自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. 先進事例
  3. 「市民協働」のまちづくりにとって、公民連携のさらなる推進は不可欠
先進事例2022.01.04
連載「大阪発 公民連携のつくり方」第8回

「市民協働」のまちづくりにとって、公民連携のさらなる推進は不可欠

「市民協働」のまちづくりにとって、公民連携のさらなる推進は不可欠

大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第8回

「市民協働」のまちづくりにとって、公民連携のさらなる推進は不可欠

富田林市長 𠮷村 善美

※下記は自治体通信35号(Vol.35・2022年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能を持つ「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第8回目の今回は、令和元年10月に公民連携の専門窓口として「公民連携デスク」を設置した富田林市を取材。設置の経緯やデスクの設置によって得られた成果などについて、市長の𠮷村氏と同市担当者に話を聞いた。

[富田林市] ■人口:10万9,119人(令和3年10月31日現在) ■世帯数:5万1,685世帯(令和3年10月31日現在) ■予算規模:784億1,360万8,000円(令和3年度当初) ■面積:39.72km2 ■概要:大阪府の東南部に位置する。自然と歴史に恵まれ、市の北東平坦部は、南北に流れる石川を挟んで平野が広がり、古くから南河内地域の中心地として発展した。特に寺内町には、歴史的に貴重な町並みが残されている。
富田林市長
𠮷村 善美 よしむら よしみ

「小さな貢献」を多数生む、公民連携の仕組み

―令和元年10月に「富田林市公民連携デスク」を設置した経緯について聞かせてください。

 私は26歳から、市議・府議として行政に携わってきました。当時から「市民協働」を政治信条とし、令和元年5月の市長就任後は、市民の意見をより一層市政へ取り入れていこうと、「若者会議」や「外国人市民会議」など新たな市民協働の仕組みを設けました。市民協働においては、公民連携も非常に重要な要素であることから、企業・団体・教育機関との協働を推し進めることが必要です。そこで、大阪府公民戦略連携デスクの協力も得て、専門窓口として「富田林市公民連携デスク」を立ち上げたのです。

―専門窓口の設置後、どのような成果が得られましたか。

 令和3年10月末時点で、17社の企業と連携協定を結んでいます。じつは「富田林市公民連携デスク」は、原則として「市に財政的、人的な負担が生じない事業」を取り扱うこととしています。

 私は、予算を伴わない取り組みでも、その積み重ねによって、地域課題は解決できると考えています。すでに、「商業施設の空きスペースを、市の情報発信の場として提供します」といった内容で、企業のそれぞれの強みを活かした公民連携に関する提案を数多くいただいています。一方、企業側からも「地域貢献の取り組みを通じて、企業価値を高めることができる」といった言葉をいただいており、市民・企業・行政の3者がWin-Winとなる関係性を築くことができています。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 当市は昨年度、国から「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」の認定を受けたことで、今後さらに積極的にSDGsを推進していきます。「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念の実現に向けては、市民協働のまちづくりを進め、身近な地域課題を一つひとつ解決することが必要です。公民連携はその有力な手段であり、「富田林市公民連携デスク」はまさに、その推進エンジンになると期待しています。


多くの市民が利用する商業施設を、地域課題の解決拠点として活用

富田林市 市長公室 都市魅力課 課長(特命シティセールス担当) 渡邊 真

富田林市では、「富田林市公民連携デスク」の取り組みを通じて、市民協働のまちづくりを加速させる方針だ。ここでは、関西都市居住サービスと包括連携協定を締結し、地域のさまざまな課題を解決する取り組み内容について、同デスク担当の渡邉氏に詳しく聞いた。

富田林市
市長公室 都市魅力課 課長(特命シティセールス担当)
渡邊 真 わたなべ まこと

ショッピングセンターを核に、公民連携を推進

―関西都市居住サービスと締結した包括連携協定の内容を教えてください。

 同社が市の中心部で運営するショッピングセンター「エコール・ロゼ」(以下、SC)で、地域課題の解決に資するさまざまな公民連携の取り組みを行う内容です。当市が「富田林市公民連携デスク」を立ち上げた際、「ぜひ、当社のCSR実践の場としてSCを活用してほしい」と真っ先に申し出てくれました。早速、庁内各部署の意見を集約し、同社とともにSC内で連携して取り組める内容について協議を重ねました。

―具体的に、どのような取り組みが行われていますか。

 まず、災害対策として1,000台の車両を収容できるSCの大型駐車場を、大規模災害時における物資輸送車両の待機場所や支援組織の復旧活動拠点として活用させていただきます。さらに、同駐車場の一部を市の防災倉庫の用地として無償提供いただきました。次に、SC内に市の「情報発信の場」を常設しているほか、買い物のついでに市立図書館で借りた本が返却できるよう、「図書返却ボックス」の寄贈を受けSCのエントランスに設置しています。このほかにも連携メニューはたくさんあり、多くの市民が利用するSCでの課題解決メニューの展開は、市民サービスの向上に資する取り組みだと考えています。また、関西都市居住サービスにとっても、市と協働したCSRの実践によって、市民からさらに愛されるSCとして今後も継続的な発展が期待できます。

―公民連携に対する今後の方針を聞かせてください。

 「富田林市公民連携デスク」が所管する公民連携事業は、原則、予算措置を伴わないものですが、地域に横たわる課題を一つひとつ地道に解決する取り組みが、市民満足度の向上、さらには郷土愛の醸成につながると考えています。そうして、地域を愛する市民から、さらに地域を暮らしやすくしていくアイデアをいただける。そんな好循環が生まれるのが理想です。同社とのさまざまな取り組みは、まさに当市が重視する「市民協働のまちづくり」の実現を可能にするモデルだと考えています。


支援企業の視点

迅速かつ柔軟に調整してくれたから、多様な事業もスムーズに進められた

株式会社関西都市居住サービス 代表取締役社長 中瀬 弘実
株式会社関西都市居住サービス
代表取締役社長
中瀬 弘実 なかせ ひろみ

―富田林市との連携事業にどのような意義を感じていますか。

 「エコール・ロゼ」は、令和4年でオープンから34年を迎えます。長期にわたる運営が実現できているのは、地域のみなさまの支えがあってこそです。当社はこれまで、「施設を通じて豊かで潤いのあるコミュニティづくりに貢献する」という経営理念のもと、地域に愛される施設づくりを心がけてきました。今回の富田林市との包括連携協定の締結もその一環で、地域課題の解決につながる貢献を通じて、地域からさらに愛される商業施設となり、存在価値がより一層高まると考えています。

―実際に連携事業に取り組んでみた感想を聞かせてください。

 当社は、ほかの自治体とも公民連携の取り組みを進めています。そうしたなか、「エコール・ロゼ」での連携事業は、複数の所管課にまたがるものでしたが、富田林市では、窓口となる「富田林市公民連携デスク」が迅速かつ柔軟に各所管課との調整を行ってくれ、窓口機能の活用に力を入れていました。そのおかげで、事業をスムーズに進められましたね。

―今後、富田林市との公民連携をどのように発展させていきますか。

 富田林市とは引き続き、地域課題の解決に向けてどのような取り組みができるのか協議を重ね、新たな取り組みも積極的に行い、地域の発展のために貢献していきたいと考えています。今後も地域に愛され続けていき、50年、100年続く商業施設を目指します。

中瀬 弘実 (なかせ ひろみ) プロフィール
昭和31年、千葉県生まれ。独立行政法人都市再生機構監事退任後、令和元年、株式会社関西都市居住サービス代表取締役社長に就任。

大阪府公民戦略連携デスクの視点

地域に根差す企業とともに取り組む「課題解決」の推進策に注目

 富田林市には、大阪府公民戦略連携デスク直属のプロジェクト「OSAKA MEIKAN*1」の構成員としてご尽力いただいています。

 同市は、公民連携による「市民協働」のまちづくりを進めるなかで、国から「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」の選定を受けました。SDGsを推進する自治体にとって、参考になる取り組みだと注目しています。

 関西都市居住サービスと推進している今回の公民連携事業は、地域に根差した企業と手を携えて、地域課題を一つでも多く解決することを目指したものです。公と民の強みを融合させた取り組みが、住民の満足度向上につながるものだと考えています。

*1:※大阪府および府内市町村の「オール大阪」による公民連携プラットフォーム

電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します
自治体通信 事例ライブラリー