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#17:職場の先輩として行うべき三つのこと

    #17:職場の先輩として行うべき三つのこと

    【自治体通信Online 寄稿記事】
    我らはまちのエバンジェリスト#17(福岡市 職員・今村 寛)
    生まれた時からインターネットが使える環境で育ったデジタルネイティブな“Z世代”が自治体にも入庁し始めるなど、思考・行動パターンで世代間ギャップを感じる中堅・ベテランのみなさんは少なくないのではないでしょうか。今回は、未来の自治体運営を担う若手職員との接し方、対話の仕方を考えました。みなさんは若手と接するときに、どんなことに気をつけていますか?

    ごぶさたしておりました

    私事都合でしばらく寄稿をお休みしておりましたが、年度も替わり新規一転、またこの場をお借りして皆さんとの対話を続けたいと思います。
    今日は年度替わり第1回ということで、皆さんの職場に配属されたたくさんの新人をはじめとする若い世代との向き合い方についてお話ししたいと思います。

    育ってきた環境が違うけど

    令和5年度の春、私にとっては入庁してから33回目の春です。
    私の入庁した頃にはまだ生まれていなかった若い世代が毎年続々と採用され、職場に配属されています。親子ほども歳の離れた若い彼らは自分とは育ってきた時代も環境も異なり、仕事や人生に対する価値観も、職場内外でのコミュニケーションの取り方も我々の目からは異質なものに映ることがあります。
    彼らを受け入れる我々の職場側も、長い経済の低迷や厳しい行財政改革の荒波を経て人員も予算も減り、昔のように新人を温かく迎え入れ、懇切丁寧に手をかけて育てる余裕がありません。また、昔であれば「仕事は先輩の背中を見て覚えるもの」「まずは飲みニュケーション」「家庭、私事よりも当然仕事が優先」といった前時代的な価値観と方法論で、人材育成に対する意識やスキルがなくても自然と職場でOJTができていましたが、時代は変わり、今ではそういうわけにはいかなくなっています。
    この若い世代を組織の担い手として育てていくにあたり、これまで培ってきた経験則、方法論が通用しなくなる一方で、地方自治体の業務はいよいよ複雑化、高度化するばかり。十分な予算や人員が確保できず、職員ひとりひとりがその能力を最大限発揮し、組織の力を最大化することが今まで以上に求められている。そんな難しい時代にあって私たち先輩職員はこの若い後輩たちとどう向き合えばいいのでしょうか。

    憧れの先輩を超えろ

    新人をはじめとする若い後輩たちに我々ベテラン世代が期待する「成長」とはなんでしょうか。私が最もうれしい後輩の成長の証はたったひとつ。それは「先輩を超える」ことです。
    我々がいずれ歳を重ねてリタイアし、次の世代に今の自分の地位を明け渡すことになっている以上、組織の持続性、発展性を考えれば、彼らが我々の年齢、立場になった時に少なくとも我々以上のことはできなければ困るわけで、組織における人材育成の一番基本的な考えは、自分がいなくなった後を任せることができる人材、組織をどう作るかではないかと思うのです。
    しかし、「先輩を超える」と言っても、例えば自分と同じ能力、スキル、適性を備えよと言うわけではありません。彼らが歳を重ね、一定の責任を果たす役職に就いたときには、社会環境もそれに対応する組織も変化し、今とは違った状況下で新たな課題が与えられているはずです。将来、彼らがその課題に敢然と立ち向かい、その時点で有している資源と能力で解決に導くことができる人材になっていること。それが若い彼らに私が求める「成長」の姿です。
    経験が浅く、まだまだ未熟だと思っていた若い後輩たちに、やがて自分の立場を委ねることになり、最初は見よう見まねの彼らがそのうちしっかりとその立場を自分のものとし、自己流のアレンジを加えながらいつかは自分のやっていたことを超える大きな成果を遺す。そんな後輩の成長を見て、先輩としての自分を超えられた悔しさとうれしさを同時に感じることができれば、まさに先輩冥利に尽きます。
    若い後輩たちにはぜひ、憧れの先輩を目標に「先輩のようになる」のではなく「先輩を超える」ことを目指して自分のありたい姿を追いかけ、自分にしかない特技、能力を磨き、自分の良さを伸ばしていってほしいと思います。

    超えていけ!

    挑戦が育てる後輩たちの自信

    若い後輩たちに「先輩を超える」成長を促すために、私が今、自分がよい先輩として心掛けている3つのことがあります。
    ひとつは、よく言われることですが「若い彼らに何事も挑戦させる」こと。
    仕事の質やスピードを考えると「若い彼らでは経験不足」「自分でやったほうがいい」と思うことが多々ありますが、それでは人は育ちません。任せて、やらせてみて、可能であれば少し失敗させるくらいのリスクを取って、そこから学んでもらい成長してもらう。その過程こそが成長に一番必要な糧です。
    当然その過程で、業務そのものを覚え、独りでその業務を行えるようになるという効果は当然ありますが、もっと大事なのは「任せられた」「独りでできた」という喜びが生む自信。彼らが担う未来には、我々が現在与えることができる課題とは異なる、想像もできない新たな挑戦が待っているはずです。どんな課題であっても物怖じせず、自信を持って果敢に挑戦できる人材を育てるためには、彼らになるべく早いうちに多くの挑戦の機会を与え、そこでの奮闘ぶりを温かく見守り、成功しても失敗しても適切にフォローし、彼らの成長そのものをともに喜ぶことが、後輩を育てるうえで我々先輩がまず心掛けるべきことだと考えています。

    まだまだ若い者に負けるわけには

    次に掲げたいのは「自分を磨き、若い彼らの目標として立ちはだかる」こと。
    「先輩を超えろ」と言うからには、我々が先輩として、後輩たちにとって乗り越えたい壁、たどり着きたい憧れであり続けるのは当然のこと。積み重ねた年齢、経験に相応しい能力と人格を備え、それが備わっていることをしっかりと若い彼らの目に焼き付けることを意識し、時には年甲斐もなく競い合うような先輩であっていただきたい。
    間違っても、ベテランにありがちな「後は若手に任せた」と自身の成長を止めたような振る舞いをしないこと。これは、伸び盛りの若手自身にその成長を自分で止めてよいと教えるようなもの。まだまだ伸びしろが十分ある若年層のうちに自分で自分の成長に限界線を引くことを覚えさせてはいけません。
    また、新人時代にきらきらと輝いていた若手の目がいつの間にかよどみ、仕事へのひたむきな熱意が冷め、なんとなく仕事をこなすだけのダメ職員になってしまうという悲劇がいつもどこかで繰り返されていることも忘れてはなりません。生まれて最初に見たものを親と思い込む雛鳥のように、最初の職場で見たダメ先輩の姿が刷り込まれ、素直に「自分もあれでいいんだ」と思って模倣してしまう悲劇の犠牲者を出さないためにも、我々先輩が若い後輩たちの前で見せる姿勢、振る舞い、発する言葉は人材育成上極めて重要で、その影響力を常に意識すべきことを強く主張しておきたいと思います。

    課題を遺さず未来を託す

    そして最後に後輩の成長のために先輩として行うべき重要なことは、「自分の世代で片付けるべき課題を後世に残さない」こと。
    彼らの「成長」は彼らの未来を創るために必要なのであって、諸先輩の遺した負の遺産を処理するためのものではありません。彼らが「成長」で身につけた能力が我々の遺した厄介な荷物の片づけに消費されるのだと彼らがあらかじめ知れば、彼らは「成長」したいと思わなくなってしまうし、彼らもまた負の遺産を後世に送り、その次の世代が育つ意欲を失わせてしまいます。
    この負の連鎖を断ち切り、若い彼らが自身の未来を担うために成長したいと思える環境を遺す。それが未来を彼らに託し、人生を先に終える先輩の務めだと私は思います。

    この「先輩三訓」をまず我々が実践し、その背中を見て育った後輩たちが同じように次なる世代にその姿を見せ、営々と後世に受け継いでいってくれたら、こんなにうれしいことはありません。
    (「対話が拓く水道企業団の未来①~50周年事業という“対話」に続く)

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    ■今村 寛(いまむら ひろし)さんのプロフィール

    福岡地区水道企業団 総務部長

    1991年福岡市役所入庁。2012年より福岡市職員有志による『「明日晴れるかな」福岡市のこれからを考えるオフサイトミーティング』を主宰し、約9年間で200回以上開催。職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。
    また、2012年から4年間務めた財政調整課長の経験を元に、地方自治体の財政運営について自治体職員や市民向けに語る「出張財政出前講座」を出講。「ビルド&スクラップ型財政の伝道師」として全国を飛び回る。
    好きなものは妻とハワイと美味しいもの。2022年より現職。
    財政担当者としての経験をもとに役所や公務員について情報発信する「自治体財政よもやま話」(note)を更新中。

    • 主な著書

    『自治体の“台所”事情~“財政が厳しい”ってどういうこと?』(ぎょうせい)

    『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』(公職研)

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