
※下記は自治体通信 Vol.75(2026年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
福岡県の職員や副知事として40年以上のキャリアを歩み、令和3年に同県知事に就任した服部氏。混迷を極めたコロナ禍という未曾有の非常事態の逆風のなかで、独自の医療提供体制「福岡方式」を構築するなど、収束前後を通じて着実に県政の成果を積み上げてきた。令和7年4月に2期目の任期に入り、総合計画の最終年度を迎えた現在、いかなるビジョンを掲げ、福岡県のさらなる飛躍を導いていくのか。同氏に詳しく聞いた。

コロナ対策に奔走した後、未来を見据えた事業へ舵
―令和7年4月、知事2期目に突入しました。まずは1期目をどのように振り返っていますか。
前知事が病気療養のため退任したことに加え、コロナ禍が続く「非常事態」のなかでの就任でした。そのため1期目前半の2年間は、県民の命と生業を守る対策に奔走しました。宿泊療養施設や病床を確保する一方、血中酸素飽和度による科学的な入院判断基準を設ける「福岡方式」を確立し、医療逼迫の回避に全力を注ぎました。同時に、県が店舗の感染防止対策を確認したことを表す「感染防止認証マーク制度」の導入や、高プレミアム率の商品券の発行など、経済を守る施策も矢継ぎ早に打ち出しました。これらは医療従事者や事業者、そして県民のみなさんの献身的な協力があったからこそ実現できたものであり、心から感謝しています。コロナの毒性が低くなってきた1期目後半からは、県民へ「前を向こう」と呼びかけ、未来を見据えた事業へと本格的に舵を切りました。
―どのような方針へと舵を切ったのでしょうか。
社会の常識が一変し、既存の仕組みが通用しない今こそ、福岡県の礎を築く政策を進めていかなければならないと考え、新たな未来を創る主体である「人」への投資を最優先に打ち出しました。まず教育面では、地域格差なく充実した学びを届けるため、県立高校の1人1台のタブレット端末配備を実現し、私立学校へも助成を行いました。産業面では、深刻な人材不足を解消すべく「福岡半導体リスキリングセンター」を設立。想定を大幅に超える約1万6,000人が受講し、いまや41の都道府県から受講者が集まる半導体人材育成の拠点となっています。土地やインフラがあっても、人がいなければ産業は成り立ちません。優れた人材を輩出できる地域であることが、あらゆる産業が発展するための必須条件だと考えています。

職員が壁を「はみ出して」、仕事ができる組織改革
―県政運営ではどのような視点による判断を大切にしていますか。
すべての施策において、「県民ど真ん中」という視点を忘れないことを心がけています。私は県庁での40年以上のキャリアのなかで、農林や土木、福祉などの現場を歩き、県民のみなさんと直接向き合ってきました。現場で苦労する方々と対話し、直接いただいたご指摘こそが私の財産です。そうした経験を活かし、行政の都合を優先して言い訳を探すのではなく、県民のみなさんがなにを求めているのか、しっかりとしたエビデンスに基づき施策を考えていく。そのため、知事として決断を下す際は、つねに行政サービスの受け手である県民の視点に立って物事を360度あらゆる角度から見渡し、一人ひとりの豊かな人生につながるかを考え抜きます。行政が担う分野は多岐にわたりますが、どのような分野であっても県民をど真ん中に置く。それが、私の目指す県政運営の揺るぎない基本です。
―令和8年4月には、10年ぶりに本庁組織の再編が行われました。その狙いはなんでしょう。
すばらしい能力をもった県庁職員たちがそれぞれの力を最大限に発揮させ、よりポジティブでのびのびと活躍できる組織にしたいと考えました。現在の複雑化した社会課題に対して、県民のみなさんとしっかり向き合い解決していくには、従来の縦割り組織では限界があります。組織の壁を打ち破り、職員が意図的に「はみ出して」仕事ができる環境を整えることで、横串の通った、より県民に寄り添える行政組織を目指しました。
―令和8年度は福岡県総合計画の最終年度です。特に注力していきたいポイントを教えてください。
令和8年度の予算編成において、4つの柱を立てました。1つ目は「人を育て、すべての人の活躍を応援する」です。新設した「人材育成・活躍推進部」を核に、すべての人が活躍できるよう、それぞれのチャレンジを全力で応援します。全県立高校の体育館へのエアコン設置を令和10年度までに完了させるほか、タブレット端末を活用して他校の優れた講義をオンデマンドで視聴できる体制を整え、地域を問わず生徒が質の高い教育を受けられる環境を整備します。
2つ目は「産業を育て、県経済を強くする」。県経済の原動力となる中小企業の「稼ぐ力」を支えます。半導体、自動車、水素の3分野で経済と環境の好循環を生み出す「グリーン成長プロジェクト」の推進に加え、スタートアップの育成を図ります。本県の基幹産業である農業の大規模化やスマート化も推進し、若者が夢をもてる、稼げる農業をつくります。
3つ目の柱は、「人を惹きつける元気なまちをつくる」です。「福岡都市圏への一極集中」の是正に挑み、飯塚・嘉麻・桂川を一つの「極」として活性化させるなど、県民が住み慣れた地域で、自分らしく働き生活できる仕組みを創出していきます。同時に、人々が心豊かに暮らせるよう、「一人一花運動」を推進し、花に彩られた美しいまちづくりを目指します。
―4つ目の柱はなんですか。
「健全な環境と、安全・安心なくらしを守る」です。頻発する大雨災害への防災・減災対策を強化します。河川改修に加え、あらゆる関係者が協働して水害を食い止める「流域治水」を広げます。また、人間、動物、環境の健康を一つにとらえる「ワンヘルス」の実践は、単なる感染症対策にとどまりません。コロナ禍では多くの人命が失われ、地域経済も2兆円もの損失を被りました。このようなことを二度と繰り返さないため、「未来への投資」としてパンデミックに強い社会をつくります。私たち一人ひとりが日常のなかで「自分事」として取り組める文化にしていきたいと考えています。
九州と日本の発展を、リードする福岡県へ
―そうした施策を推進する先に、どういった県政ビジョンを描いていますか。
県民の命、健康、生活を守ることを第一に、愛する福岡県をより豊かにしていくことが私の使命です。そのためには、性別、年齢、国籍、障がいの有無にかかわらず、誰もが自分らしく輝き、活躍できる社会を実現しなければなりません。県民のみなさんのあらゆるチャレンジを全力で応援し、誰もが笑顔で安心して暮らせる福岡県を創り上げていきます。福岡県がその底力を存分に発揮し、九州、そして日本全体の発展をリードしていく存在になれるよう、これからも「県民ど真ん中」の姿勢で突き進んでいきます。


.png)
.png)

