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宮崎県

口蹄疫を乗り越えた経験を活かした危機管理対策

感染防止を徹底しながら経済の復興を図る「宮崎モデル」の実現へ

宮崎県知事 河野 俊嗣

※下記は自治体通信 Vol.26(2020年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


再び感染が拡大している、新型コロナウイルス。その見えないウイルスから住民を守るため、医療従事者はもちろん、数多くの自治体職員が危機管理対策に奔走している。そうしたなか、宮崎県では、これまでさまざまな危機事象を乗り越えてきた経験を活かし、感染防止対策を行おうとしている。知事の河野氏に、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応と、これからの取り組みについて聞いた。

(インタビューは7月20日に行い、その後、加筆・修正しました)

県外から来る人を止めるため、休業要請を実行

―緊急事態宣言後に取り組まれた感染防止対策を教えてください。

 宮崎県においても、遊技施設や接待をともなう飲食店に対し、大型連休前に休業要請を行いました。ただ、都市部とくらべると、その意味合いは異なります。

 都市部では、拡大した感染を抑制するため休業要請が行われました。一方、宮崎県では、感染は抑えられていたものの、県外からの人の流れを止める目的が主たるもの。九州の場合、福岡県が最初の緊急事態宣言の対象エリアで、そこで休業要請が行われると、休業要請がなされていない隣県へ人の流れが生じる懸念がありました。大型連休を前に、そのような人の動きを防ぐため、福岡の隣県、さらにはその隣県へと、休業要請の動きが拡大していったのです。

―7月以降、全国で感染が再拡大していますが、どんな感染防止対策に取り組んでいるのでしょう。

 宮崎県でも7月下旬から感染者が急増し、県内で初のクラスターが確認されました。「事実上の第2波」として強い危機感をもち、7月26日に県独自の「感染拡大緊急警報」を発令。さらに徹底的な封じ込めが不可欠との想いから、8月1日から16日までの間、県内全域の接待をともなう飲食店に対する休業要請、およびそのほかの飲食店への営業時間短縮要請を決断しました。この2回目の休業要請などは、まさに県内全域への感染拡大を防止するためのもの。市町村と協力金などを折半し、ガイドライン遵守の取り組みなど連携して実施しています。

 県民のみなさまの理解と協力により、徐々に感染は落ち着きつつありますが、いまだ予断を許さない状況で、緊張感をもって感染予防に取り組んでいるところです。

感染拡大防止の重要性をすでに経験

―対策として、活かすことのできる経験や教訓はありますか。

 口蹄疫の経験が、活かせると考えています。宮崎県では、平成22年に口蹄疫が発生。29万7,808頭もの家畜を、処分せざるをえなくなりました。当時は、宮崎県から口蹄疫が外に出ることはありませんでしたが、畜産農家のみならず、地域経済や県民生活に多大な影響が生じました。現在でも、県庁や宮崎空港、ホテル、ゴルフ場といった施設の入り口には防疫マットが敷かれています。そうした経験から、県民は、目に見えないウイルスとの戦いの難しさや、「感染症の拡大が地域経済や県民生活にどれだけ深刻な影響をおよぼすか」をよく理解し、一人ひとりの感染予防に対する意識は他県より強いと感じています。

―こうした状況下において、首長はトップとしてどのようなリーダーシップを執るべきでしょう。

 まずは、リーダーとして明確なビジョンと戦略をもって、県民にわかりやすくメッセージを伝えていくことが大切だと考えています。そして、人を批判したり他人のせいにしたりしないことですね。

 国を批判する首長の発言がメディアでクローズアップされがちですが、国と地方がお互いを批判しあうのではなく、問題点を指摘しあうなど建設的な議論をすべきです。実際にWeb会議を通じて、国と全国知事会との連携のもと、頻繁に協議を行い、さまざまな対策が進んでいます。

―ほかにありますか。

 誠実であることです。今回の「コロナショック」で注目された、カミュの『ペスト』という小説のなかで、リウーという医師が「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さである」と語っていますが、まさにそのとおりだと思います。住民の不安や不満の矢面に立たされる首長の立場は辛いものがありますが、その矛先がほかに向かうよう仕向けたり、受け狙いに走ったりすることは慎むべき。たとえ批判の声が上がろうとも、地道な取り組みであろうとも、本当に宮崎県にとって必要なことを冷静に判断し、腹を決めて自分なりのぶれない方針を立て、それをきちんと県民に伝えていく。そうした姿勢が重要だと思います。

「地産地消」による応援消費を推奨

―今後は感染拡大に注意しながら地域経済を回していく必要があります。宮崎県はどのような取り組みを行っていくのでしょう。

 当初から呼びかけているのは「地産地消」による応援消費です。インバウンドを含め、県外から多くのお客さまが期待できないなか、県をあげて地元食材を消費して応援しようと取り組んでいます。特に宮崎県は食料供給県で、農業産出額は全国5位ですから。

 また、ダメージを受けている地域の飲食店、商店街について、感染防止を徹底しながらどんどん利用しようと呼びかけています。全市町村を回って私と市町村長が街中で飲食しながら懇談する取り組みを行いましたが、そのことにより自治体職員が街に出やすくなり、県民の利用をうながすことにもつながります。都市部とくらべると、自治体職員の存在感は大きいですし、率先垂範により経済効果を生んでいきたいと考えています。

日常生活のなかに、感染防止策を組み込んでいく

―今後の新型コロナウイルス感染症への対策方針を教えてください。

 3密の回避など「新しい生活様式」を実践し、クラスターの発生を防ぐといった、リスクを避ける行動を徹底することが重要だと考えています。これを私たちの暮らしの、言わば「標準装備」として、日常生活のなかに組み込んでいきたいと思います。

 危機管理に関して言えば、宮崎県は口蹄疫にとどまりません。私は平成17年に総務省から出向で宮崎県に来たのですが、その年の台風14号は、死者13人、被害総額1,300億円超の大災害となりました。また、私が知事に就任した当日に鳥インフルエンザが発生し、その5日後に新燃岳が約300年ぶりに噴火するなど、数々の危機事象に見舞われてきました。そのため、私自身、「常在危機」を合言葉に、防災庁舎の建設や関係機関との連携強化など、危機管理対策を強く意識して取り組んできました。


―そうした数々の危機管理対策の経験が、今回にも活かせる、と。

 そうですね。特に、宮崎県には、口蹄疫から復興・再生を果たすなかで培われた経験があります。いち早く日常生活に感染防止対策を組み込みながら、早期の経済の回復につなげる「宮崎モデル」の実現を、これからも呼びかけていきたいと考えています。


河野 俊嗣 (こうの しゅんじ) プロフィール
昭和39年、広島県生まれ。昭和63年に東京大学法学部を卒業し、自治省(現:総務省)に入省。宮城県総務部地方課、財政課を経て、春日井市企画調整部長、埼玉県総務部財政課長、総務省自治税務局企画課税務企画官、宮崎県総務部長などを担当。平成19年、宮崎県副知事に就任。平成23年、宮崎県知事に就任し、現在は3期目。
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