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イベントリポート
イベント2026.10.14
~『自治体通信』主催 首長会議2026 夏~

自治体の経営戦略を強化する、DX・AX推進と地域創生

自治体の経営戦略を強化する、DX・AX推進と地域創生

※下記は自治体通信 Vol.77(2026年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

7月21日(火)、『自治体通信』を発行するイシン主催の『首長会議』が開催された。全国の首長が集い、現役の国務大臣や民間企業トップによるデジタル行財政改革や地域における未来戦略、子ども支援など多角的なテーマのもとで講演が行われた。講演では、DX・AXの現在地や地方創生に向けた起業家支援、成長投資の重要性が示され、国・自治体・民間が強固に連携し、持続可能な地域基盤を構築していくための具体的な道筋を探った。その模様をリポートする。

デジタル大臣が数字で示した、国と自治体の理想と現実

 2度目の開催となった『首長会議』。デジタル行財政改革や地域未来戦略、子ども支援対策など幅広いテーマを取り上げ、国務大臣や民間企業トップを招いて、全国の首長とともに考える会となった。基調講演は、松本尚デジタル大臣(当時)、メディアドゥ代表取締役社長CEOの藤田恭嗣氏、黄川田仁志地域未来戦略担当大臣・内閣府特命担当大臣(当時)が行った。

 最初に登壇した松本大臣の講演テーマは「数字でみる日本のDX・AX」だ。まず会場のスクリーンに「1億」を意味する数字が映し出された。これはマイナンバーカードの保有枚数で、この普及によりその使い方はさらなる広がりを見せているという。その一例として、自ら視察した朝日町(富山県)の事例を紹介した。子どもの見守りなどにマイナンバーカードを活用し、小中学校や図書館などに設置された読取端末にタッチすれば、保護者に通知が届く仕組みを整備している。町内の商業施設や飲食店では、デジタル地域通貨をマイナンバーカードで使え、地域経済の循環にもつながっているという。「工夫すれば、利用シーンを拡大できる」と話した。

 とりわけ首長の耳目を引いた数字は「2万4,353」。自治体における標準準拠システムへの移行完了数で、対象となるシステムの約7割に達したという。令和9年3月末までに9割を完了させる見込みも語った。さらに今後の取り組みとして、「政府職員18万人」に対してガバメントAI『源内』を利用可能にしていくことや、さらなるAXの進展について語った。まずは政府から実践することで「いずれは自治体でも活用してほしい。そして創出された時間を施策立案や行政サービスに充ててほしい」と伝えた。加えて、国産のAIモデルの導入を増やしていく方針を示し、データセンターの増設や、電力と情報通信のインフラを一体的に整備・運用するワットビット連携に向けた協力を要請した。

「自治体の側に立って話をしてもらえた」と、参加した首長から松本大臣に感謝の気持ちが伝えられた

起業家の育成と支援が、地域の持続可能性を高める

 松本大臣に続いて登壇したのは、電子書籍流通大手で東証プライムに上場するメディアドゥの創業経営者である藤田氏だ。徳島県の限界集落で生まれ育った藤田氏は現在、地域創生を目的とする「サステナビリティクリエーション事業(以下、SC事業)」に取り組んでいるという。

 この事業には2つの柱がある。1つ目は「起業家支援」だ。地方に経営者は多くいるものの、いま求められているのは0から1を生み出せる起業家だ。そういった人材の育成と人脈構築の支援に力を注ぎ、6年前に事業化して現在は20府県、設立準備中を含めると29府県で展開。令和12年には東京を除く46道府県をカバーする見込みという。徳島県では、藤田氏自身が行政、メディア、金融機関などを巻き込み、「起業家が起業家を生み、育てる」がコンセプトの一般社団法人を立ち上げた。加えて、生まれ故郷には、地元名産品「木頭柚子」を栽培・加工・輸出する会社を設立。上場も目指しているという。

 SC事業のもう1つの柱がスポーツ事業だ。地域に老若男女を問わず多くの人を集めて盛り上げることを目的として、B.LEAGUE所属のプロバスケットボールクラブを運営している。地域メディアなどに声をかけて、少しずつ株式を保有してもらうとともに、メディア露出を増やすことで、住民がチームに親しみを覚え、地域が一丸となって応援するスキームを構築しているという。

 このような取り組みを進めるなか、子どもを地方で育てて増やす仕組みの必要性を感じたことから、一般財団法人を設立し、里親家庭を支援する取り組みも開始したという。里親に関心がある人に移住を勧め、地域住民と交流を図りながら里子を養育してもらうことを目的とする。「愛された記憶と帰る場所を、子どもにつくってあげたい」と語り、ライフワークとして取り組むとした。「地方出身者で『ふるさと』を語ることが恥ずかしいという人がいるが、真逆であるべきだと思う。地域を信じて、愛して、それを言葉にして話せる経営者を育てていくことが大事だ。そういった人を、みなさんの自治体から、どんどん生み出していただきたい」と、首長にエールを送った。

地域未来戦略に欠かせない、成長投資と地域基盤の構築

 民間企業トップによる講演のあとに登壇した黄川田大臣は「地域未来戦略の推進」と「こども・若者自殺防止総力戦略」の2つのテーマで講演した。地域未来戦略とは、地域の稼ぐ力を高めて、地方から日本を成長軌道に押し上げることを目的とするアプローチだ。

 17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点として形成される「戦略産業クラスター」、都道府県などが主体となって各地に産業クラスターを形成する「地域産業クラスター」、地域資源を活かした地場産業の成長を支援する「地場産業支援」という3つの戦略を掲げる。そのなかでも各市町村には農林水産業、観光業、伝統的工芸品製造業など、地域経済を支える地場産業の成長に期待を寄せているという。

 そのうえで紹介された事例のひとつが、森林資源を地域経済の成長エンジンとしている西粟倉村(岡山県)の取り組みだ。「自治体が森林管理を担い、民間事業者が木材の付加価値を高めて販売することによって、地域内に利益が循環する仕組みを構築している。また、新しいビジネスを生み出すために、地域おこし協力隊制度などを活用し、起業家を呼び込んでいる」という。

 また、美咲町(岡山県)について、「庁舎や図書館、公民館などを複合化し、公共施設の総量を削減しながら、住民サービスの維持向上を図っている。81あった自治会を13の地域運営組織に再編して、住民主体による地域運営を推進している」と、賢く収縮するまちづくりの好事例として紹介。「地域未来戦略では、成長投資と同時に、持続可能な地域基盤の構築も重要といえる」と話した。

 そして集まった首長に「『わがまちの名物になる』という産業の種を見つけて伸ばす目的のもと、インフラ整備や公共施設を再編して、地場産業の成長を目指してほしい」と呼びかけた。

 続いて、こどもの自殺対策についても、こども政策担当大臣として話した。日本の自殺者数は全体的には減少傾向で、年間2万人を下回ったものの、小中高生の自殺者数は増加傾向にあり、令和7年度は538人と過去最多となったことを「重く受け止めている」と話した。「こどもの自殺を防ぐためには、地域社会全体での支えが必要であり、特に行政が本気で手を打たなければならない。この危機感を地域全体で共有し、首長のリーダーシップのもと、対策をさらに強化していただきたい」と、自治体による法定協議会*の設置などを呼びかけた。

*法定協議会 : 自殺対策基本法に基づくこどもの自殺対策に係る協議会

日本の大きな転換期に、信頼の設計が重要になる

 閉会前には、初代デジタル大臣で衆議院議員の平井卓也氏が首長会議に寄せたビデオメッセージが流された。インターネットの利用が社会の前提となり、生成AIが実装されていく世の中を「大きな転換期」と述べ、国と自治体には「信頼の設計が重要になる」と話した。そのうえで、自身が本部長を務める自由民主党のデジタル社会推進本部による政策文書「デジタル・ニッポン2026」で提言する「責任あるアジャイル・ガバナンス」の発想で、失敗を恐れず、自治体DXを柔軟に推進していくことを要望。「一緒にがんばりましょう」と首長に呼びかけた。

 第2部は交流会が開かれ、首長同士が深く話し込む様子が見られた。これからの自治体経営には、自治体間の連携を、より強くしていくことが欠かせない。今回の首長会議も、危機感を共有する自治体トップが集い、今後の連携につながるきっかけとなったはずだ。

第2部の交流会は会場を移して立食パーティーの形式で行われ、第1部と同様に盛況を博した

東京都知事からの祝電。相模原市(神奈川県)、大牟田市(福岡県)の市長ほかからも祝電が届いた

スペシャルプレゼンツ
自治体DX推進が職員の意識を変え、庁内業務全体を見直す契機に
インタビュー
早馬 一郎 氏
株式会社ネオジャパン
取締役 営業事業部長 兼 カスタマーサクセス部長
早馬 一郎 氏

 自治体DXを支援するネオジャパンの早馬氏が、官民連携企業によるスペシャルプレゼンツとして講演を行った。「自治体DXは庁内業務全体を見直す契機になる」と語り、同社のノーコード開発ツール一体型グループウェア『desknet's NEO』を活用して業務改善に取り組んだ事例を紹介した。

 まず特定業務の現場改善例として、横浜市(神奈川県)の取り組みが紹介された。同市では「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」を目的に、避難確保計画の作成や訓練実施の効率化に向けた実証実験を実施。現場の声を反映して改善を重ね、行政・施設双方の作業工数を41%削減できたという。

 続いて、同製品と先端技術を組み合わせた神奈川県の事例も紹介された。同県は国勢調査に関する業務を支援する実証実験で、FAQの内容を生成AIに読み込ませ、自治体職員からの問い合わせに対応するシステムを構築した。その結果、平均30%以上もの業務時間の削減に成功したという。

 また、鎌倉市(神奈川県)では自治体DXを契機に職員の意識改革が進んだという。ノーコード開発ツールの活用で、従来のような予算確保やベンダーへの依頼が不要となったほか、職員自らが業務を見直して継続的に改善する意識が定着した。現在では140以上のアプリが開発され、全庁的な業務改善へと広がりを見せているという。

官民連携企業ピッチ

災害時の備えにもなる、公費負担なしの子育て支援策

インタビュー
福西 泰河 氏
BABY JOB株式会社
子育て支援事業部 次長
福西 泰河 氏

 BABY JOBの福西氏は、公費負担ゼロで導入できる保育施設向けの紙おむつとおしりふきの定額サービス『手ぶら登園』を提案した。保護者と同社が直接契約する仕組みで、自治体による公費負担は不要。子育て世帯の課題の1つである「時間貧困」を解消して、ゆとりを創出する支援ができる。保育に携わる職員の業務負担の軽減につながるほか、災害時には、施設内の在庫を備蓄として、新たなコストをかけずにそのまま活用できるメリットも伝えられた。


アセスメントの質を高めて介護予防を支援するDX

インタビュー
加藤 雄樹 氏
オムロン株式会社
データソリューション事業本部 自立支援事業部 部長
加藤 雄樹 氏

 オムロンの加藤氏は、自治体の高齢者相談窓口や地域包括支援センターなどに提供している介護予防ケアマネジメント支援システム『ハレクルWith』を紹介した。同システムでは、職員の経験差が出やすいアセスメントについて、AIが支援することによって平準化を促せる。さらにケアプランの作成も最短10分に短縮できるという。「介護予防のDXを通じて、選ばれる地域づくりを支援したい」と話した。


高齢者に電話して変化を察知。職員の業務負担を軽減するAI

インタビュー
北川 幹雄 氏
ネイバークラウドジャパン株式会社
グローバルソリューションセールス本部
北川 幹雄 氏

 クラウド・AI事業を展開するネイバークラウド社の日本法人であるネイバークラウドジャパンの北川氏は、出雲市(島根県)におけるAI安否確認サービス『ネイバーケアコール』の実装事例を紹介した。AIが一人暮らしの高齢者へ電話をかけ、日常の対話から体調の変化を検知・レポート化するサービスで、ケアマネジャーらの業務負担を低減させつつ、対話を個別に最適化することで利用者の安心感向上にも貢献するという。

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