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新型コロナウイルス感染症対策の先に見据える山梨県の姿とは

子育てと介護支援を充実させ、「コロナ後」の明るい未来を指し示す

子育てと介護支援を充実させ、「コロナ後」の明るい未来を指し示す

新型コロナウイルス感染症対策の先に見据える山梨県の姿とは

子育てと介護支援を充実させ、「コロナ後」の明るい未来を指し示す

山梨県知事 長崎 幸太郎

※下記は自治体通信34号(Vol.34・2021年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


感染力の強いデルタ株の影響により、国内で過去最大の猛威を振るった新型コロナウイルス感染拡大の「第5波」が収まりを見せつつある。しかし、「第6波」に備え依然として新型コロナウイルス感染症対策は、自治体の最重要課題だ。コロナ禍のなか、山梨県知事の長崎氏は、事業者に対する第三者認証制度の先駆けとなった「やまなしグリーン・ゾーン認証」を打ち出し、注目を集めた。同氏は、第5波のなか、どのような取り組みを行い、そしてコロナ禍の先にどのような県の姿を見据えているのか。長崎氏に詳細を聞いた。
(インタビューは8月23日に行いました)

県民の命を守り抜くため、「三つの徹底」を実施

―第5波のなか、山梨県ではどのような新型コロナウイルス感染症対策を行っているのですか。

 山梨県では、8月20日の国による「まん延防止等重点措置」の適用を受け、新たに9月12日まで感染拡大防止のための厳戒措置を開始しました。県内の事業者に対しては、休業要請や酒類提供の停止など、緊急事態宣言地域に近い水準での協力要請を断行。そのうえで、「医療提供体制・増強の徹底」「ワクチン接種環境・整備の徹底」「コロナ禍終息を見据えた再生対策の徹底」の「三つの徹底」を実施し、県民の命を守り抜くことを最優先にしています。

―具体的に教えてください。

 「医療提供体制・増強の徹底」については、これまで国が示す基準にもとづいて算出した病床数と宿泊療養施設を用意してきましたが、重点医療機関や民間のホテルと協議のうえ、病床数を305から367に増床。宿泊療養施設も536室から673室に増やしつつ(10月1日現在で966室まで増加)、一部で酸素吸入や処方薬の投与が可能な医療強化型の宿泊施設を確保。また、ご本人やご家族の同意、かつ医師が可能と判断した場合は、療養場所を自宅に変更し、退所後もスマホを使った医師と看護師との3者面談が可能なシステムによる医療的ケアを提供します。

―残りの2つはいかがでしょう。

 「ワクチン接種環境・整備の徹底」については、現時点でワクチン接種予約が開始後ただちに埋まっていく状況ですので、とにかく各機関との連携のうえ対応を急ぎます。また、当県では現状、9割以上の高齢者がワクチンを2回接種済みですが、1割弱が未接種。高齢者全体が約25万人ですので、約2万人が未接種なわけです。万が一、その約2万人が重症化すれば、それだけで医療体制は崩壊します。そのため、高齢者においては100%近い接種を目指します。

 「コロナ禍終息を見据えた再生対策の徹底」については、現在、全庁をあげてリカバリープランの策定に取り組んでいるところです。


今回は例外中の例外措置。終息後はスムーズな移行を

―山梨県では、全国に先駆けて独自の第三者認証制度「やまなしグリーン・ゾーン認証」を実施し、注目を集めました。

 ええ。当県では事業者に対し、一方的に休業要請や酒類提供の停止をお願いするのではなく、県が定めた基準をクリアした場合は、感染症対策の言わば「お墨付き」を県が提供し、その責任を「県が負いましょう」というもの。県民も事業者を利用するリスクがあるなか、「県が保証するなら」という安心感につながる。そのリスクヘッジのために、県職員や委託業者が現地まで行って事業者側の相談に乗りつつ、調査を徹底しています。この、県民と事業者と行政の3者が「それぞれ責任をシェアしながら、しっかりと感染症対策を行ったうえで経済も回していきましょう」というのが「やまなしグリーン・ゾーン認証」の考え方です。

―ただ、今回の第5波では感染拡大により、いったんその方針を変更せざるをえなかったと。

 そのとおりです。今回の事業者への休業要請や酒類提供の停止要請は、きわめて例外中の例外と言えますし、山梨県としても県内の経済を回すため、ギリギリまでがんばってきたわけです。しかし全国に感染が拡大し、医療提供体制が脅かされるような現状において、自治体単位の感染防止策では、もう抑えられなくなっています。そこでいまは、県民の命を守るための取り組みに舵を振りきることが最優先されます。ただ、この状況はいずれ収まってきます。そして、「これくらいの感染者の発生水準なら大丈夫」という状況であれば、規制の緩和に向けてスムーズに移行したいと考えています。

社会の基礎要件を、しっかりと整える

―コロナ禍の先に、どのような県の姿を見据えていますか。

 社会の基礎を、まずはしっかり整えることを念頭においていますね。そこで重要になるのは、子育てと介護だと考えています。

 まず子育てに関しては、待機児童ゼロを実現し、次に目指すのは「セカンドステージ」の待機児童ゼロ。つまり、入園させたい保育園に、好きなタイミングで入園させることができる環境を目指しています。待機児童の総数がゼロでも、甲府市から車で約1時間かけて河口湖周辺の保育園に通わせるなんて現実的ではありませんから。

 また、4月から公立小学校にて1クラス25人学級を導入しました。

―どのような狙いでしょう。

 各児童にあわせた教育を行うのが狙いです。25人が適正人数かはわかりませんが、子どもの数が少なければ、教職員も一人ひとりに細やかな対応ができ、可能性を引き伸ばすことができますから。これは実際に教職員から言われたのですが、「少人数なら目配りができて、児童を褒めることができる」と。結果、児童の自己肯定感を高めることになり、それがゆくゆくは、努力し、挑戦する人材の育成につながるはずです。現在は1年生のみですが、2年生、3年生と随時導入していく予定です。

在宅介護が招く貧困化は、どの家庭にも起こりえる

―介護に関してはいかがですか。

 こちらは、介護待機者ゼロを目指します。高齢者を支える子育て世代の多くは、共働きです。もし高齢者の介護が必要になり、施設に入れないとすると、どちらか1人が仕事を辞めざるをえないかもしれない。いわゆる介護離職ですね。そうなると、家計を支えきれなくなり貧困を招きかねない。そのリスクは、どの家庭にもありえます。入所の必要性が高い高齢者は、県内に約1,800人いると言われており、その解消には、年間6億円が必要だと算出されています。当県には少なくない金額ですが、手が届かない数字ではない。当然、仕組みを合理化していく必要はありますが、県民に必要なことを「お金がかかるからやらない」という選択肢は我々にはありません。

―今後における行政ビジョンを教えてください。

 当面、「コロナ対策」は続くと思いますが、子育てと介護の施策を進めることで、「今をがんばれば、明るい未来が手に届くよ」ということをしっかりと示したいですね。

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長崎 幸太郎 (ながさき こうたろう) プロフィール
昭和43年、東京都生まれ。平成3年に東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現:財務省)に入省。平成9年に在ロサンゼルス総領事館勤務、平成14年に山梨県企画部総合政策室政策参事、平成16年に財務省主計局地方財政係を経て、平成17年、衆議院議員に就任。平成31年、山梨県知事に就任する。現在は1期目。
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