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熊本県苓北町の取り組み
先進事例2024.07.29
域内産業における人手不足解消①

仕事×観光×交流の新たな仕掛けで、都市部から労働力を呼び込む

[提供] 株式会社タイミー
仕事×観光×交流の新たな仕掛けで、都市部から労働力を呼び込む
この記事の配信元
株式会社タイミー
株式会社タイミー

※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

人口減少や少子高齢化が進展する中、地域産業の担い手不足が多くの地方で顕在化しているのは、周知の通りだ。苓北町(熊本県)も、そうした悩みを抱える自治体の1つだが、同町では近年、民間企業との提携を通じて、都市部に集中する労働力を地域に呼び込むためのユニークな取り組みを実施しているという。それはいかなる取り組みか。その詳細と得られた成果などについて、同町担当者2人に話を聞いた。

[苓北町] ■人口:6,306人(令和6年5月末現在) ■世帯数:3,035世帯(令和6年5月末現在) ■予算規模:76億3,425万円(令和6年度当初) ■面積:67.58km² ■概要:熊本県の南西部に点在する天草諸島のうち、もっとも大きな島である天草下島の北西端に位置している。西は天草灘をのぞみ、北は千々石灘に面した美しい海に囲まれ、数百年にわたって天草の政治、経済、文化の中心地として繁栄した歴史を持つ。昭和30年に3ヶ町村が合併、苓北町が誕生し、翌昭和31年に都呂々村が編入合併され、現在の苓北町となった。
インタビュー
川原 大輔
苓北町
農業委員会
川原 大輔かわはら だいすけ
インタビュー
酒井 孝
苓北町
企画政策課 課長補佐
酒井 孝さかい たかし

人口減少と少子高齢化で、産業の担い手が確保できない

―苓北町では、地域産業の担い手不足が課題だったと聞きます。

川原 当町は人口減少や少子高齢化を背景に、地域産業の担い手不足が深刻化していました。特に、米作とレタスの二毛作を展開する農業と、岩ガキなどの水産養殖業を基幹産業とする当町では、生産時期が集中する夏と冬の季節労働力確保が喫緊の課題でした。これまでは、近隣の人的つながりで労働力をまかなってきましたが、高齢化によりそれも難しくなってきました。町としても対策を迫られていましたが、地域外から労働力を呼び込んできた経験がなく、有効な対策を打てずにいました。そうした中、令和2年に地元企業からタイミー社を紹介され、同社から『タイミートラベル』というサービスの提案を受けたのです。

―どのようなサービスですか。

酒井 地方での仕事や生活を体験したい都市部の人材と、人材が欲しい地方の事業者とをマッチングするサービスで、地方での仕事で滞在費をまかないながら、「第二の故郷」を見つけるというコンセプトでした。

 遠隔地にある当町にとっては、仕事を通じて都市部から人を呼び込むこの仕組みはとても興味深いものでした。また、当時はコロナ禍にあって、世の中で移住や多拠点居住に関心が集まり始めた時期でもありましたので、当町では『タイミートラベル』に可能性を感じ、導入を決めました。

関係人口の創出で、一定の成果を実感

―実際の取り組みの詳細を聞かせてください。

川原 まずは、人材確保に課題を抱える事業者を募集したところ、農業と水産養殖業で延べ13事業者が参加し、夏と冬の2期に分けて、働き手を募集しました。『タイミートラベル』は、短時間、短期間の働き方、いわゆるスポットワークのプラットフォーム『タイミー』を活用したサービスであるため、就労期間は1週間程度となり、5日間の「仕事」に、地域での「観光」と「交流」を組み合わせます。当町でも、この枠組みに沿ってプランを設計し、周辺地域への観光アテンドは町職員が担当。地域との交流にも参加する形をとりました。

―募集の成果はいかがでしたか。

酒井 当初は、どれだけの人材を集められるのか、正直不安もありましたが、当町事業者からの20人の募集に対し、応募総数は令和4年度で70人、同5年度は113人でした。事業者とワーカーが直接契約する形態のため、実際の採用に至ったのは、令和4年度が12人、同5年度が13人でしたが、応募数や採用数はいずれも想定を上回る水準だったといえます。

川原 参加したワーカーを分析すると、「一次産業への関心」や「将来の起業のため」といった目的意識が強いワーカーが多く、短期就労とはいえ真剣に業務に取り組む姿が印象的でした。就労期間終了後も、農産物の調達やふるさと納税といった形で事業者と継続的な関係性を構築しているワーカーもおり、なかには大学の農業サークルとの定期交流に発展しているケースもあります。

―今後の方針を聞かせてください。

川原 ワーカーからは、「人の優しさと自然美に触れ、苓北町が好きになった」といった声が聞かれており、関係人口の創出とともに、苓北町の魅力を伝えるという点でも一定の成果を実感しています。また、地元事業者においても、地域外から人材を受け入れる素地が整ってきたようです。そのため、この事業を今後も継続しながら、さらに取り組みの広がりを持たせるとともに、中長期的には当町への移住、定住の創出という成果につなげていきたいと考えています。

岐阜県下呂市
域内産業における人手不足解消②
地域に眠った労働力を掘り起こせるスポットワークは有効なツール

ここまで苓北町が活用した「スポットワーク」という新しい働き方に着目し、地域の眠った労働力を掘り起こすことに成功した自治体がほかにもある。下呂市(岐阜県)もその1つだ。観光業や農業を基幹産業とする同市では、スポットワークを通じて季節性のある労働需要の波に対応し、事業の担い手確保で成果を上げているという。取り組みの詳細とその成果について、同市担当者2人に話を聞いた。

[下呂市] ■人口:2万9,163人(令和6年6月1日現在) ■世帯数:1万2,053世帯(令和6年6月1日現在) ■予算規模:387億5,159万円(令和6年度当初) ■面積:851.21km² ■概要:平成16年3月に旧益田郡の萩原町、小坂町、下呂町、金山町、馬瀬村の5町村が合併して誕生した。市内のほぼ中央を飛騨川が南へ流れ、西には馬瀬川があり、周囲には霊峰御嶽山をはじめ1,000mを超える急峻な山々がそびえ、飛騨木曽川国定公園や県立自然公園なども位置する自然豊かな地域でもある。江戸時代の儒学者、林羅山が、有馬・草津と並ぶ天下の三名泉と表した下呂温泉は有名。
インタビュー
山下 角英
下呂市
農務課 主任主査
山下 角英やました かくえい
インタビュー
金子 祥也
下呂市
企画課 主任
金子 祥也かねこ よしや

新聞の紹介記事から、直感的に「これは使える」と

―下呂市が、スポットワークに関心を持った経緯を教えてください。

山下 当市の主要産業の1つである農業で労働力不足が問題となっていたことが背景にあります。農業においては、田植えや収穫期などの繁農期にだけ労働力を必要とする事情がありますので、我々農務課としても、令和4年には「半農半X*」の取り組みを推進するなど、さまざまな対策を講じてきました。ちょうどその頃、ある地域の農協がスポットワークを活用し始めたと新聞記事で紹介されていたのです。直感的に「これは使える」と思い、タイミー社へ連絡を取ったのがきっかけでした。

―「使える」と思った理由は、なんだったのでしょう。

山下 繁農期にだけ労働力を必要とする農業とスポットワークとの親和性が高いと思ったからです。また、『タイミー』を使えば、子育て世代の主婦層や高齢者といった、これまでフル活用できていない市内の新たな労働力も掘り起こせるとの期待もありました。『タイミー』のようなプラットフォームは、「都市部のツール」という先入観があるかもしれませんが、話を聞くと、じつはこの時点ですでに『タイミー』への登録ワーカーは下呂市内にも多く存在していたといいます。しかし、市内の事業所が十分活用できていなかったので、これらのワーカーはほとんど市外へ流出していたのです。今後、下呂市で登録事業所が増えれば、近隣の登録者を取り込めるとの狙いもありました。

*半農半X : 生活の半分は農業、もう半分は趣味や自分のやりたい仕事をするという生き方

登録事業所数は約4.4倍、ワーカー数は約2.5倍に

―その後、どのように取り組みを進めたのですか。

金子 タイミー社と協議を重ねる中で、このスポットワークという仕組みは、農業だけでなく、観光業や飲食業といった当市の基幹産業との親和性も高く、ゆくゆくは介護・医療といった別の主要産業にも活かすことができるのではないかと感じました。そこで、令和5年3月にタイミー社と業務提携に関する協定を締結し、説明会を開催して登録事業所を募集しました。

―この間の効果はいかがですか。

金子 観光業や飲食業、農業分野で活用されており、令和6年3月の前年同月比実績では、登録事業所数は約4.4倍、募集人数は約27.3倍、ワーカー数は約2.5倍と、いずれも順調に増加しています。

山下 市外からのワーカー流入も発生しており、労働力確保のみならず、関係人口の創出という観点でも効果が表れています。子どもたちの職業体験や市職員の副業体験など今後の活用アイデアもわいており、スポットワークが自治体の課題解決に有効なツールになることは間違いないと実感しています。

支援企業の視点
労働力不足の解決に必要な視点は、いかに潜在労働力を掘り起こすか
インタビュー
葛西 伸也
株式会社タイミー
スポットワーク研究所 地方創生G グループマネージャー
葛西 伸也かさい しんや
昭和60年、青森県生まれ。複数の未上場ベンチャー企業にて教育や地方創生の新規事業を立ち上げ、黒字化を実現。自社事業のほか、雇用・移住・企業誘致などの自治体業務を受託し、7年間で全国25自治体、40以上のプロジェクトをPMとして担当。令和2年5月、地方創生・自治体連携事業の責任者として株式会社タイミーに入社し、現在に至る。

―労働力確保をめぐる自治体の現状をどう見ていますか。

 地方に行くほど労働力不足は深刻で、多くの自治体に共通した課題です。人口減少が進む現状では、従来の「正社員・フルタイム労働」を前提とした人材の確保はますます難しくなり、問題の解決は遠のくことになります。これに対し、当社のスキマバイトサービス『タイミー』が提供するスポットワークは、有効な解決策になりえます。

―詳しく教えてください。

 スポットワークは、主婦やシニア、副業者といった潜在労働力を掘り起こせる点が特徴です。ワーカー1人がいわば1.6人分、1.8人分の労働力になるのです。アプリで簡便にマッチングできる『タイミー』なら活用が広がり、労働市場のすそ野も広がります。仕事に交流と観光を組み合わせ、都市部に集中するワーカーに対し、地方で「はたらく」体験を通じて、第二の故郷を見つけられるサービス『タイミートラベル』では、関係人口や移住・定住につながるマッチングを創出できます。登録ワーカーへの調査では、6割が地方に興味を持っているとの結果が出ていますが、これら都市部のワーカーとの接点をつくれるのが『タイミー』の強みです。

―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。

 当社は、『タイミー』を全国どこでも使える、いわば「はたらく」インフラに育てることを目指しています。『タイミー』が誇る700万人の労働力を活用し、地方の労働力不足や東京一極集中といった課題を自治体と連携しながら解決していきます。

株式会社タイミー
株式会社タイミー
設立

平成29年8月

資本金

36億3,000万円(資本準備金含む、令和5年8月現在)

従業員数

1,188人(うち正社員922人)(令和6年5月現在)

事業内容

アプリケーションの企画・開発・運営

URL

https://corp.timee.co.jp/

お問い合わせ先
spotworklabo_govt@timee.co.jp
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