データ利活用 自治体事例|健康・福祉
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北海道、宇都宮市、関市、和歌山県、三原市の「健康・福祉」データ利活用 自治体事例
現在、国はもちろん地方公共団体においてもEBPM(証拠に基づく政策立案)の取り組みが推進されており、地方自治体が抱えている現状や政策課題を的確に把握し、有効な対応策を選び、その効果を科学的に検証するため統計データの利活用が注目されています。
そこで、地方公共団体との共同研究や民間ビッグデータ活用等の委託研究などデータ利活用に関する先進的な研究を実施している総務省統計局 統計データ利活用センターが作成している「統計データ利活用事例集」より、データ利活用を通じて課題解決や政策実現などを実現した自治体事例を抜粋して概要を紹介します。
同事例集は「Data StaRt Award~地方公共団体における統計データ利活用表彰~」に応募した地方公共団体の協力を得て統計データ利活用センターが作成しています。
今回は、北海道(健康・医療情報分析プラットフォーム「KDB Expander」)、宇都宮市(健康アプリユーザーの行動変容分析)、関市(予測モデルを根拠とした子ども福祉医療費助成年齢要件の検討)、和歌山県(データベースを用いた過量服薬による有害事象の調査)、 三原市(24時間体制で対応する健康サポート事業)の健康・福祉におけるデータ利活用自治体事例です。
健康・医療情報分析プラットフォーム「KDB Expander」|北海道
北海道では、道民の健康寿命の延伸や医療費適正化を目的とした健康・医療情報分析プラットフォーム「KDB Expander」を道内の各市町村に提供しています。
国保データベース等の健康・医療情報(国保・後期・介護)に加え、被用者保険情報(協会けんぽ北海道支部)を制度横断的に分析し、保健事業推進に役立つ分析レポート等を提供するシステム。
北海道は小規模な市町村が多く、専門職及び事務職のマンパワー不足等の課題があり、データ分析やデータを活用した保健事業の実施に苦慮しているという課題があったところ、令和元年に「地域・職域連携推進ガイドライン」が改訂され、令和2年度から保険者努力支援制度が強化され、地域・職域連携を推進するデータベース開発等が実施できるようになったことがきっかけで、北海道国保医療課および北海道国民健康保険団体連合会が発案しました。
取り組みの内容
目的
マンパワー不足等の課題を解決し、健康寿命の延伸等の予防・健康づくりを推進することが目的です。
データの活用方法
市町村の保健事業の取り組みに資する分析データや統計情報および生活習慣病重症化予防実施のための対象者抽出リストならびに保健指導時における活用を想定した健診受診者ごとの健康レポートなどを市町村ごとに予め作成し、市町村ポータル(市町村データ提供システム)にアップロード。利用者である市町村職員は、必要なデータをダウンロードするだけで活用可能であるため、資料作成や対象者抽出における業務負担の省力化を図っています。
また、データヘルス計画の策定に必要となる図表データを市町村ごとに作成し、毎年度提供することにより、データヘルス計画の策定や評価時における業務負担の省力化を図っています。
国保総合システム(国保レセプトデータ)、後期高齢者医療請求支払システム(後期レセプトデータ)、介護保険審査支払システム(介護レセプトデータ)、特定健診等データ管理システム(健診・保健指導データ)、KDB システム(健診・医療・介護データ)、全国健康保険協会(協会けんぽ)北海道支部データ(レセプトデータ・健診データ)を利用しました。
統計データを利活用したことによるメリット
地域医療(国保・後期)データと職域医療(協会けんぽ北海道支部)データと合わせることで、北海道の人口の約7割(医療費では約8割)をカバーできるため、これまで保険制度ごとで留まっていた地域診断や健康課題の明確化を、まちの「住民」を対象として制度横断的に実施することが可能となりました。
取り組みの効果・成果
市町村職員のデータ分析・加工に要する事務作業時間が軽減されるとともに、人的資源を保健指導などの本来業務に注力できることが期待されています。
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「健康・医療情報分析プラットフォーム」の概要と活用イメージ
健康アプリユーザーの行動変容分析|宇都宮市
栃木県 宇都宮市では、市独自の健康アプリ「宇都宮市健康アプリ」で集積したデータを分析し、本アプリ利用開始により行動変容が発生したかの分析を実施しました。
分析の結果、アプリ利用開始後90日付近にて運動量が増加したまま習慣化する場合と、一時的に増加した運動量が元に戻ってしまう場合があることが明らかになりました。
アプリ改修の予算編成時に、アプリ稼働開始から5年ほどが経過し、さまざまなパーソナルデータが集積されているものの活用しているデータが性別、年齢、平均歩数など限られたデータのみであったことから、宇都宮市政策審議室市政研究センターが健康アプリユーザーの行動変容分析を発案しました。
取り組みの内容
目的
データの分析を実施し、従来よりも深い所管課における事業の効果検証、事業改善等を支援しました。
データの活用方法
アプリ内に集積されている1日の運動量について、移動平均法を用いたデータの整形及びデータの欠落などのトリミングを実施。回帰係数や決定係数などを判断材料として、アプリ利用開始後の行動変容について4パターンへ分類しました。
結果として、今回の分析対象者(n=7,760)のうち約3割は運動量が増加しそのまま習慣化した一方で同じく約3割が運動量が一時的に増加したものの減少し、習慣化しなかった。この分岐点がアプリ利用開始後90日目付近であることが判明しました。
宇都宮市健康アプリの利用データ5年分を利用しました。
統計データを利活用したことによるメリット
Microsoft Excelのマクロ機能やPythonを活用することで、今まで以上に複雑な分析を実施することができ、改善案の検討材料として活用できました。
宇都宮大学との共同研究により市政研究センターが分析を実施し、事業改善案の検討は健康増進課が対応しました。また専門家の助言を受けられるように、データの利活用およびEBPMに関し専門的な知見を有する専門家を集めたほか、宇都宮市EBPMアドバイザリー・ボードを設置し、助言を受けました。
取り組みの効果・成果
本健康アプリの目的である「アプリをきっかけにした行動変容と、その習慣化」について、登録後90日目付近にて、利用者にアプローチを行うことが効果的であることが判明したため、該当期間にてメッセージの送信を行うなどの事業改善の検討材料として活用されています。
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宇都宮市独自の健康アプリ「うつのみや健康ポイント」のサイト
予測モデルを根拠とした子ども福祉医療費助成年齢要件の検討|関市
岐阜県 関市では、市内の子ども福祉医療費助成における年齢要件を18歳まで引き上げる検討が行われたその際に、市独自で算出した人口推計に助成額予測係数を掛け合わせ、年齢要件を引き上げた場合の予測モデルを作成し政策検討の根拠データとしました。
同市では子育て世帯への充実した支援を行うときに子ども福祉医療費の年齢要件引上げがたびたび議論されてきましたが、コスト面が不明瞭であったため保留してきた背景があり、子ども福祉医療費助成年齢要件引上げの再検討が始まった際にデータ分析担当へ予測モデル作成依頼がありました。
取り組みの内容
データの活用方法
すでに助成をしている7~15歳は助成実績から予測し、引き上げ対象となる16~18歳については助成実績がないため、関市の当該対象者分の直近5ヵ年医療費平均にトレンド値として補正するため県全体の国民健康保険医療費実績を加味し、1人当たりの助成額予測係数を定め、人口推計と掛け合わせることで予測モデルを作成しました。
国民健康保険事業状況報告、関市国民健康保険医療レセプトデータ(医療費データ)、関市における子ども福祉医療費助成額実績、関市独自算出人口推計を利用しました。
統計データを利活用したことによるメリット
予測モデル作成のための基礎データとした政策決定の根拠とすることができました。
取り組みの効果・成果
コスト面などをはじめとした政策検討の結果、子ども福祉医療費年齢要件の引上げを実施しました。
令和5年度16~18歳医療費実績はおよそ6,200万円(概算値)で、推計値(約6,000万円)から誤差プラスマイナス5%以内の差で留まりました。
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関市の人口推計 (「関市データダッシュボード」より)
データベースを用いた過量服薬による有害事象の調査|和歌山県
和歌山県では、効果的な薬物乱用防止啓発のために、医療機関等から報告される医薬品の有害事象データを用いて、過量服薬(オーバードーズ)と関連性の高い成分や有害事象について網羅的な調査を実施しました。
市販薬のオーバードーズ防止対策として、有害事象に関する周知・啓発が重要と考えられるものの、たとえばメーカーから提供される副作用情報は基本的に用法・用量が適正であるものに限られているなど、オーバードーズに関する疫学的な情報源が少ないとされています。一方で、近年、若者による市販薬のオーバードーズ事故が増えており、国内及び海外で問題となっていることから、和歌山県新宮保健所串本支所が発案し、今回の調査が実施されました。
取り組みの内容
目的
本調査の目的は、公共の医薬品有害事象データを用いて、市販薬成分のオーバードーズ(以下、OD)のリスクを統計学的に評価することにより、OD防止のための知識を抽出し、啓発活動に活用することです。
データの活用方法
米国食品医薬品局ホームページから医薬品有害事象データ (2006~2022年分)を取得し、CASE IDが重複する報告を除去して第1被疑薬が一般用医薬品(又は、その成分)である1,519,350件を抽出。そのうえで、過量服薬に関連する有害事象を抽出するため過量服薬関連語を定義して抽出した報告データの有害事象として過量服薬関連語を含む群(OD群、26,823件)と含まない群(非OD群、1,492,527件)に二分。OD対非OD群間で、薬剤の種類、併発有害事象、転帰を比較分析し、それぞれ報告オッズ比(ROR)を算出しました。
米国の医薬品有害事象データベース(FAERS:FDA Adverse Event Reporting System)を利用しました。
統計データを利活用したことによるメリット
県内では少ない事象について、海外の大規模データを用いることで迅速にリスクを評価することができました。
保健所内の薬剤師、保健師等の多種職連携のもと、調査及び啓発活動を実施しました。
取り組みの効果・成果
国内で流通している市販薬成分について乱用リスクを網羅的に評価することができました。
また、代謝系や循環器系への致命的なダメージとODとの関連性が示唆されたほか、これらの調査結果について、第36回和歌山県公衆衛生学会で発表しました。
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24時間体制で対応する健康サポート事業|三原市
広島県 三原市では、不妊治療に関する専門の医療機関がないことから、専門機関が離れた場所にあるという「距離」の問題と、市役所が開いていない時でも相談できる「時間」の問題をデジタルで解決につなげる試みとして、市民が抱える妊娠、出産、更年期や子育て等に関する相談ニーズに対応するため、LINEを活用して24時間体制で専門家に女性の健康課題に関する相談ができるサポートサービスを導入しました。
同市は、国勢調査などのデータを分析したところ、第2子・第3子の有配偶出生率は全国平均よりもやや高かったが、第1子の有配偶出生率が全国・県平均よりも低かったため、「不妊治療費等の補助件数が増えており、出生を希望しているものの不安や障壁を抱えている方に寄り添った取り組みが必要なのではないか」との問題意識から今回の取り組みを実施しました。
取り組みの内容
目的
第1子有配偶出生率が低い要因は複数考えられますが、そのうちのひとつである「第1子の出産・子育てへの不安や障壁」を解消することが目的です。
データの活用方法
厚生労働省の「人口動態調査」や総務省の「国勢調査」などを活用し、年齢階層別女性有配偶率及び出生順位別有配偶出生率の2つの観点から出生構造レーダーチャートを作成。このデータ分析における他都市との比較や、広島県が作成した「広島県版合計特殊出生率『見える化分析』」などから、本市の第1子の有配偶出生率が低い状況が明らかになりました。
人口動態調査、国勢調査、住民基本台帳、広島県における少子化要因調査等を利用しました。
統計データを利活用したことによるメリット
客観的なデータに基づき、周辺自治体の状況と比較することで、本市独自の課題を明確にすることができました。
また、具体的な取り組みの方向性を仮説として定めることができました。
利用できる行政サービスを対象者にプッシュ通知|千葉市
千葉県 千葉市では、支援が必要な人ほど制度を調べる余裕がないことを踏まえ、受けられるサービスをプッシュ型でお知らせすることで、受給漏れを防止するとともに市民がサービスを調べる負担を軽減しています。
市が実施する行政サービスは多岐にわたるため、市民にとっては制度の検索や問い合わせに時間を要するとともに、自らが対象となっていることに気が付かず、受給漏れが生じているケースもありました。そのため、市が保有する情報を活用し、対象者のスマートフォンアプリを通じて直接通知することで、受給漏れを防止するとともに、市民がサービスを調べる負担を軽減する仕組みを構築しました。
取り組みの効果・成果
相談利用年代は30代が最も多く、利用者の90%以上は女性が占めており、相談時間としては、市役所が閉庁している夜間の利用が多く、相談機会の確保につながっていると考えられます。利用者アンケートの結果について、約8割の利用者が「満足感がある」との回答を得ました。
また、匿名で相談ができるため、センシティブな内容であっても相談することへの心理的障壁を和らげることができていることも利用満足度の高さにつながっていると考えられます。
さらに、当初は妊活・不妊治療という観点からサービスを開始しましたが、現在は、更年期などの相談にも対応可能とするなど、健康相談サービスとして内容の充実を図ってきています。
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「みはら子育てねっと」 より
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