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公務員の「常識」を打破することで、地方創生をけん引する職員を育てる

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生駒市発「自治体3.0」のまちづくりを推進する原動力とは

公務員の「常識」を打破することで、地方創生をけん引する職員を育てる

生駒市長 小紫 雅史

※下記は自治体通信34号(Vol.34・2021年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


市民と行政による「協創」のまちづくりを意味する「自治体3.0」という独自の概念を用いて、まちづくりを進めている生駒市(奈良県)。この概念を提唱する市長の小紫氏は、「少子高齢化が顕著になるなか、『自治体3・0』のまちづくりを進めなければ、自治体は生き残れない」と指摘する。そこで重要になるのが、「職員の力であり、同時に職員の意識改革も欠かせない」と同氏は語る。理想のまちづくりに向けて、人口約12万人の地方中核都市が進める職員の意識改革とは。小紫氏に詳しく聞いた。

地域のコミュニティ拠点を、市内に100ヵ所つくる

―小紫さんがまちづくりを進めるうえで提唱している「自治体3.0」という考え方は、どのようなものですか。

 これは私の造語で、「市民力」を最大限に活かし、市民と行政がともに汗をかきながらまちづくりを進める自治体のあり方です。少子高齢化がさらに進み、財政状況がより一層厳しくなったとしても行政運営を持続可能なものとするには、市民一人ひとりの行政参加は不可欠です。いわば、「協創」のまちづくりを進めなければ、自治体は生き残れません。そうしたまちづくりの中核的な取り組みとして、当市では令和2年度から「100の複合型コミュニティづくり」という施策を推進しています。

―どのような取り組みでしょう。

 自治会や地域の事業者を中心とした、地域コミュニティ活性化に向けた独自の取り組みです。たとえば、集会所や自治会館内で住民主体のカフェを運営し、コミュニティの拠点とします。そこで介護予防体操を開き、高齢者の健康増進と孤立解消を図ります。さらに「子ども食堂」を開けば、多世代交流も生まれます。住民が集まれば、野菜や米などを販売する移動販売車も呼べ、地域での買い物の利便性も高められるでしょう。私はこういったコミュニティを市内に100ヵ所、誰もが歩いて行ける場所につくりたいと考えています。

 こうした「自治体3.0」のまちづくりの推進は、地域で実際に市民と対話を重ねて事業を進める職員の双肩にかかっています。ですから本市では、職員の「意識改革」を「行動変化」につなげられるよう注力しているのです。

「公務員の常識を変えよう」

―職員の「意識改革」が必要と考える理由はなんですか。

 「自治体3.0」のまちづくりでは、自ら施策を立案するだけでなく、「どうすれば市民の力を活かせるか」といった視点が求められます。そのために職員には、これまで特に重視されていなかったような多様な力が必要になります。

―それはたとえば、どのような力でしょう。

 ひとつには、地域の関係者と協働し、チームとして地域に価値を生み出すための「協創力」が必要です。また、市民が本当に求めていることに応えるための「課題設定力」や柔軟な「発想力」も必要でしょう。そしてなにより、失敗を恐れずに行動し、課題解決や新しい取り組みに挑戦する「始動力」も求められます。

 こういったさまざまな能力を持つことで、「自治体3.0」のまちづくりを担う職員になれると考えています。そのために私は職員に日々、「公務員の常識をどんどん変えていこう」と伝えています。

―そこで言う「公務員の常識」とはどのようなものですか。

 たとえば、「公務員は終身雇用で安定している」「公務員は法令業務をミスなくこなせばよい」ということです。こうした考えがあるうちは、新たな価値を生み出すチャレンジ精神が醸成されるはずもなく、職員はせっかくのポテンシャルを発揮できないでしょう。ただし、当市の職員をはじめ、多くの公務員は能力も高く、強い責任感を持って仕事をしています。そうしたみなさんなら、きっかけさえあれば意識が大きく変わり、「自治体3.0」のまちづくりを推進する力のある職員になれるはず。そのきっかけのひとつとして、当市では、「『プロ人材』の登用」や「副業の奨励」、「テレワークの積極的な活用」といった多様性のある働き方を促しています。

―それらの内容を具体的に教えてください。

 「プロ人材」は、2年前から登用を始めました。DXや採用・教育といった分野で、合計9人の高度な専門スキルを持つ人材が活躍しています。「副業の奨励」は5年目で、毎年15人ほどの職員がエントリーしています。「テレワーク」は、行政特有の厳しい守秘義務に対応できるデバイスがまだ十分に整備されていませんが、テレワーク勤務を認めることで、職員の満足度向上、多様な人材の確保を進めることができています。

「プロ人材」から刺激を受け、「副業」では人脈を広げる

―こうした取り組みは、どのように職員の力を高めるのでしょう。

 職員は、「プロ人材」とともに業務を手がけ、そこから刺激を受けて、多くの学びを得ています。同時に、「プロ人材」に地域の課題・魅力を伝えるうちに、地域への「愛や誇り」を再認識することにもつながっています。そうして地域をより良くしたいとスキルアップした結果、手がけられる業務範囲が広がり、新たな行政サービスを企画できるようになるでしょう。さらに、副業によって広がる人脈とスキルを活用すれば、複雑化する地域課題にも、市民や事業者の力を借りて多面的に対応できるようになるはずです。

―過去にない経験を積めると。

 そう思います。テレワークも、自宅で過ごす時間が増えることで、地域に目を向け、住民とのコミュニケーションを深める機会となり、さまざまな社会課題に気づくきっかけになるでしょう。そして、その解決策を見つけるために必要な、市民との信頼関係を構築できます。

 これら3つの取り組みは、まだ広く自治体で浸透しているものではありませんが、本市ではそれを率先して行い、私が先ほど述べた「協創力」や「始動力」といった力を職員に身につけてもらう。そうすれば、まちでやりたいことのある市民の力を活かし、ともにまちづくりを進め、持続可能な行政運営を担うことができるのです。

市民一人ひとりが主役のまち

―そういった職員とともに、生駒市をどのようなまちにしますか。

 当市のビジョンは、「自分らしく輝けるステージ・生駒」です。「大阪のベッドタウン」の当市ですが、魅力は大阪に近い利便性や自然の豊かさだけではありません。今後は、市民一人ひとりが主役となり、夢をかなえて輝く人生を送れるまちを目指します。それに向けて、私たち行政が掲げるミッションが、「このまちで暮らす価値を、ともにつくる」です。まさに市民や事業者、専門家などとの「協創」で、市民に「いつまでも住み続けたい」と思ってもらえるような地方創生のまちづくりを、職員とともにけん引していきます。

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小紫 雅史 (こむらさき まさし) プロフィール
昭和49年、兵庫県生まれ。平成9年、一橋大学法学部卒業後、環境庁(現:環境省)に入庁。平成23年に退職し、同年8月、全国公募により生駒市副市長に就任。平成27年4月、生駒市長に当選し、現在2期目。