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先進事例2023.03.15
連載「大阪発 公民連携のつくり方」第19回

公民連携がもたらす「民」の発想で、職員の固定観念を打ち破ってほしい

公民連携がもたらす「民」の発想で、職員の固定観念を打ち破ってほしい

大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第19回

公民連携がもたらす「民」の発想で、職員の固定観念を打ち破ってほしい

熊取町長 藤原 敏司

※下記は自治体通信 Vol.46(2023年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第19回目となる今回は、令和4年10月に公民連携の専門窓口として「公民連携デスク」を設置した熊取町を取材。公民連携に対する考え方や取り組みの成果などについて、町長の藤原氏と同町担当者に話を聞いた。。

[熊取町] ■人口:4万3,038人(令和4年11月末現在) ■世帯数:1万8,609世帯(令和4年11月末現在) ■予算規模:270億4,724万5,000円(令和4年度当初) ■面積:17.24km2 ■概要:大阪府の南部に位置する。大阪府下の「町」としては、もっとも人口が多い。豊かな自然環境が特徴で、森林公園「奥山雨山自然公園」は、「大阪みどりの百選」に選定されている。自然公園内にある永楽ダム周辺は桜の名所として有名で、多くの人出で賑わいを見せる。
熊取町長
藤原 敏司 ふじはら としじ

「民」と共に持続可能なまちを目指して

―熊取町が公民連携の専門部署を新設した経緯を教えてください。

 当町は、大阪の都心から約30㎞に位置しながらも豊かな自然環境に恵まれ、ベッドタウンとして発展してきた歴史があります。総面積約17km2のコンパクトさゆえに、活発な地域コミュニティが醸成されており、持続可能で「永く楽しく暮らせるまち」を目指し、住民との協働も数多く展開してきました。一方で、社会課題が多様化・複雑化するなか、従来の行政手法だけでは課題解決に限界を感じる場面が増えてきました。当町には企業数が少ないこともあり、企業との連携はこれまで後手に回ってきたという反省もありました。そこで、公民連携の促進を目的に、令和4年10月に「公民連携デスク」を立ち上げたのです。

―公民連携デスクには、どのようなことを期待していますか。

 個々の行政課題の解決はもちろん、デスクには特に公民連携の推進を通じ、職員の意識改革を促す役割を期待しています。近年、当町でも行政のスリム化や効率化を追求してきたなか、職員は目の前の業務に多忙となり、中長期的な視点を失う傾向にあると感じています。外部の新しい知見や発想を取り入れることで、固定観念の払拭を期待しています。デスクでは現在、公民連携組織の「OSAKAゼロカーボンファウンデーション(以下、OZCaF)」との連携を進めています。この取り組みでは、OZCaFに参画する約500の企業・団体との間で環境分野に限定することなく、幅広いテーマで当町の課題解決に取り組むスキームが組まれています。多くの部署が関与するこの取り組みが、新しい価値観や発想を庁内に広くもたらすきっかけになることを願っています。

―今後の町政ビジョンを聞かせてください。

 当町は、SDGsの実現を通じたまちづくりを掲げており、そこでは公民連携が大きな役割を果たすと考えています。変化の激しい今の時代は、民間流のスピード感も学ぶ必要があります。公民連携を通じて「民」の知見を最大限に学び、活用させてもらいながら、まちの将来を共に創造していきます。


「脱炭素」を切り口とした幅広い活動で、約500の企業・団体連合と連携

熊取町 総合政策部 企画経営課長 公民連携・スマートシティ戦略グループ長 近藤 政則

熊取町は令和4年9月、OZCaFと包括連携協定を結んだ。脱炭素という裾野が広い分野で活動する同組織との連携は、町長の藤原氏が期待する「職員の意識改革」につながる効果が見込めるようだ。同町公民連携デスクの近藤氏に、今後の取り組み方針などについて聞いた。

熊取町
総合政策部 企画経営課長 公民連携・スマートシティ戦略グループ長
近藤 政則 こんどう まさのり

「公民連携のノウハウ」を、学ぶことも協定テーマに

―OZCaFと包括連携協定を締結した経緯を教えてください。

 「SDGsの実現を通じたまちづくり」を標榜する当町は、環境保全や循環型社会の構築に力を入れてきました。その一環として、当町ではOZCaFの活動に参画するとともに、当町の再生可能エネルギーの導入戦略や地球温暖化対策実行計画の策定にあたって設けた「脱炭素住民会議」で、OZCaFに外部識者として参画してもらっている経緯がありました。

 折しも、庁内では公民連携の機運が高まっており、民間企業との連携強化を模索していた時期でもありました。そこで、この関係性をより深め、まちづくり全体にOZCaF参画企業の技術やノウハウを活用するための枠組みとして、令和4年9月に包括連携協定を締結しました。本連携では、「持続可能なまちづくり」「気候変動対策や脱炭素化」「公民連携」という3つのテーマを設定しています。

―3つ目の「公民連携」とは、どういった内容なのでしょう。

 当町には立地する企業数が少ないこともあり、これまでは企業との公民連携はあまり進んでいませんでした。そのため、今後は民間企業との間でWin-Winの関係構築・事業連携する方法論そのものを身につけていく必要性があると考えています。そうした問題意識から、特定の連携事業の設計だけでなく、その前段階として、「公民連携のノウハウ」を学ぶこともテーマとしているのです。幅広い業種業態の約500もの企業・団体が参画し、脱炭素という裾野が広い分野で活動するOZCaFは、当町のような小規模な自治体がさまざまな企業と連携するうえで、最適な存在だと考えています。

―これまでにどのような成果が上がっていますか。

 まだ協定締結から間もないため、具体的な事業活動はこれからとなりますが、協定締結を機に、公民連携への期待が高まり、早くも各原課から複数の相談が寄せられるようになっています。これなどは、町長が公民連携に期待する「職員の意識改革」のひとつの成果ではないでしょうか。今後は、具体的な連携事業を形にし、早期に成果を上げることを目指します。


支援企業の視点

包括連携事業の成否を握る、公民連携デスクの活躍に期待

OSAKAゼロカーボンファウンデーション 代表理事 田中 靖訓
OSAKAゼロカーボンファウンデーション
代表理事
田中 靖訓 たなか やすのり

―熊取町との取り組みに、どのような意義を感じていますか。

 我々OZCaFは、その名の通り、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを先導することを使命としていますが、じつはその活動の裾野はきわめて広いです。極論すれば、社会全体の効率を上げていくことと同義だと考えており、そのため参画する企業の業種も多岐にわたります。従来、自治体における脱炭素の取り組みといえば、太陽光発電パネルの設置といった限られた政策に落とし込まれることが多かったように思います。これに対して熊取町は今回、そうした環境政策の裾野の広さを理解し、多くの部署がかかわる包括連携協定を締結しています。この連携スキームのなかで互いの課題認識を共有できれば、OZCaFが有する企業ネットワークを活かし、多様な連携事業が次々と生まれてくることが期待できます。

―包括連携協定の窓口となる公民連携デスクの役割を、どのように評価していますか。

 今回の連携には、OZCaF側で多くの企業がかかわるのと同様、役所においても多くの部署がかかわる取り組みになります。そのため、事業の円滑運営という面で公民連携デスクの機能は重要です。それだけではなく、多様な業種の企業と多様な庁内部署をいかに結び、行政課題解決に資するWin-Winの関係をつくれるかが、今回の包括連携事業の成否を握ります。その意味では、両者のマッチング機能と事業スキーム設計も公民連携デスクの重要な役割となり、事業推進役としての活躍を期待しています。

田中 靖訓 (たなか やすのり) プロフィール
昭和48年、大阪府生まれ。令和3年7月、一般社団法人OSAKAゼロカーボンファウンデーション代表理事に就任。資源リサイクル・再生可能エネルギー事業を手がけるリマテックホールディングス株式会社の代表取締役も務める。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

民間のスピード感をもって進める、「1対n」の取り組みに注目

 熊取町は、令和4年10月に持続可能なまちづくりに資するため、民間企業のスピード感やノウハウ、知見を求めて、「公民連携デスク」を設置しています。また以前から、「大阪でいちばんきれいなまち『くまとり』」を標榜してきた同町は、環境という裾野の広いテーマを切り口にまちづくりを考えています。そのようななか、同町は「OSAKAゼロカーボンファウンデーション」との包括連携協定を契機に、持続可能なまちづくりを実現するためのノウハウと、「1対n」の取り組みをスピーディに進めることを期待しているとのこと。府としては、「地元企業が少ない」という課題に挑戦しようとしている点にも注目しています。

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