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自治体職員たちのリスキリング挑戦記 #2
キャリコンの資格取得に“アラフィフ”で挑戦!

《連載:自治体職員たちのリスキリング挑戦記 #2》公務員のリスキリングはノーリスク!

    リスキリングに挑戦する自治体職員にインタビュー。自治体職員にとってリスキリングにはどんな意味や意義あるの? リスキリングに取り組むのは大変では? など気になる“ホンネ”を話してもらいます。今回は国家資格キャリアコンサルタントの資格取得に“アラフィフ”で挑戦し、一発合格した熊谷市職員の西村文男さん。「公務員のリスキリングはノーリスク。やらなきゃソン」と話す西村さんにリスキリングとの出会い、挑戦した想いなどを聞きました。

    プロフィール
    西村 文男
    熊谷市 職員
    西村 文男にしむら ふみお
    熊谷市 福祉部 保育課 学童保育担当副参事/児童館長 児童クラブ所長。商工課、財政課、職員課、企画課等を歴任し、2023年より現職。2024年1月に国家資格キャリアコンサルタントを取得。

    3つのきっかけ

    ―西村さんは“五十の手習い”でリスキリングにチャレンジし、今年1月に一発合格で国家資格キャリアコンサルタント(以下、キャリコン)を取得されたそうですね。

    昭和47(1972)年生まれですので、おっしゃるように“五十の手習い”ということになりますね。

    ―すごいと思いますが、こう言ってはなんですけど、すごろくでいえば50歳前後は公務員としてほぼアガリ、ですよね…。

    言いたいことはわかります(笑) 公務員のアラフィフといえば定年までの自分の“落ち着きどころ”が大体見える年齢なのでジタバタしてもしょうがないんじゃないの、ということでしょ?(苦笑)
    でも、公務員のリスキリングに早いも遅いもないし、ある程度年齢がいってから挑戦する意味も大きいと感じています。そのことをお伝えするため、私がリスキリングにチャレンジすることになった3つのきっかけをお伝えしましょう。

    「国家資格キャリアコンサルタント」とは?
    職業能力開発促進法(2016年)によって規定された、職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門職。資格者数は72,361人(2024年1月末現在)。学科と実技のふたつの試験がある。

    公務員のキャリアは直線の延長線上にはない!

    キャリアコンサルタント登録証を手にする西村さん

    ―では、最初のきっかけを教えてください。

    立教大学で兼任講師をしていたときに聴講した、埼玉県庁で女性初の知事室長になられた小池要子さんの講義です。
    兼任講師になったのは企画課にいたとき。熊谷市出身の立教大学の教授の方から「熊谷にゆかりのある人でリレー講義をしたい」というお話を頂戴し、週に1回ほど、半期で14回に関わらせていただくことになりました。2年ほどやらせていただきました。

    ―小池さんの講義はどんな内容だったんですか?

    クランボルツ(=ジョン・D・クランボルツ。教育心理学者。専門はキャリア論)の「計画的偶発性」についてです。キャリアの8割は偶然の出来事で決まる。チャンスがきたとき偶然をつかめるように準備しておき、その偶然をつかみとっていくのがキャリアなんだ、というのがその要点。
    それまで私は公務員である自分のキャリアはいわば直線の延長線上にあって、順調なら何歳頃にはこうなっていて、何歳頃にはああなっている。そう漠然と思っていました。公務員のみなさんも庁内のキャリア研修等で同じような話を聞かされてきたと思います。
    しかし、小池さんの講義はそれとは真逆。強く印象に残り、「このままではいかんぞ」と感じました。それが最初のきっかけです。

    「自分の興味」への気づき

    ―完全offモードだったスイッチが入った瞬間、ということですね。2つめのきっかけを教えてください。

    公務員サロンに入会し、セミナーをたくさん聴講したことです。セミナーにはいろんなプログラムがあり、自分の業務に関係があるテーマからまったく関係ないものまで、幅広く聞きました。
    話が遡りますが、いろんな人からたくさん話を聞いて新しい知識を獲得したいと思い始めたのも立教大学で兼任講師をしたことがきっかけでした。私は財政課、職員課、企画課等を歴任し、役所の全体を見られる場所にいたので、役所や行政についての知識はそれなりに蓄積している、という自負がありました。でも大学の先生等と議論になると圧倒的に知識量が足りていないことを痛感。「やはりいろんなことを学び続けなければいけないなぁ」と感じ、公務員サロンに入会したんです。
    そしていろんなセミナーを聞き回っているうちに、どうも自分はキャリア・人事に興味がある、ということがわかってきたんです。この時にキャリコンという資格があることも初めて知りました。これが2つめのきっかけ。

    “ある名言”に背中を押された!

    ―3つめのきっかけを教えてください。

    ある自治体職員の方から「公務員のリスキリングはノーリスク」ということに気づかせてもらったことです。「だったら、むしろやらない方がソンだな」と。1年前の春のことです。

    ―その自治体職員の方とはどなたですか?

    初めての公務員向けリスキリング本と言える『公務員なら挑戦したい資格ガイドブック』を昨年出版した加賀市役所の庄田秀人さん(イノベーション推進部リーダー)です。「公務員のリスキリングはノーリスク」という言葉も公務員向けセミナーで庄田さんがお話された“名言”のひとつです(笑)
    (参照記事:自著書評「公務員なら挑戦したい資格ガイドブック」)
    なるほど、そうだな、と。試験には時の運もありますから資格が取得できないこともある。でも、勉強すればその方面での知識を獲得できるので自分のバックボーンのひとつになります。不合格でも本業には影響がないし、黙っていれば周囲にもわかりません(笑) 民間企業では会社から指定された資格を取得しないと次のキャリアに行けない場合がありますけど、公務員はそんなことはありません。だからノーリスクというワケです。
    そうした庄田さんの言葉に背中を押され、キャリコンの資格取得に目標を定め、専門学校の入学手続きをしました。

    “スキマ時間”と“ざっくり計画”

    ―勉強はどのようにやったのですか?

    私は「読む」より「聞く」ほうが記憶に定着しやすいので、普段の学習は講座の音声を通勤の行き帰りや趣味の家庭菜園をしている時、あるいは防水スピーカーで入浴時に聞くといった具合でスキマ時間を活用しました。ラジオ番組を聞く感覚です。
    工夫としては、この週は〇ページから△ページまでやるといった緻密なスケジュールは立てず、「今月は大体このへんまで」といったざっくりした計画にしたこと。想定外の用事は必ず発生しますから、緻密な予定を立てて穴が開くと取り返すのが大変。でも、ざっくりなら最後に辻褄があっていればいい(笑) 精神衛生的にもいいですよね。

    家庭菜園の作業をしている西村さん。耳にはイヤフォン。「勉強はスキマ時間を活用してラジオ番組を聞く感覚で」(西村さん)

    ―それでも、本業と資格試験の両立は大変だと思います。途中で挫折しなかったのはなぜですか?

    興味があること、好きなことでリスキリングにチャレンジできたことがいちばん大きな理由だと思います。
    キャリコンの勉強をしていると「あの時のあれは、こういうことだったのか」といった具合に過去の出来事が理論化されて新たな気づきを得ることがたびたびありました。ピントのボケたイメージが解像度の高い理論に昇華し、謎が解明される。そんな驚きが何度もあり、ワクワクしました。楽しくてしょうがなかったですね。

    絶対にやってソンはない!

    ―リスキリングに挑戦したことで、仕事やプライベートにどんな影響がありましたか?

    仕事ではキャリコンの勉強で身に着いた「傾聴スキル」がとても役立っています。プライベートでは、同じキャリコンを目指している他の自治体の職員の方から相談をもちかけられるなど人脈が広がりました。
    若返ったとも思います(笑) 専門学校で一緒に通学していた仲間はほとんどが企業の人事関係の人たちで年齢も自分よりうんと若い。そうした人たちと一緒に学んで話していると、さまざまな刺激を受けます。
    面接試験のためのロールプレイではうまくできなくてみんなの前で恥をかいたことも新鮮な経験でしたね。アラフィフになるとそんな機会はなかなかありませんから(笑)

    ―リスキリングにチャレンジしていたり、これから挑戦しようと考えている全国の自治体職員の仲間のみなさんへのメッセージや資格取得後のご自身の今後のビジョンを聞かせてください。

    とにかく「公務員のリスキリングはノーリスク」ですから、絶対にやってソンはありません。気軽にチャレンジしてほしいですね。
    今後のビジョンについては、組織に貢献しながら自分でやりたい仕事をつくっていける公務員になりたいですね。偶発的計画性で、リスキリングにチャレンジしたことは、きっと自分で自分のキャリアを切り拓いていくのに役立つと信じています。たとえば民間では取り組みが始まっているセルフキャリアドックは自治体でもいずれ取り入れられるでしょう。その時、自分が必要とされる人材なっていられるよう、これからもキャリコンとしてのスキルを向上させ続けられるよう精進していきます(笑)


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