《「住民からの感謝状」20通目》丁寧に誘導してくれたので、安心してワクチン接種ができました

※下記は自治体通信 Vol.69(2025年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。

―感謝の言葉を受け取った経緯を教えてください。
私はおもに、保健指導係として、予防接種や健康診断の運営を担当しています。感謝の手紙をいただいたのは、新型コロナワクチンの高齢者向け集団接種を行っていた時期です。当時、接種会場には1日最大300人が訪れていました。そのなかのひとりである女性から所属課宛に届いた手紙には、便箋1枚にぎっしりと感謝の言葉がつづられていたのです。そこには「接種会場にはたくさんの人がいて、感染が不安でした。でも、来場者が適度な間隔を保って整然と進むように、職員の方々が丁寧に対応してくれていたのです。その様子を見て、安心して接種を受けることができました」と書かれていました。それを読み、これまでの苦労が報われたように感じ、胸が熱くなったのを覚えています。
―感謝の言葉を伝えられたのはなぜだと思いますか。
来場者一人ひとりに合わせてきめ細かく対応したからだと思います。たとえば、車いすや歩行器を必要とする人に声かけをして付き添ったり、次にどこへ移動すればいいか迷う人がいれば、すぐに駆け寄って誘導しました。職員がこうした個別対応に注力できたのは、順路を一方通行にしたり、わかりやすい案内板を掲げたりしたからです。その結果、進路を外れた人に職員がすぐに気づけるようになりました。こうした工夫は、当初からできていたわけではありません。毎日、業務終了後に遅くまで運営について話し合い、改善を重ねた結果です。
―今回の経験から、どのような気づきがありましたか。
住民の一人ひとりの状況を思いやる大切さを改めて学びました。その学びを活かし、たとえば「予防接種の予診票を紛失しても、自宅で再発行の申請ができる方法」を導入しました。これまでは再発行のために役場への来所が必要でしたが、小さな子どもを抱える共働き世帯にとって、それは大きな負担です。私は、どんなに忙しくても、「予防接種を受けたい」という住民のニーズに応えたいと考え、既存のシステムにメールや申し込みフォームで申請できる機能を追加することを提案し、導入にいたりました。この経験は「誰のために仕事をするのか」を深く考えるきっかけとなりました。今後も、この学びを活かしていきたいです。

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