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激しい社会潮流に適応する和歌山県の新たな県政ビジョン

地域資源の価値を再定義し、多様性に富んだ豊かな社会の実現へ

地域資源の価値を再定義し、多様性に富んだ豊かな社会の実現へ

※下記は自治体通信 Vol.74(2026年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

岸本前知事の急逝を受け、令和7年6月に県知事選挙が行われた和歌山県では、知事職務代理者を務めた前副知事の宮﨑氏が当選を果たした。副知事就任からわずか2ヵ月での知事就任となった同氏のもと、同県では、令和7年12月に新たな長期構想となる「和歌山県総合計画」を発表し、2040年にめざす同県の姿を打ち出している。その将来像の実現に向けて今後、いかなる県政運営を行っていくのか。同氏に詳しく聞いた。

インタビュー
宮﨑 泉
和歌山県知事
宮﨑 泉みやざき いずみ
昭和34年、和歌山県生まれ。昭和57年に大阪大学人間科学部を卒業後、和歌山県庁に入庁。企業振興課長、人事課長、知事室長などを務め、平成31年に和歌山県庁を退職。平成31年4月から令和7年3月まで、和歌山県教育委員会教育長を務める。その後、和歌山県副知事を経て、令和7年6月、和歌山県知事に就任。現在1期目。

教育長の経験から実現を図る、「こどもまんなか和歌山」

―どのような使命感を持って、知事就任を果たしたのですか。

 岸本前知事の逝去はあまりに突然のことでしたので、私自身も信じられない状況のなかで、紆余曲折があり私が後継を務めることになりましたが、知事就任にあたっては、岸本前知事の想いを引き継ぐことが大事だと考えていました。当時はまだ、県の教育長から副知事に就任したばかりでしたが、教育長時代には、教育に関してよく議論もさせていただいており、岸本前知事がよく口にしていた「笑顔あふれる和歌山」というビジョンは私も賛同していました。そうした経緯もあり、知事就任にあたっては、そのビジョンを職員や議員のみなさんと一丸となって実現していくことを心に誓っています。

―宮﨑知事のカラーは、どのように発揮していく考えですか。

 県教育長を務めてきた経験もあり、私は選挙戦においても「こどもまんなか社会の実現」を掲げてきました。そのため、「子育てしやすい環境づくり」や「地域全体で子どもを育む取り組み」など、和歌山の子どもたちが、それぞれの地域で健やかに成長できる「こどもまんなか和歌山」の実現に力を入れていきます。

 また、産業政策においても、次世代の子どもたちが跡を継ぎたいと思えるような産業を育てるという視点から、県の基幹産業である農林水産業をはじめ、観光業や中小企業経営の強化を後押ししていきたいと考えています。

新総合計画で力を入れる、3つの政策テーマ

―就任後の令和7年12月には、新たな「総合計画」を発表しています。策定にあたり、どのような問題意識を持っていましたか。

 新計画で展望する2040年に向けて、本県に及ぼす大きな変化やリスクを想定するとき、特に考慮すべき社会の潮流が5つあると考えました。まずは、「人口減少・超少子高齢化」と「地球温暖化」です。これは、避けられない条件として緩和と適応が求められるものです。そして、「デジタル活用の加速化」「共生社会の進展」「行政間・官民の連携」です。この3つは、豊かさを享受するために、積極的に取り入れるべきテーマと位置づけています。

 この激しい社会の潮流を意識し、今回の計画では、従来の総花的な計画とは一線を画し、この潮流にいかに対応するかに絞った計画としています。また、見直し期間を従来の10年から5年に短縮し、さらに各種データを用いて「起こりうる未来」を予測し、そこからみえる課題や対策の方向性を県民のみなさんと共有できるように工夫しています。

 そのうえで、新たな総合計画では、「2040年に実現したい和歌山の姿」を打ち出しています。

―それはどのようなものでしょう。

 「人口減少や気候変動に適応した、持続可能で心豊かな和歌山」と「個人が尊重され、あらゆる分野で個性輝く和歌山」と定めました。これは、激しい社会の潮流に適応し、持続可能で豊かな社会を築いていくこと、そして個人はもとより、地域としても個性を磨き、「ここにしかない地」へ進化していくという、強い決意を表したものなのです。

―個別の政策に関して、特に力を入れていきたいと考えるものはありますか。

 「教育改革」「次世代型産業構造への転換」「人口減少に適応した社会システムの構築」、この3つは、従来の考え方を変え、新たに取り組む政策として、特に力を入れていく政策と位置づけています。

 まず「教育改革」をめぐっては、「チョーク&トーク」といわれる従来型の教育から、子どもたちの能力や理解度に応じて学習を進められる教育へと転換を図り、能力や意欲に応じて個人の可能性を拡げられる多様な学びの場をつくっていきます。高等学校においては、地元に立地する宇宙産業に紐づいて「宇宙探究コース」を設置した串本古座高等学校に代表されるような学びができる、将来の夢につながるような特色化・魅力化を進めていきます。

 また、「次世代型産業構造への転換」をめぐっても、従来の重厚長大産業だけではなく、本県の地域特性や地理的条件を活かした新しい産業構造を模索します。

地理的特性を活かして、成長産業の集積をめざす

―具体的に、どのような産業への転換を図るのでしょう。

 たとえば、東と南が海に開けた本県南部の地理的特性を活かして、串本町と那智勝浦町ではロケット発射場が建設され、それを機に周辺における宇宙産業の集積をめざしています。また、有田市に立地する製油所は、新たにSAF(持続可能な航空燃料)の製造拠点として生まれ変わるほか、県内では洋上風力発電の誘致が進む地域もあるなど、GX産業も本県の地域特性と親和性の高い成長分野として集積をめざしています。さらに、従来の基幹産業においても、デジタル技術を掛け合わせたスマート農林水産業の推進や、データを活用した観光業の高度化なども後押ししていく考えです。

 最後に、「人口減少に適応した社会システムの構築」をめぐっては、医療・福祉・教育・地域交通といった公的サービスの機能維持を図るため、長期的・広域的視点で今後は市町村をまたぐような連携・協力体制を構築していく必要があります。その調整は、県が担う重要な役割になると認識しています。これまでのように、人口減少に歯止めをかけることだけを考えるのではなく、厳しい現実から目を背けず、人口減少に適応した持続可能なものへと社会システムを再構築していくことこそ急務だと考えています。

和歌山の文化、精神性に、光を当てるチャンスが到来

―和歌山という地域における今後の発展への可能性をどのように感じていますか。

 世界的に進行する脱炭素や自然共生、グローバル化といった動きは、和歌山が本来持つ自然、文化、精神性といった価値に再び光を当て、新しい発展の形を築いていくうえで大きな好機と受け止めています。産業においては、宇宙やGX、洋上風力といった成長産業が、本県の地理的特性を活かして発展の可能性をもたらそうとしています。また、観光についても高野山や熊野に代表される精神文化が今、世界中の人々を惹きつけています。こうした時代の変化に応じて、地域資源の価値を再定義し、和歌山ならではの多様性に富んだ豊かな社会を築いていく。激しい変化の中で、この動きをリードしていくことが、知事としての私の使命だと考えています。

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