
※下記は自治体通信 Vol.74(2026年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
令和6年9月、四條畷市(大阪府)で前代未聞のプロジェクトが実施された。前市長の退任に伴い、求人サイトで全国から市長候補を公募する取り組みだ。計209人の応募が集まり、そのなかから選ばれ、選挙を経て市長に就任したのが現市長の銭谷氏だ。四條畷市の職員だった同氏が、なぜ応募したのか。さらには、どのようなビジョンを描いて市政に取り組んでいるのか。元バドミントンの日本代表選手という経験も持つ銭谷氏に、詳細を聞いた。

「自分がやるしかない」、強い当事者意識が原動力に
―令和7年1月、どのような使命感を持って四條畷市長に就任したのですか。
もともと前任の市長が退任を表明し、全国公募という形で後継者を募ったのが、私が市長を志す転機となりました。四條畷市職員だった私は当初、「誰か優秀な人が応募してくれたらいい」くらいに考えていました。しかし、すぐにそんな自分自身に強い憤りを感じました。私はこの市で育ち、市の職員として財務部などに在籍し、前市政が掲げていた「市民中心のまちづくり」といったビジョンや、行財政改革のプロセスを内側から見て実行してきました。もし、当市の事情を知らない人が新市長になった際、これまでの積み上げが崩れてしまうかもしれない。それは、当市にとって良いことではありません。「それならば、自分がやるしかない」。そうした強い当事者意識が、200人を超える公募に手をあげ、市長に就任した私の最大の原動力になりました。
―就任後、どのような方針で行政を運営しているのでしょう。
まず、就任にあたって私が掲げたテーマは、「継承」と「発展」です。前市長の旗振りのもと、徹底した行財政改革の結果、実質収支をはじめ、市債残高の減少など各種財政指標が改善され、財政構造の健全化が図られました。それを受け、現在進行中の「第2期四條畷市総合戦略」では、令和5年度から9年度までの5年間を「未来への投資期間」と位置づけています。私のミッションは、「市民中心のまちづくり」を引き継ぎつつ、未来への投資を実行・発展させていくことだと考えています。前市長は、「日本一前向きな市役所」という組織運営理念を掲げていましたが、私は、「日本一前向きな市」としました。これは、「市民中心のまちづくり」のために市が住民をけん引するのではなく、住民の「自分たちもなにかやってみよう」という気持ちを後押しすることで、市全体に活力を生み出すのが狙いです。そして、重点施策として掲げたのが「6つの“なわて"」です。

各世代の市民の挑戦を市が支援
―具体的に教えてください。
「こどもが夢や目標を持てる」「子育て世帯が笑顔で過ごせる」「働く世代が元気あふれる」「いくつになっても活動したくなる」「いのちと生活を守る」「人とまちと自然がつながる」というテーマごとの“なわて"です。これらは「安全と安心」のほかに、「挑戦を応援する」という想いが込められています。具体的には、就学援助の認定を受けた中学生の保護者を対象に、学習塾やスポーツ・文化教室などの費用の一部を助成する「子どもの習い事応援事業」を開始しました。そのほか、健康寿命の延伸を目的にウォーキングなどによりアプリ上でポイントが貯まる「健康プログラム事業(通称:なわぽ)」や、働く人のキャリアアップを支援する「大人の学び直し支援事業」など、各世代の市民の挑戦を後押しするためのさまざまな取り組みを行っています。
公民連携による歳出抑制など、安定した行財政運営へ
―そうした施策を行ううえで、意識していることはありますか。
私がつねに念頭に置いているのは、「将来世代に負担を先送りしない安定した行財政運営」です。未来への投資は当市にとって不可欠ですが、ただ予算を投じて新規事業を増やすだけでは、苦労して再建した市の財政基盤が再び悪化してしまいます。前市政では真に必要なものを見極め、不要と判断した事業を徹底的に見直すことで財政を立て直しました。私はその「歳出を最適化する視点」を重視しつつ、「新たな視点による歳出の抑制」や「歳入の確保」などにも重点を置こうと考えています。
―具体的にどのような取り組みを検討していますか。
たとえば「新たな視点による歳出の抑制」では、公民連携があげられます。これまで当市が「100」の負担をしていた事業について民間企業と連携することで、確保された余剰財源を未来への投資に回せます。民間企業にとっても、行政と連携することで社会的信頼を得られるメリットがあります。これを実践しているのが、「保育士の処遇改善事業」です。当市と民間園が保育士の給与上乗せを負担しあうことで、市内の保育士を確保する取り組みです。民間園の園長からの「あきらかに保育士の離職率が減った」という声のほか、子どもの受け入れ数が増えるなどの政策効果も出ています。
―「歳入の確保」についてはいかがでしょう。
当市は、住宅都市ゆえに法人税が少ないという構造的な課題があります。そこで、東部に位置する田原地域の未利用地を活用した企業・産業誘致を進めています。また、当市ならではの付加価値をつけたふるさと納税の強化にも取り組んでいます。たとえば、当市のPR大使として国内外で活躍する絵本作家さんがいらっしゃるので、そのかたの作品も返礼品として企画しています。
施設再編とスポーツの力、子どもたちへ資産を引き継ぐ
―こうした取り組みの先に、どのような市の姿を見据えますか。
まず、足元のハード事業として「公共施設の再編事業」があります。当市には旧耐震基準の古い公共施設が8つあり、そのあり方について約9年間にわたり議論を続けてきました。現在、市民総合センターの複合化や廃校となった中学校跡地での防災機能のある多機能型施設の建設など、3エリアの大規模な再編計画が本格的に動き出そうとしています。この事業が進めば、耐震基準を満たすだけでなく、たとえば、新たな施設に保健センター、子育て総合支援センター、子育て関連部署の一部が集約され、母子手帳の受け取りから子育ての相談、手続きまでワンストップで市民がサービスを受けられるなど、市は大きく様変わりします。
―大変な事業ですが、住民サービスの向上に大きく寄与しますね。
そのとおりです。また、ソフト面として「スポーツの力」でまちの活力を引き出したいと考えています。私自身、実業団や日本代表の選手としてバドミントンに打ち込んできた経験があります。この経験を活かし、スポーツと福祉を掛け合わせた積極的なシティプロモーションなどを行っていきたいです。市民からも、「今回の市長は体育会系やからスポーツを頼むで」という言葉をもらっています。
私自身、30、40年後も当市で暮らす予定の1人の住民です。重要施策も含め、安定した行財政を意識したこれらの取り組みによって、子どもたちに胸を張って資産を引き継げる「持続可能な四條畷市」を創る。その強い覚悟を持って、市政運営に取り組んでいきます。




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