【地域活性化】旅行客の各種データを可視化すれば、実効性の高い観光施策が策定できる
(ANAグループの地域創生 / ANAホールディングス(ANAあきんど))


※下記は自治体通信 Vol.72(2026年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地域経済の活性化や関係人口の創出を目的に、各自治体は積極的に観光施策に取り組んでいる。そうしたなか、自治体の地域創生支援に取り組むANAグループのなかでも観光施策の支援を行っているANA X代表の神田氏は、「観光施策でどのような効果があったのかを把握できていないと、単発の取り組みになりかねない」と話す。そこでまずは、旅行客の各種データを可視化することが重要だという。同氏に、それによりどのような効果が期待できるのかなど、観光施策の要諦を聞いた。

あいまいな成果では、次の打ち手に活かせない
―自治体の観光施策をめぐる状況をどのように見ていますか。
各自治体は積極的にイベントなどを企画して、集客を図ろうとしています。世界遺産や温泉といった有名観光地を持つ自治体はもちろん、観光地ではなくても、地元の事業者や関係者と連携し、その土地独特の歴史や文化、食を絡ませつつ、さまざまなコンテンツを提供しています。近年では、ガストロノミーツーリズム*などに取り組む自治体が増えていますね。そうした点において、自治体の観光施策は活性化していると言えるでしょう。しかし、自治体のみなさんから話を聞く限り、現状の観光施策には大きな課題があると我々はとらえています。
―どのような課題でしょう。
たとえ集客に成功したとしても、どのような属性の人が来たのか、イベント前後にどこへ立ち寄ったのか、あるいは地元産品を購入してくれたのか、といった実際の効果を自治体が具体的に把握できていないケースが多いということです。そのため、「なんとなく多くの人に来てもらった」といったあいまいな成果しか残らないうえに、次の打ち手を考えることができず、単発の取り組みになってしまいかねないのです。これは非常にもったいないことだと言えるでしょう。
―良い解決策はありますか。
訪れてきた人たちの年齢や性別といった属性や、どこから来てどこに移動したのかの人流、どこでなにを購買したのかの消費動向などの各種データを可視化することです。それにより、「今回のイベントがどのようなターゲットに訴求したのか」「どのような周遊が生まれてなにが購買されたのか」などの有益な情報が得られ、次の施策に落とし込むことが可能になります。実際に、自治体にヒアリングを重ねると「旅行者の行動をデータで把握したい」というニーズは数多くあります。しかし、コスト面などの問題から実施をためらう自治体が多いのも事実です。そこで当社では、航空輸送で培ってきたネットワークと顧客基盤、デジタル上の各サービスを活用することで、自治体に大きなコスト負担をかけることなく、データを把握・提供しているのです。
*ガストロノミーツーリズム:その土地の気候風土で育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的としたツーリズムのこと

複数のデータを可視化すれば、情報収集・分析が効率的に
―どのようにして、データを把握しているのですか。
たとえば、属性については『ANAマイレージクラブ』(以下、『AMC』)の会員から活用の許可を得た情報によって把握できます。『AMC』はフライト利用や買い物などを通じて「マイル」が貯まる・使えるポイントプログラムで、会員数は現時点で約4,400万人です。「マイルを貯めて旅行に行きたい」という動機を持つ会員が多く、こうしたデータ収集との親和性は高いといえます。人流データは、スマホアプリ『ANA Pocket』で把握できます。これは、徒歩、自転車、自動車、電車、飛行機などの移動でマイルが貯まるサービスで、エリア内の周遊状況や滞在状況がわかります。そして消費は、決済サービス『ANAカード』『ANA Pay』で把握できるのです。
なお、こうしたデータを把握して可視化する際にはポイントがあります。
―それはなんでしょう。
一つひとつのデータを個別に可視化するのではなく、我々のように複数のデータを可視化することです。そうすれば、「30代の女性向けに、地元の食材を使った料理が楽しめるグルメ周遊ツアーを企画しよう」といった具合に、把握したデータを詳細な施策へ落とし込みやすくなります。また、各データの提供を別々の事業者に依頼する必要もなく、効率的なデータの情報収集・分析や、さらなるコストダウンにつながります。
また当社では、単に各データを可視化するだけでなく、独自のネットワークやプラットフォーム、サービスを組み合わせて活用することによって、より効果的な観光施策を支援できます。それが、我々の大きな強みであると自負しています。

データ可視化と、周遊を実現した支援事例
―具体的な支援事例を教えてください。
それでは、2つの支援事例を紹介します。1つ目は、神津島村(東京都)を支援した事例です。伊豆諸島のほぼ中間に位置する神津島村では、「観光誘客がしたい」「どんな来島者がいるか知りたい」「神津島の魅力を世間に発信したい」といった課題を持っていました。そこで、神津島を応援する共同制作イベントが開催され、ANAグループとしても参加しました。我々は、『ANA Pocket』内に神津島専用のミニアプリを作成しました。そして、島内の観光名所をアプリ内の地図上で「見える化」するとともに、そこに「チェックイン」すると、ポイントが貯まる仕組みを導入しました。結果、イベント参加者の約28%がすべてのチェックインを達成し、島内での周遊をうながせました。また、『AMC』の会員情報によって来島者の属性を可視化することができ、次の施策を策定するための重要な資産となりました。
―もう1つの支援事例も教えてください。
具体名は伏せますが、ある県を支援した事例です。同県は誘客促進キャンペーンを実施していましたが、期待以上の誘客にまでつながっていませんでした。そこで、ANAグループのWebサイト内に同県の特集ページを設置したほか、当グループのメンバーがおすすめの産品を紹介するライブコマース『ANA LIVE SHOPPING』にて県産品を紹介し、告知を行いました。また、『ANA Pocket』の「チェックイン」を活用し、県内の観光スポットを「食」「文化」「歴史」といったテーマごとに設定し、周遊を促す施策を行いました。結果、ライブコマースでは視聴者の約78%が「行きたくなった」と回答し、同県への誘客を後押しする一助になりました。また、「チェックイン」では「食」をテーマにしたスポットへの集客や「食」への決済が多かったため、次年度は利用の多かった属性に対し、「食」を切り口とした周遊促進に注力するといった施策を同県は検討しています。
ほかにも、多くの自治体と連携し、観光施策を推進しています。

「非日常」と「日常」をつなぎ、一気通貫の支援を実現
―なぜ、データを活用した自治体支援を行っているのですか。
やはりANAグループの持つ豊富なデータを活かせば、カンと経験に頼らず、より実効性の高い自治体の観光施策に貢献でき、結果として地域創生につながると考えているからです。なかでも、当社はマイルを活用し、ECショッピングモール『ANA Mall』や『ANA LIVE SHOPPING』などのサービス開発を通じて、旅行という「非日常」だけでなく「日常」においても、会員と強い接点を持っています。そのため、来てほしいターゲット層にピンポイントで事前に情報を届けるとともに、旅の後も日常のサービスを通じて地域との接点を持ち続けることが可能です。
―いわゆる「タビ前」「タビ中」「タビ後」を通じた観光施策の支援ができると。
そのとおりです。だからこそ、まだ現地に関心がないお客さまを振り向かせることや、旅行が終わった後でも関係人口を構築していくこともできるのです。こうした、データの可視化にとどまらない一気通貫の支援ができるのは、エアライン事業を軸にさまざまな事業を展開しているANAグループならではだと自負しています。
地域の魅力を発掘し「稼ぐ地域」の実現に貢献する
―自治体に対する、今後の支援方針を教えてください。
引き続き、自治体が抱える課題をANAグループが持つデータとサービスで解決していきたいですね。当グループには、日本全国33ヵ所に相談窓口があり、グループのメンバーが実際に駐在しています。そのため、膝を突き合わせて具体的な観光施策の相談を行うことも可能です。必要であれば、地元の事業者を巻き込んで新たなツーリズム施策なども生み出せていけたらと考えています。その結果として、地域の魅力を発掘し、「稼ぐ地域」の実現に貢献します。
我々は「地域と共に走るパートナー」でありたいと思っていますので、観光施策でお困りの際は、ぜひ我々に相談していただきたいですね。一緒に地域を盛り上げていきましょう。

| 設立 | 平成28年10月 |
|---|---|
| 資本金 | 2,500万円 |
| 従業員数 | 780人(令和7年4月現在) |
| 事業内容 | ANAグループのマイレージプログラムの開発・運営、旅行事業、新規事業開発など |
| URL |





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