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先進事例2016.09.19

災害が少ないから防災無線スピーカー整備を実施【自治体(長崎県大村市)の取組事例】

災害が少ないから防災無線スピーカー整備を実施【自治体(長崎県大村市)の取組事例】

長崎県大村市 の取り組み

防災無線スピーカーの整備

災害が少ないから防災無線スピーカー整備を実施【自治体(長崎県大村市)の取組事例】

市長公室 危機管理課 課長補佐 鈴田 正隆

昔から大きな災害が少ないといわれる大村市(長崎県)。にもかかわらず、平成28年4月、防災行政無線用として、市内58ヵ所に最新鋭の高性能スピーカーを含めた拡声子局を設置。災害時における住民への情報伝達網を整備した。なぜそこまで力を入れているのか、市の担当者に聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.6(2016年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

長崎県大村市データ

人口: 9万3,180人(平成28年8月1日現在)世帯数: 3万7,210世帯(平成28年8月1日現在)予算規模: 1,448億2,090万6,000円(平成28年度当初)面積: 126.62km²概要: 大村湾の東岸に位置し、山がちな長崎県にあって比較的、平野部が多い。国内初のキリシタン大名といわれる戦国時代の大村純忠をはじめ、大村氏が明治維新まで治めてきた。オペラで有名な「マダム・バタフライ」のヒロイン、蝶々夫人はこの地の出身という設定。昭和50年に世界初とされる海上空港が完成、交通アクセスの便を活かしたハイテク産業の誘致・育成が進んでいる。

遠くまでクリアに音が届き設置個所が少なくてすむ

―災害時の住民への情報伝達について、市ではどんな課題を抱えていたのでしょう。

 すばやく、広域にわたって警報を出すシステムがなかったことです。非常時には、消防サイレンを鳴らし、市や消防団の広報車で住民に知らせる体制でした。
 とはいえ、近年はゲリラ豪雨や大規模土砂災害、直下型地震といった過去に経験のない災害への不安が高まっています。万が一、そうした災害が起きたとき、既存の体制で全住民へ情報が行きわたるのか、万全とは言えない。そこで、新たに防災行政無線を整備することにしたのです。

―住民に「聞こえる」情報伝達網が必要だったわけですね。

 はい。そのため、遠くまで音がクリアに届く高性能スピーカーを採用しました。
 それに、防災行政無線で一般的に使われるトランペット型のスピーカーに比べ、ひとつのスピーカーからの音が届く範囲が広いため、市内全域をカバーするのに設置個所が少なくてすむというメリットもあります。設置個所が少なければ、イニシャルコストもランニングコストも低減できます。
 導入にあたっては、3社のスピーカーを比較検討。実際に音を出してもらい、聞き比べました。その結果、いちばんクリアな音質だった丸紅情報システムズの「エルラド」を採用しました。
 ほかに、サポート体制が整っており故障があってもすぐに対応してもらえることや、重量がほかのメーカーの同等製品より軽く、トランペット型と同様に狭いスペースでの設置が可能であることも採用の決め手でした。

設置2週間後に熊本地震早くも威力を発揮した

―設置個所数を教えてください。

 スピーカーを設置した場所は市内58ヵ所でした。その内、43ヵ所に「エルラド」を導入しました。一般的なトランペット型スピーカーのみを採用した場合、「230ヵ所程度必要」と試算していたので、「エルラド」を中心に検討し、4分の1近くに減らせたわけです。

―スピーカーはどんな場面で威力を発揮するのでしょう。

 運用開始して2週間後に熊本地震が発生。Jアラートによって緊急地震速報がスピーカーから鳴りました。はからずも、すぐに活躍することになったわけです。住民から「ちゃんと鳴るんだな。安心した」という声があがりました。
 天災だけでなく、火事の場合にも活用します。当市は隣の諫早市、その南にある雲仙市と広域消防組織を共有していて、その本部は諫早市にあります。119番で火事の知らせがあると、消防本部から火災情報が発令されます。
 同時に、防災行政無線のスピーカーからもサイレンと音声が流れて、消防団の出動を指令。住民には近くで火事があった場合、すぐに情報が伝わり、消防団のすばやい招集にもつながります。

―防災行政無線については「屋内や山間部に無線が届かない」という課題を抱えている自治体も多いです。

 当市では、無線の周波数として、防災行政無線で一般的な60MHzではなく、280MHzの周波数帯を使った情報配信システムを採用しました。これは人の肉声では伝えられませんが、パソコンで入力したテキストファイルを無線で発信し、スピーカーの受信機で音声に変換して、情報を放送します。この周波数帯は出力が強く、浸透性に優れていて、山間部はもちろん、屋内にも届きやすい電波です。

戸別受信装置を無料配布し「屋内」「屋外」両方をカバー

―今後、どのように災害時の情報伝達網を拡充していきますか。

 平成28年11月から、市内の3万9000世帯に戸別受信装置を無料配布する予定です。特に暴風雨時には、住民は外にいるより建物の中にいるほうが多いですし、当初から「屋外」の住民と「屋内」の住民に確実に情報を伝えて初めて防災行政無線が完成すると考えていたからです。

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