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自治体職員の約6割が仕事に不満を抱えている

    自治体職員の約6割が仕事に不満を抱えている

    【自治体通信Online 寄稿連載】新・自治体組織論②(船井総合研究所 経営改革事業本部 地方創生グループ・関根 祐貴/元埼玉県庁職員)

    現在は船井総研で地方創生支援などをしている関根 祐貴さんに新しい自治体組織論を考察してもらう本連載の第1回では、住民CS(行政に対する住民満足度)の高さと相関関係にあり、関係人口増などの重要な施策の成果にも大きく影響する「職員ES」(仕事に対する職員満足度)の概念やその重要性についてお届けしました。(参照記事:「住民満足度向上の鍵は『職員ES』にある」)第2回では、アンケート調査から明らかになった職員ESの実態などをお伝えします。

    【目次】
    ■ 一般企業に比べて20ポイント以上も低い
    ■ 低いESは自治体の基盤にマイナス
    ■「仕事観の変化」に対応できていない?
    ■ 周辺自治体以外にも「採用競合」は拡大
    ■ 厳しさ増す人材確保環境

    一般企業に比べて20ポイント以上も低い

    弊社・船井総研ではこれまで多数の中小企業をコンサルティング支援してまいりました。その中で中小企業を対象に行ってきた「組織力診断」では、それぞれの企業の「働くことへの満足度」について、1,200社を対象に調査を行っています。

    そしてこれらの実績をもとに平成30年秋、全国でも例のない「行政職員の職員ES」について、実に500の地方自治体への調査を行いました。(下図を参照)

    その結果、行政職員のうち、「総合的にみて、この自治体で働けていることに満足している 」という設問に対し「まさにそう思う」、「どちらかというとそう思う」とポジティブな回答をした割合は約42%にとどまり、実に半数以上の58%の職員が働くことに対し前向きにとらえていないことが判明しました。

    職員ESの低さは自治体のボトルネックに
    職員ESの低さは自治体のボトルネックに

    「まさにそう思う」「どちらかというとそう思う」を合わせた、その組織で働くことの「満足度」についてポジティブな回答をした自治体職の合算スコアである約42%という値は、一般企業平均のスコアの61%を大きく割り込むもので「民間企業に比して行政職員のES(Employee satisfaction=従業員満足度)は低い」という結果になりました。

    職員ESが低いことはそれ自体が自治体のボトルネックとなります。練りに練って検討した事業スキームで予算化したとしても十分にその魅力を住民に伝え、満足感を持ってもらうことはできません。
    (参照記事:「住民満足度向上の鍵は『職員ES』にある」)

    それだけ職員ESは住民CS(Customer satisfaction=顧客満足度)に大きな影響を与えるものなのです。

    低いESは自治体の基盤にマイナス

    しかしながら行政が果たすべき公共の福祉の増進を中心に考えた場合、「住民へのサービス提供・業務がしっかりと提供できていれば自治体としてはそれで充分である」と考えることもできるでしょう。職員ESが低くとも、行政サービス運営がきちんと行われているならば何ら問題は起きないということです。

    しかし、職員ESと住民CSは相関関係にあることを前回の連載でお伝えしました。住民CSに気を配る一方で職員ESにも意識を置かなければ、住民CSの向上を政策目標に掲げても効果を出すのは難しいでしょう。
    (参照記事:「住民満足度向上の鍵は『職員ES』にある」)

    また、果たして日々の業務さえ粛々とこなしていれば「自治体組織に職員ESは不要」なのでしょうか。

    実は職員ESの低下は全く別の部分でも影響が発生します。それは将来にわたる自治体職員採用への影響です。

    「仕事観の変化」に対応できていない?

    今の日本はいわゆる売り手市場です。そして人口減少・少子高齢化に直面していることから、各企業は新卒・既卒問わず人材確保に躍起です。そのうえ働き方改革を背景に大小問わず一般企業各社において働きやすい環境を整える動きが起きており、いわば「人材獲得戦争時代」となっています。

    一方で就職希望者、特に新卒者の職業選択理由では以前とは大きな変化が生まれています。それは、働くことにおいて新卒者が最も重視する項目が「楽しい生活をしたい」となっており、経済的理由以上に自らの生活をより楽しく充実したものにしたいという傾向に向いてきているためです。(下図の上グラフを参照)

    また、会社を選択する理由で最も大きい理由は「自分の能力・個性が生かせるから」となっていることから、没個性化し淡々と指示された業務をこなす、という仕事ぶりを求めて会社選択を行っていません。(下図の下グラフを参照)

    優秀な人材を獲得するためには「自分の能力・個性を生かしたい」という仕事観に応えることが欠かせない時代に
    優秀な人材を獲得するためには「自分の能力・個性を生かしたい」という仕事観に応えることが欠かせない時代に

    人材獲得を効果的に実施するために、これら就職希望者のニーズに応えられるような新たな環境を整えているか否かが他社との優位性の有無となってきています。

    周辺自治体以外にも「採用競合」は拡大

    さらに、働き方改革等によって人材を呼び込もうと考えているのは大手企業だけではありません。

    特に従業員300人以下の中小企業においては有効求人倍率が高騰しています。平成31年では実に8.62倍となり、大手企業以上に中小企業間で人材の確保競争が激化しています。

    いまESを高め人材確保に最も動いているのは中小企業であると考えてよいでしょう。(下図を参照)

    採用難は自治体にとっても他人事ではない
    採用難は自治体にとっても他人事ではない

    この従業員300人以下というのは自治体規模でいうと人口3万人以下の自治体組織にあたります。また、地方の自治体であれば都市圏に比べ地域における従業員300人以下の企業割合は増加する傾向にあります。

    つまり、自治体組織の今後の人材採用においては、これまで競合と捉えてきた「周辺自治体」のみならず「地域の一般企業」をも競合として人材獲得施策を進めていかなければ、自治体組織の未来に向けた職員採用に大きな影響を与える可能性が高いということになるのです。

    自治体の市場競争力を高める指標

    職員ESは採用市場における当該組織の市場競争力の指標に他なりません。日本の世相や日本人の思考の変化により、現在の地方自治体を取り巻く人材確保の環境がいかに厳しいものになったかをご認識いただけたことかと思います。

    次回は実際の事例として職員ESの高い自治体を取り上げます。サービスプロフィットチェーンの好循環のようすをご覧ください。

    (第3回「『職員ES』が高い行政組織のつくりかた~自治体実例より」に続く)

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    本連載「新・自治体組織論」バックナンバー

    第1回 住民満足度向上の鍵は「職員ES」にある

    関根 祐貴(せきね ゆうき)さんのプロフィール

    埼玉大学教育学部英語学科卒業後、埼玉県庁に入庁。2018年に株式会社船井総合研究所に入社し、地方創生支援部 地方創生グループに所属。
    前職の埼玉県庁では道路事業、介護保険事業、予算調整に関わる。「地方・東京の両方を元気にしたい」との信念から船井総合研究所へ入社。地域企業の活性化と行政の活性化を同時に達成するコンサルティングを行っている。

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