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市の魅力を高める施策を、公民連携で次々に生み出せるはず

大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第18回

市の魅力を高める施策を、公民連携で次々に生み出せるはず

羽曳野市長 山入端 創

※下記は自治体通信 Vol.45(2022年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第18回目となる今回は、令和3年1月に公民連携の専門窓口として「公民協創デスク」を設置した羽曳野市を取材。公民連携に対する考え方や取り組みの成果などについて、市長の山入端氏と同市担当者に話を聞いた。

[羽曳野市] ■人口:10万9,079人(令和4年10月31日現在) ■世帯数:5万1,394世帯(令和4年10月31日現在) ■予算規模:824億2,718万円(令和4年度当初) ■面積:26.45km2 ■概要:市の東部には広大な果樹園があり、「ぶどう」や「いちじく」は特産品として有名。市内には、国内最大級の応神天皇陵古墳をはじめ、大小合わせて多くの古墳があり、隣接する堺市・藤井寺市と合わせて49基が「百舌鳥・古市古墳群」として、世界遺産に登録された。「羽曳野」の地名は、没後白鳥となったヤマトタケルがこの地に舞い降り、天高く飛びさった様子が「羽を曳くが如く」と伝わる、「白鳥伝説」に由来しているという。
羽曳野市長
山入端 創 やまのは はじめ

行政のリソースだけでは、「難題」には取り組めない

―公民連携の専門窓口を設置した経緯を教えてください。

 当市を含む南河内地域は、大阪府内でも人口減少や少子高齢化の進展が深刻化しており、このままではいずれ住民サービスが維持できなくなるという危機感を抱いています。行政だけでは、このような「難題」に取り組むのは困難なため、いまこそ公民連携を進めていく必要があると考えたのです。たとえば、豊富な地域資源を活かしたシティプロモーションを公民連携により戦略的に進めることで、まちに愛着を持って住み続ける住民が増え、人口減少の歯止めにつなげられます。こうした、当市の魅力を高める施策を公民連携で次々と生み出すことを期待し、令和3年1月に「公民協創デスク」を政策推進課内に設置しました。

―専門窓口の設置以降、どのような成果があがっていますか。

 令和4年9月末時点で、20以上の民間企業・大学と連携協定を締結しました。たとえば、災害時の物資提供などの協力や、高齢者のデジタルデバイド対策など、幅広い分野で連携が進んでいます。また、大学との連携では、出生届などに学生のデザインを採用しました。今回、新たな大学との連携も加わり、このような取り組みが一層進むことを期待しています。職員の意識も変わりつつあり、庁内全体が公民連携を視野にさまざまな取り組みを行っています。たとえ大きな取り組みではなくとも、アイデア一つで、市の魅力を高めることはできると考えています。こうした公民連携の積み重ねは、人口減少や少子高齢化という「難題」解決の一歩になると信じています。

―公民連携を、今後のまちづくりにどう活かしていきますか。

 当市は、世界遺産や日本遺産をはじめとした歴史資産が豊富で、府内有数のぶどうやいちじくの産地でもあります。こうした魅力を活かした観光によるまちづくりを推進するため、10月に民間との連携による「大阪はびきの観光局」を発足したところです。

 企業、団体、大学などとともに、「オール羽曳野」で住民から「住み続けたい」と思ってもらえるまちづくりを目指していきます。


学生の「斬新なアイデア」を、新たな施策に活かすまちへ

羽曳野市 政策企画室長 兼 政策推進課長  塚本 圭祐

羽曳野市「公民協創デスク」は令和4年7月、大阪大谷大学と連携協定を結び、学生とともに「地域振興」の取り組みを進めていく方針だ。同デスクの塚本氏によると、この連携協定によって、「多くの若者が集い、賑わいのあるまちづくりを目指せる」と期待を寄せる。取り組みの詳細について、同氏に聞いた。

羽曳野市
政策企画室長 兼 政策推進課長 
塚本 圭祐 つかもと けいすけ

地域が「学びの場」となり、「人材育成の場」にもなる

―大阪大谷大学と締結した連携協定の内容を教えてください。

 当市の施設や文化遺産を学生たちの実地研究や研修の場として活用してもらい、「地域振興」「まちづくり」「教育・人材育成」などにつなげるといった内容です。令和4年7月の締結で具体的な取り組みはこれからですが、たとえば、文学部歴史文化学科の学生には、当市にある世界遺産の百舌鳥・古市古墳群を研究フィールドとして活用してもらうことを考えています。そこで得られた成果についてSNSなどを使って広く発信してもらい、地域振興やまちづくりにつなげていければと期待しています。

―大学との連携に、どのような成果を期待していますか。

 まずは、実地研究や研修を通じて学生自身が地域とつながりを持ち、地域の魅力に気づいてもらいたいです。また、私たちが学生の「斬新なアイデア」に触れる機会をつくり、これまで手がけてこなかったような市の施策やプロモーションを考えるうえでのきっかけにしたいと思っています。

―たとえば、どういったことでしょう。

 駅周辺の活性化策を例にあげましょう。学生たちには、商店街そのものを「お洒落なカフェ」が似合う場所につくり変えたり、SNSを駆使した集客や情報発信を行ったりして、地域の良さを活かしつつ、新しい価値を創造するような柔軟で大胆なアイデアがあるかもしれません。そうしたアイデアは、私たち行政の感覚や発想では、なかなか浮かばないものです。私たちに不足している「若者目線」をもっと取り入れた施策を展開し、より多くの若者が集う賑わいのあるまちづくりを目指せると思います。

―今後の方針を教えてください。

 学生たちに、当市をフィールドとして積極的に活用するよう促すことで、地域が「学びの場」「人材育成の場」になっていきます。そして、地域で培った経験をもとに、学生が地域を活性化する好循環が生まれます。大学との連携は、まちづくりの可能性を大きく広げるものだと期待しています。


支援企業の視点

「デスク」と密に連携し合うことで、学生に多様な成長の場を提供できる

大阪大谷大学 学長 浅尾 広良
大阪大谷大学
学長
浅尾 広良 あさお ひろよし

―羽曳野市との取り組みに対して、どういった意義を感じていますか。

 大学教育に求められている成果の1つは、学生に「社会で求められる力」を身につけてもらうことです。その力とは、主体性や課題解決力のほか、チームワークなどがあげられ、自律的な学びを通じて初めて身につく力だと考えています。羽曳野市との連携協定は、まさに社会における実践の場によって自律的に学ぶ機会を学生に提供するもので、社会で活躍できる人材の育成につながります。

 それだけでなく、「地域における知の拠点」というべき大学が、自治体や地域の民間企業と連携した取り組みを行うことで、地域課題の解決に向けて大きな役割を果たせると考えています。

―「公民協創デスク」に、どのような期待をしていますか。

 本学ではこれまで、2つの自治体と今回同様の連携協定を締結していますが、さらにその取り組みを推進したいとの想いから、令和4年4月から外部機関との連携に向けた専門の窓口機能を設けています。羽曳野市の「公民協創デスク」と本学の窓口が密に連携し合うことで、多岐にわたる実践教育を通じ、学生にこれまでにない多様な成長の場を提供できると思います。

―公民連携に対する今後の取り組み方針を聞かせてください。

 本学のような地域に根差した大学の使命は、地域の未来を担う人材を育てることだと認識しています。自治体や地域企業との連携を今後強化し、地域創生の一翼を担える大学でありたいですね。

浅尾 広良 (あさお ひろよし) プロフィール
昭和34年、福島県生まれ。昭和57年、山形大学人文学部卒業。昭和62年、國學院大學大学院博士課程後期単位取得。大阪大谷大学文学部教授を経て、平成29年から現職。博士(文学)。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

若者とともに行政課題を解決する、新たな公民連携に期待

 羽曳野市は、令和3年1月に公民連携のワンストップ窓口となる「公民協創デスク」を設置したことで、職員の意識が変化したと手ごたえを感じています。具体的には、既存の枠組みにとらわれることなく、公民連携を前提にした新たな施策を考えられるようになったといいます。

 市は、大阪大谷大学との連携により、地域活性化に向けた「大胆な発想・視点」を学生から得られ、まちづくりの新たな可能性を見出しています。これまでどちらかといえば行政と「距離感」があった若者と公民連携の取り組みを進め、行政だけでは対応できない課題を解決しようとしている点に期待が持てます。