防災・減災 自治体事例|排水機場新設で湛水被害を防止、ため池防災工事で洪水被害を回避、石垣整備で史跡の耐震性・排水性を回復
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福岡県、愛媛県、津山市の防災・減災自治体事例
近年、気候変動の影響により気象災害が激甚化・頻発化し、南海トラフ地震等の大規模地震は切迫しています。また、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラは老朽化しており、適切な対応をしなければ負担の増大のみならず、社会経済システムが機能不全に陥るおそれがあります。
このような危機に打ち勝ち、国民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するため、防災・減災、国土強靭化の取組の加速化・深化を図る必要があります。
そこで、内閣官房 国土強靭化推進室が5か年加速化対策全123項目について、災害時に効果を発揮した事例等を幅広く調査し、関係府省庁より報告があったものを取りまとめた「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策による取組事例集」より、自治体が実施した事業を抜粋して紹介します。
今回は、福岡県、愛媛県、岡山県 津山市の防災・減災自治体事例です。
排水機場新設で湛水被害を防止|福岡県
福岡県は突発的または広域的な洪水等に伴う長期的な市街地等の浸水による多数の死傷者の発生および防災インフラの損壊・機能不全等による洪水等に対する脆弱な防災能力の長期化を防止するため流域治水対策(農業水利施設の整備)として「西ノ島排水機場建設事業」を実施しました。
同事業は湛水被害が生じた地域に湛水被害防止を目的として排水機場を新設したもので、令和5年7月豪雨での上流部越水の被害を防止しました。
地域の概要・課題
福岡県久留米市の浮島地区は筑後川とその支流に囲まれた低平地であり、地形的な特質から大雨時に排水が効かず湛水している状況でした。
特に近年では令和2年7月豪雨(最大降水量48.0mm/h)において地域農地が湛水し、地域の農業に大きな影響を及ぼしました。
事業の概要
低平地における湛水被害を解消するため、排水機場の新設工事を実施し、令和5年4月に計画排水能力3.4㎥/sとなる西ノ島排水機場を新設しました。
効果
排水機場の新設による排水能力の強化を行ったことで、令和5年7月豪雨では最大降水量が令和2年7月豪雨よりも多い51.0mm/hでしたが、農地および宅地への湛水被害を未然に防止することができ、地域の安全・安心の確保に寄与することができました。
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ため池防災工事で洪水被害を回避|愛媛県
愛媛県は突発的または広域的な洪水等に伴う長期的な市街地等の浸水による多数の死傷者の発生および防災インフラの損壊・機能不全等による洪水等に対する脆弱な防災能力の長期化を防止するため防災重点農業用ため池の防災・減災対策として「半地池ため池整備」を実施しました。
同整備は、防災重点農業用ため池の整備により、堤体を補強するとともに、洪水吐きの流下能力を向上させることで、地震や豪雨による堤体の決壊を防止し、下流の安全を確保するものです。
地域の概要・課題
防災重点農業用ため池である「半地池」は、築造から130年以上が経過し、堤体の法面浸食の進行や耐震性能の不足、洪水吐きの流下能力不足により、地震や豪雨時にため池が決壊し、下流の住宅に被害を与えるおそれが懸念されていました。
事業の概要
地震や豪雨による堤体の決壊等を未然に防止し、下流の農地や住宅の安全を確保するため、防災重点農業用ため池において、堤体の補強および法面保護による浸食防止、洪水吐きの改修による流下能力の向上、緊急時の速やかな水位低下を可能とする緊急放流ゲートの設置等の防災工事を実施しました。
見込まれる効果
ため池の防災工事を実施することにより、地震や豪雨時に堤体の決壊等を未然に防止し、ため池下流の農地や住宅への被害を回避することが見込まれます。
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石垣整備で史跡の耐震性・排水性を回復|津山市
岡山県 津山市は貴重な文化財等の喪失や地域コミュニティの崩壊等による有形・無形の文化の衰退・損失を防止するため史跡名勝天然記念物等の老朽化対策として「歴史活き活き! 史跡等総合活用整備事業」を実施しました。
同事業は津山城跡の老朽化した石垣を適切に修理したもので、令和4年台風14号や令和5年台風7号において、整備済の石垣については崩落等の被害を防止しました。
地域の概要・課題
丘陵地に所在する石垣等の史跡は、水害や地震による被害を受けやすく、崩落した土砂が民地に流入する被害も発生しています。
このため、史跡名勝天然記念物については適切な周期で老朽化対策整備を行う必要がありました。
事業の概要
津山城跡において、孕み出しが生じる等の老朽化が確認された石垣について、一旦解体し、石垣を詰み直すとともに、栗石や埋込石を詰め直し、適切な耐震性や排水性能を回復する整備を行いました。事業面積は251.6㎡でした。
効果
津山城跡では、平成30年7月豪雨にて法面が崩落するなどの被害が発生していました。
本事業は令和5年3月に完了したものですが、令和4年の台風14号上陸時には概ね整備できていたため、場内の他の箇所では被害(復元建物である備中櫓の漆喰壁剥離等)が発生したところ、整備を実施した「二の丸東側石垣」では被害が生じませんでした。
また令和5年の台風7号においては、隣町に所在する文化財において遊歩道が破損する被害が発生しましたが、津山城跡の整備済の石垣に被害は生じませんでした。
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〈参照〉
内閣官房 国土強靭化推進室「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策による取り組み事例集」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/kouhou/5kanen/pdf/jirei-all.pdf