

※下記は自治体通信 Vol.66(2025年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
全国の多くの自治体が保有する公用車は、職員の移動を伴う業務に欠かせない重要な資産だ。しかし、数多くの公用車を運用するための財政的・業務的な負担を職員が課題に感じているケースも少なくない。そうしたなか、指宿市(鹿児島県)では、公用車の運用方法を見直したことで、職員の業務効率を高めつつ、余剰な保有車両を削減するといった大きな成果を得ているという。取り組みの詳細について、同市市長の打越氏に聞いた。

「公用車は稼動しているか」。市民から受けた指摘
―指宿市が公用車運用の見直しを行った経緯を聞かせてください。
当市では、緊急車両などを除き約130台の公用車を保有しています。庁舎の駐車場には、平日の昼間でも車両がずらりと並んでいることも多いため、あるとき市民から「公用車が多いようだが、つね日頃からしっかり稼動しているのか」という指摘を受けたのです。財政健全化を掲げて市政を推進してきた私としても、「稼働していない余剰車両があるのならば削減すべき」と問題意識を抱くようになりました。ただし、公用車は業務遂行に欠かせない大切な資産でもあるため、やみくもに削減するわけにはいきません。そのためまずは、合理的な根拠に基づいて保有台数の適正化を図れるよう、総務課主導のもとで公用車の稼働状況を可視化するための調査を行いました。
―調査はどのように行ったのでしょう。
各部署で管理している運転日報から、車両の稼働時間や走行距離などの情報を表計算ソフトに転記し、稼働率を算出しようと試みました。しかし、その作業を人手で行うには大きな手間と時間がかかるため、より良い方法がないか探っていたところ、小松市(石川県)の興味深い取り組みを『自治体通信』で知りました。それは、運転日報をデジタル化することで公用車の稼働データを蓄積し、定量的な稼働率を分析したというものです。そこで我々は、小松市の取り組みを支援したSMASへ相談してみたところ、公用車の保有台数適正化に向けた的確な助言を受け、関心をもちました。
―それはどのような内容だったのですか。
公用車の保有台数を削減するにはまず、「部署ごとではなく全庁で車両を共用できる体制を整える必要があること」。さらにそのためには「公用車管理の負担を軽減したうえで、管理業務を一部署に集約する必要もある」といった内容でした。その助言は、余剰車両の削減にとどまらず、職員の業務効率化にも大きな効果が期待できそうなものでした。そこで当市は令和5年12月にSMASと包括連携協定を締結したうえで、同社の伴走支援を得ながら、公用車運用の見直しを進めていきました。
平均稼働率は64.5% 。「20台削減可能」との試算
―具体的に、どういったことに取り組んだのですか。
まず、同社の車両管理アプリ『Mobility Passport』を導入し、運転日報をデジタル化しました。これにより、公用車の利用データをシステム上で蓄積・分析したところ、公用車の平均稼働率は64.5%で、なかにはわずか30%程度にとどまる車両があるなど、削減の余地が大きいことがわかりました。SMASの試算によると、庁舎内の公用車は当時から20台削減できる見込みとのことです。
そこからは、同じアプリを使い、全庁で車両の予約管理を行えるようにしたほか、総務課職員が負担を感じることなく取り組みを推進できるよう、車両の維持・管理業務の外部委託なども進めました。
―取り組みで得た成果を教えてください。
公用車の数と業務上のニーズの全体最適を図れるようになり、約1年後には車両の数を5台減らすことができました。また、車両使用年数や修繕履歴、点検時期などを一元的に管理・把握できることにより、必要な修繕や車検をうっかり忘れてしまうこともなくなっています。車両更新の時期についても、担当者によって考え方が異なることなく統一的な判断が可能になりました。運転日報のデジタル化や一部業務の外部委託では、全庁的な業務効率化や人件費削減の効果も表れています。今後も引き続き、SMASの伴走支援のもと、ムリなく効率的な公用車の運用を目指していきます。

ここまでは、公用車の稼働状況を可視化し、車両の保有台数削減につなげた指宿市の取り組みを紹介した。ここでは、その取り組みを最前線で主導した同市総務課の永山氏に取材。公用車運用の見直しで得た職員の業務効率化の成果などについて、詳しく聞いた。

年間38%の業務時間と、17%の費用を削減
―公用車運用の見直しにおいて、総務課ではどういったことに取り組みましたか。
庁内の各部署に分散していた車両管理業務を総務課に一元化するために、関連作業を詳細に洗い出したうえで、デジタルツールの導入や外部委託の活用により、業務工数の削減を図りました。なかでも工数の削減効果が大きかった取り組みは、車両の定期点検・車検に伴う事務の外部委託でした。従来は、各部署がそれぞれに整備工場との日程調整や料金の支払いを行っていたのですが、現在は総務課がSMAS 1社に委託料を支払う事務だけになりました。当市では、「業務委託は市内の事業者へ優先的に発注する」という方針を掲げているのですが、SMASは、「点検整備は従来通り市内の整備工場に発注する」といった調整を図るなど、市の方針に合った業務改革をサポートしてくれました。
―取り組みによって、どのような成果を得ましたか。
デジタル化や業務委託などによって、年間約1万時間分、削減率で見ると37.9%の業務時間を減らすことができました。業務領域別では、「車両・整備」に関するもので約1,200時間、「運転日報」で約8,000時間と、それぞれ大きな削減効果が出ています。車両管理アプリの導入や業務委託にかかった料金を加味しても、公用車管理にかかる費用の削減効果は年間1,360万円、17.0%となりました。
コスト削減を進める過程ではEVの導入に向けた資金も捻出でき、令和7年4月には公用車1台をEVに置き換えられました。当初は想定していなかった脱炭素化の取り組みにも発展し、公用車運用の見直しで得られるインパクトの大きさを実感しています。

これまでに見てきたように、指宿市では公用車運用の見直しを通じ、職員の業務効率化を含む、多くの成果を得てきた。その取り組みを支援しているのが、SMASだ。ここでは、同社の布川氏に取材し、公用車運用をめぐり自治体が抱える課題やその解決のポイントなどについて聞いた。

課題の背景に存在する自治体の特徴的な事情
―公用車の運用をめぐる自治体の課題はなんですか。
ひと口に公用車に関する課題と言っても、その内容は多岐にわたります。たとえば、「業務・コストの負担が大きい」「環境対策が遅れている」「管理が行き届かず車検切れが起きてしまう」といった課題があげられますが、これらが複雑に絡み合っているケースも少なくありません。こうした課題を解決するには、その根本となる原因を把握することが大切です。具体的には、「車両の保有台数が多い」「紙や表計算ソフトで管理を行っている」「組織が縦割り型である」といった、自治体に多くみられる特徴的な事情が課題の原因となっていることが多いです。そこで当社では、自治体ごとに原因の究明、課題解決を支援しています。
―具体的に聞かせてください。
たとえば、保有台数の多さに起因する課題に対しては、車両の維持管理にかかわる業務を当社がリース方式で請け負うことで、解決を支援します。これにより自治体は、職員の業務負担軽減に加え、車検切れなど法令遵守にかかわる課題の解決も目指せます。また、紙で管理している運転日報や車両予約については、車両管理アプリなどの提供を通じ、デジタル化を支援します。デジタル化により、車両の稼働データの利活用も促せるため、公用車の保有台数の適正化や台数削減により、EVの導入資金捻出にもつなげられます。
―今後、どういった方針で自治体を支援していきますか。
当社は自動車リースのリーディングカンパニーとして、数多くの自治体や企業における車両の運用・管理やEVの導入などを幅広く支援してきた実績があります。そこで蓄積してきた豊富な知見を生かし、自治体の事情に合わせた形で、公用車運用の課題解決に向けて伴走支援していきます。ぜひ、お気軽にSMASへご相談ください。


設立 | 昭和56年2月 |
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資本金 | 136億円 |
売上高 | 2,716億円(令和6年3月期:単体) |
従業員数 | 2,050人(令和6年4月1日現在:単体) |
事業内容 | 各種自動車・車両のリース・割賦販売など |
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