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福島県

「複合災害」を乗り越え、目指していく姿とは

ご縁や信頼をエネルギーに変え、福島の未来を切り拓いていく

福島県知事 内堀 雅雄

※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


行方不明者や「関連死」を含め、2万人超の犠牲者を出した、東日本大震災から10年。なかでも福島県は、東京電力福島第一原子力発電所の事故でさらに大きな被害を受けた。この10年の間に、令和元年東日本台風や新型コロナウイルス感染症などさらなる「複合災害」に遭うなか、どのような復興を遂げてきたのか。知事の内堀氏に、被害から得た教訓や今後のビジョンなどを含めて聞いた。

挑戦してきた成果が、県内各地で花開いている

―東日本大震災の発生から10年が経過しました。現時点における、復興状況はいかがでしょう。

 いまもなお多くの方々が避難生活を続けておられるほか、令和元年東日本台風といった度重なる災害による甚大な被害や、新型コロナウイルス感染症への対応など、本県は三重・四重の困難を抱えています。

 一方で、各市町村や国の除染実施計画にもとづく面的除染は、帰還困難区域を除いて完了し、除染や時間の経過、風雨による自然要因などにより、県内の空間線量率は大幅に低減。避難指示の解除も進み、県土の約12%を占めていた避難指示区域などの面積は、約2.4%まで縮小しています。

 また、避難指示が解除された区域では、帰還された方、新たに転入された方向けの住宅や商業・医療・教育施設など、生活環境の整備が進んでいます。

―問題は残しつつも、確実に復興は進んでいると。

 そう言えます。昨年は、双葉町、大熊町、富岡町の帰還困難区域の一部地域で避難指示が解除されたほか、首都圏や仙台との交流人口の拡大につながるJR常磐線が全線で運行を再開しました。

 そして、日本酒を始めとした県産品が国内外で高い評価をいただいています。そのほか、福島市出身の作曲家、古関裕而さん、金子さん夫妻をモデルとしたNHK連続テレビ小説「エール」の放送や、「メードイン福島」の優れた技術を搭載した小惑星探査機「はやぶさ2」のミッション成功など、国内外から多くの注目を集めるとともに、これまで挑戦を続けてきた成果が県内各地で花開いてきているのです。

新型コロナのなかでも、復興・再生の歩みは止めない

―その一方で、復興に向けて抱えている課題はありますか。

 避難地域の復興・再生や被災者の生活再建を始め、廃炉・汚染水対策、風評と風化の問題。さらに、急激に進む人口減少への対応、令和元年東日本台風などの災害からの復旧など、本県はいまだ多くの課題を抱えています。特に避難地域については、地域ごとの復興の進度の違いによって生じる新たな課題や、復興の進展にともなって複雑化・多様化する課題に着実に対応していく必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の拡大は、県民生活や県内経済に深刻な影響をもたらしています。本県の復興・再生は、この状況下においても切れ目なく進めていく必要があるのです。

―どのように対応していくのでしょう。

 昨年6月の復興庁設置法や福島復興再生特別特措法の改正に続き、7月には第2期復興・創生期間の事業規模と財源が決定されるなど、今後の復興を支える仕組みとして重要な体制、制度、財源が確保されたところです。また、今年の4月からは、第2期復興・創生期間が始まります。震災・原子力災害からの復興・再生と福島ならではの地方創生の実現に向け、新たなステージにおいても全力で挑戦を続けていきます。

10年を振り返って得た、教訓を発信していく

―改めてこの10年を振り返り、福島県が得た教訓はありますか。

 平成23年3月11日、本県は地震、津波、原発事故に見舞われました。以降、令和元年東日本台風や新型コロナウイルス感染症もあり、複合災害に向き合ってきました。これらを振り返り、我々が得た教訓は3つあると考えています。

 1つ目は「備える」こと。発災時、特に苦労したのは、通信網が機能しなかったことです。固定電話や携帯電話が使えないなかで、災害対応は困難な状況でした。さらに、オフサイトセンターも停電しました。そもそも、原発事故の災害対応拠点ですから、停電してはいけない。こうした経験を踏まえ、いまはオフサイトセンターの通信網が拡充・重層化され、安定的に通信ができるようになりました。また、なにかあった場合、各市町村役場からの連絡を待つのではなく、県職員が衛星携帯電話をもち、プッシュ型支援で連絡員として駆けつける体制にしています。

―2つ目はなんですか。

 災害を「自分事としてとらえる」ことです。たとえば学校で、子どもたちが頭巾をかぶって、地震の訓練をした場合、それを他人事ではなく、どれだけ我が事として真剣に取り組めるか。この積み重ねが、とても大きな差になります。その一助となるよう、一昨年の東日本台風を契機に、『ふくしまマイ避難ノート』をつくりました。

 たとえば水害が起きたとき、どういう防災グッズをそろえて、どこに家族で避難するのか。新型コロナウイルス感染症も含め、具体的な対応策を図やイラストなどを交えてわかりやすく記載しています。これを県民に配布し、普段から自分事として備えるようにお願いしています。

―3つ目を教えてください。

 「伝える」ことです。昨年の9月、「東日本大震災・原子力災害伝承館」を双葉町につくりました。震災がどういうもので、どのような苦労があったのか、そして復興の歩みをどう進めているのかということをわかりやすく説明する場を提供しています。

 この伝承館のポイントは、「語り部」です。実際に震災を体験した住民の方に語り部になっていただき、訪れた人に当時の実体験を、ときには自分の感情を交えて語っていただく。そういった生の声を聞くと、やはり心に残りますよね。これを通じて、できるだけ当時のことを広く伝え、いざというときに一人ひとりが最善の対応ができるよう、福島県から発信していくのも重要だと考えています。


私たちは、未来を変えることができる

―復興を含めた、今後の行政ビジョンを教えてください。

 「私たちに変えられることが二つある。一つは自分自身。もう一つは未来だ。」。これは、本県が生んだ世界的医学者、野口英世博士の言葉です。私たちは、未来を変えることができます。次世代が誇りに思える未来を創るためにも、知恵と工夫を凝らしつつ、挑戦を続けていかなければなりません。

 喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症を始め、震災・原発事故からの復興・再生や人口減少・少子高齢化の克服など、課題は山積みですが、これまで本県に心を寄せる多くのみなさんと紡いできたご縁や信頼を、前に進むためのエネルギーに変えながら、全力で福島の未来を切り拓いていきます。

 また、今年策定する新たな総合計画においても、復興・再生と地方創生を着実に前に進め、「ウィズコロナ」の状況下においても、県民のみなさん一人ひとりが豊かさや幸せを実感できる福島の将来の姿を描いていきます。


内堀 雅雄 (うちぼり まさお) プロフィール
昭和39年、長野県生まれ。昭和61年に東京大学経済学部を卒業し、自治省(現:総務省)に入省。総務省自治財政局地方債課理事官、福島県生活環境部次長、福島県生活環境部長、福島県企画調整部長を経て、平成18年、福島県副知事に就任。平成26年に福島県知事に就任し、現在は2期目。
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