて、その課題解決に貢献したいと考えています。この課題は全国の自治体共通のものであり、私たちとしても、新たなビジネスモデルの創出に向けたチャンスだととらえています。

―公民連携デスクの役割を、どのように期待していますか。

 今回のプロジェクトは、決して高齢者だけが対象のものではありません。最近の研究では、認知症は40代や50代からの予防が大切なことがわかってきています。最初は高齢者向けから始めますが、将来的にはそういった年齢層にも対象を広げることを考えています。部署横断的な役割を担う公民連携デスクなら、たとえば、子育て世代を対象とする事業所管課と調整を図り、さまざまな年齢層に協力を促してくれると期待しています。

―公民連携に対する今後の方針を聞かせてください。

 全国の自治体ではいま、「地域包括ケアシステム」を通じた医療行政の構築に向けた議論が行われており、当社もその構築に向けて、公民連携を通じて積極的にかかわっていきたいと考えています。行政の「窓口」として、さまざまな事業所管課とのつながりをつくってくれる「デスク」の存在は、公民連携の推進に不可欠な存在だと感じています。

佐々木 正隼 (ささき まさとし) プロフィール
千葉県生まれ。パナソニック株式会社、PwCビジネスアシュアランス合同会社を経て、令和3年に東和薬品株式会社へ入社。おもに事業開発に関する業務を担当する。令和4年から現職。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

公民連携で新たな価値を生み出す、「共創」の推進に注目

 門真市は、「公民連携デスク」の発足前から取り組んでいる「協働」によるまちづくりに加えて、民間事業者の知恵とノウハウや活力を結集して新たな価値を創出する「共創」によるまちづくりをめざしています。その実現に向けて、「共創推進」を図るワンストップ窓口として、令和4年10月に公民連携デスクを設置しました。

 公民連携の取り組みに関し、同市では「実際の事業推進の主役は事業所管課」と語るなかで、公民連携デスクには、コーディネートする立場を通じた「推進役」としての役割を期待しています。今後展開されるさまざまなプロジェクトで、事業所管課との両輪での「共創推進」に注目しています。

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