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住民本位のデジタルサービスで、次の100年にも「選ばれる都市」に

沖縄県那覇市の取り組み①

デジタル行政の推進①

住民本位のデジタルサービスで、次の100年にも「選ばれる都市」に

那覇市長 城間 幹子
[提供] 富士ゼロックスシステムサービス株式会社

※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


今年5月に市制施行100周年の節目を迎える那覇市。市長の城間氏は、「選ばれ続けるまちづくりを目指す」と力強く語る。そのために「新たな行動」が必要だとし、なかでも、行政におけるデジタル化の推進は大きなカギになると言う。次の100年に向けたまちづくりビジョンに、行政のデジタル化はどう寄与するのか。同氏に聞いた。

那覇市データ
人口:32万171人(令和3年2月末現在) 世帯数:15万5,544世帯(令和3年2月末現在) 予算規模:2,428億2,798万9,000円(令和2年度当初) 面積:41.42km² 概要:沖縄県の政治・経済・文化の中心で、国際空港である那覇空港のほか、県外や周辺離島とを結ぶ那覇港があり、沖縄県の玄関口としての役割も担っている。市の中心部の国際通り、琉球王朝時代を物語る首里城公園が観光地として有名。
那覇市長
城間 幹子 しろま みきこ

温故「起」新の精神で、行政のデジタル化を加速

―市制施行100周年の節目を迎える那覇市は、今後どのようなまちづくりを目指しますか。

 訪れてみたい、住んでみたいと思われるような「選ばれ続けるまちづくり」を目指します。ありがたいことに、当市は、民間調査による都市の魅力度ランキングにおいて、全国でも上位入りを果たしています。この100年の間に先達が築き上げてくれた「都市としての求心力」の賜物ですが、「ヒト、モノ、カネ、情報」が集まり、都市として魅力を保ち続ける不断の努力を重ねていくことが肝要です。私は100周年の節目の年を、温故「起」新の精神で新たな行動を起こす年にしたいと考えています。

―温故「起」新とは、どのような意味でしょう。

 歴史に学び、そこから新しい知識を導く温故知新という言葉に、「新たな行動を起こして挑戦する」という想いを重ねました。行動を起こすことは、これまで予期しなかった新たな出会いや世界につながります。温故「起」新の「起」にあたる行動のひとつとして、行政のデジタル化を加速させたいと考えています。社会全体のデジタル化が加速するなか、この機会をしっかりとらえ、よりよい行政サービスの提供に努めます。この4月から「デジタル化推進室」を新設し、「第五次那覇市情報化推進計画」をもとに、全庁横断的にデジタルの優位性と利便性を実感できる施策を広げます。

―デジタル化によって、どういったことを実現させますか。

 住民本位で行政サービスの質をさらに高めたいのです。たとえば、「スマートフォンを活用した市民投稿システム」。これは「道路の損傷」といった困りごとを、住民が市に投稿しやすくするシステムですが、ここで実現されるのは、「住民からの意見を市政に活かす仕組み」です。こうした「住民との協働」が、暮らしやすいまちづくりの基盤になると考えています。システム導入で、住民からの意見をこれまで以上に幅広く聞けるようになれば、住民もより積極的に市政に意見を寄せてくれるようになる。そこから住民本位のサービスを次々と生み、さらに暮らしやすいまちへと進化させたいのです。

「書かずにすむ窓口」実現へ

―デジタル化の推進が「選ばれ続けるまちづくり」へのカギだと。

 デジタル技術は、私たちの生活や行政サービスの在り方を一変させるものと認識しています。今年1月に導入した「異動受付支援システム」(次ページに詳細)も、そのような認識のもと実現した取り組みです。このシステムで、住民は手で記入することなく申請書を作成でき、まさに画期的な「書かずにすむ窓口」が実現しました。住民のみなさんが長年困っていた「書く作業の負担」を、デジタル化で解決できたのです。さらにペーパーレス化を進めれば、職員負担の軽減につながり、住民との協働による取り組みや、地域の困っている方々と向き合う時間に費やせます。デジタル化はあくまで手段ということをつねに心に留め、「選ばれ続けるまちづくり」のツールとして積極的に活用し、優しく温かい行政運営を目指します。


―次の100年に向けた、まちづくりのビジョンを聞かせてください。

 平成30年3月に、住民のみなさんと共同作業で、次の100年を見すえた「第5次那覇市総合計画」をつくり上げました。そこに掲げたまちづくりの将来像「なはで暮らし、働き、育てよう! 笑顔広がる元気なまち NAHA ~みんなでつなごう市民力~」には、人の一生を支え、見守るふるさとをみんなでつくり上げようという、温かい想いが込められています。その想いをカタチにするため、まちづくりの担い手一人ひとりの絆をつなぎ、幅広く展開する施策の成果が、市全域に広がることを目指していきます。


「書かずにすむ窓口システム」で、住民の申請にかかる負担を大幅軽減

沖縄県那覇市の取り組み②

デジタル行政の推進②

「書かずにすむ窓口システム」で、住民の申請にかかる負担を大幅軽減

那覇市
ハイサイ市民課 管理グループ 主幹 阿波根 崇乃
ハイサイ市民課 管理グループ 主事 宮城 倫太郎

前ページでは、行政のデジタル化を強力に進めていく政策方針を、那覇市長の城間氏に語ってもらった。ここでは、ひとつの成果として今年1月から導入している「異動受付支援システム」について、ハイサイ市民課の担当者ふたりを取材。システム導入にいたるまでの経緯や、導入の効果などについて聞いた。

那覇市
ハイサイ市民課 管理グループ 主幹
阿波根 崇乃 あはごん たかの
那覇市
ハイサイ市民課 管理グループ 主事
宮城 倫太郎 みやぎ みちたろう

「非常に便利な窓口」でも、繰り返し記入が発生

―「異動受付支援システム」を導入するにいたった経緯を教えてください。

宮城 当市では、住民が転入・転居・転出などの手続きを行う際、住民異動の手続きだけでなく、国民健康保険や児童手当といった付帯事務の手続きも同時に行う「総合窓口方式」を採用しています。住民にとっては、複数の手続きが1ヵ所でまとめてできるため、「非常に便利な窓口」と好評です。

阿波根 一方で、特に転入の場合は付帯事務の手続きが多く発生するため、住民異動届以外にも、各種申請書へ手書きで記入する必要があり、「記入に手間がかかる」「手続きが煩雑だ」といった声が住民からあがっていたのも事実です。そこで、住民異動窓口における住民の手書き負担を軽減するシステムの導入を検討していました。

―どのように検討しましたか。

阿波根 手続きの煩雑さを感じる要因として、氏名、住所、性別、生年月日といった基本情報を、「何度も手書きで記入すること」があげられます。そこで、窓口で最初に作成することが必要な住民異動届について、電子的につくれないかをポイントに検討を進めていきました。というのも、住民異動届と付帯事務の申請書は様式が異なっていても、記載する内容は住民の基本情報であり、ほとんど同じです。そのため、まずは住民異動届を電子的に作成し、その情報を各申請書へデータとして反映させることができれば、「書かない住民異動窓口」を実現できると考えました。

宮城 そのようななか、富士ゼロックスシステムサービスから、「異動受付支援システム」の提案を受けたのです。同社は、「住民票の写し」といった各種証明書の取得がコンビニエンスストアで可能な「コンビニ交付システム」で導入実績のある会社です。

申請書への情報入力が自動化

―「異動受付支援システム」の詳細について教えてください。

宮城 たとえば転入の場合、これまで住んでいた自治体から発行される転出証明書を提出してもらいますが、その証明書に住民の基本情報が記載されているため、それをOCR(※)で読み取りデータ化して、住民異動届に反映させます。そして、その住民異動届のデータが、必要な付帯事務の申請書に転記されます。その結果、これまで申請書作成のために必要だった住民の記入負担を、大幅に削減できるのです。転居・転出の場合は、「コンビニ交付システム」から住民の基本情報を抽出して、住民異動届へ自動的に反映させる仕組みとなっています。

※OCR:Optical Character Recognitionの略。光学文字認識。紙に書かれている文字を認識し、デジタル化する技術のこと

阿波根 住民によっては、たとえば、転出証明書を発行してもらうときには新たな住所が決まっていないこともあるため、不足しているそれらの情報については、私たち職員が直接ヒアリングしながら、システム上で入力して住民異動届を作成しています。また、転居・転出の場合も、転居先の住所といった「コンビニ交付システム」にはない情報については、私たちが入力しています。

―職員の入力作業が、住民の記入負担を一部カバーすると。

宮城 確かにそうなのですが、住民が手で記入するよりも職員の入力作業のほうがスピーディですし、記入情報に不足がないかを職員がその場でチェックできるので、作成時間も短縮されます。なにより私たちは、住民の負担を極限まで軽減できるシステムにしようと考えていますから。

阿波根 すでに利用者からは、「書かなくてすむので大変助かる」という声がたくさん寄せられています。「デジタル技術を駆使し、住民本位で行政サービスの質を高める」という当市の方針を、まさに体現したシステムである点が評価できますね。


【取材協力】富士ゼロックスシステムサービス株式会社
お問い合わせ電話番号 03-6454-5616(平日9:00~18:00)
公式ホームページ https://www.fxss.co.jp
※富士ゼロックスシステムサービス株式会社は、令和3年4月1日付で富士フイルムシステムサービス株式会社に社名を変更。