

※下記は自治体通信 中央省庁特別号(2026年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
平成30年以来、組織風土改革「財務省再生プロジェクト」を進めている財務省では、その一環として、職員の働きやすい環境づくりを掲げ、オフィス環境の改善を推進している。その先行事例の1つが、主計局法規課が令和5年に実施した「オフィス改革プロジェクト」である。この取り組みを主導した主計局給与共済課(前法規課)の吉川氏に、法規課でオフィス改革が進められた経緯や具体的な内容、その成果について聞いた。

先進的な海外のオフィスに、日本の行政との違いを痛感
―オフィス改革プロジェクトの発足経緯を教えてください。
法規課のオフィス環境をめぐっては課内で当時、2つの問題意識がありました。1つは、単純に室内が書類などで雑然として動線が狭く、職員が窮屈に仕事をしていたことです。もう1つは、窓際に単独で配置されてきた上席(課長補佐席)に出向く心理的ハードルが高かったことです。これによって相談がしにくい状況が生まれれば、組織としての意思決定の迅速さにも影響をおよぼしかねません。ただし、こうした問題もそれまでは当たり前のことと受け止めていたのですが、その認識が決定的に変わる転機がありました。
―その転機とはなんですか。
私が令和2年に海外留学へ行った際に、大学とは別にシンガポールの政府系投資ファンドでインターンを経験した際のことです。そのオフィス環境は私にとってはとてもセンセーショナルなものでした。社員の働きやすさが第一に考えられており、働くシーンに合わせて多彩な空間が用意されるなど、多様な働き方が実践できるオフィス設計がなされていたのです。そうした環境で働くなかで、オフィス環境の重要性に気づかされると同時に、日本の行政のオフィスとの違いを痛烈に感じました。帰国後、法規課のなかで課全体をとりまとめる係へ異動することとなり、その際部下からの執務環境への不満の声を多く聞いたことで、オフィス改革プロジェクトを立ち上げようと決心しました。
―その後、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょう。
まずは省内選定に立候補したうえで7月にプレゼンを行い、省内2例目のオフィス改革として認められ、プロジェクトをスタートしました。職務上、省内でも特に書類が多く、雑然とした法規課でのオフィス改革は、好事例になるとの判断だったのではないかと思います。とはいえ、オフィス改革の知見がまったくなかったため、情報を得るためにコクヨの霞が関ライブオフィスをはじめ、他省庁や民間オフィスを見学させてもらい、最新のオフィス改革の事例やヒントを数多く学びました。そこでの最大の収穫は、「ABW*」の発想を学べたことで、それはその後のオフィス改革の指針になりました。
*ABW : Activity Based Workingの略。業務内容や気分に合わせて、時間と場所を自由に選択する働き方のこと
「あの法規課が」との驚きが
―実際に、どのような施策を実践したのでしょう。
ライブオフィスで得た知見をもとに課内で意見を募ってレイアウトをつくり上げていきました。そこでは、「打ち合わせスペース」や「個人用ブース」、気軽に打ち合わせができる「立ちミーティングスペース」などを新たに導入し、さまざまなケースやニーズに応えられるようにしました。また、当初から問題意識があった上席の配置は、係長、係員2名と合わせて4席を1つの島とし、さらに2つの島を一体とすることで、隣の係との連携も図れるレイアウトを導入しました。こうした施策と同時に、書類の電子化も進めました。課内の書籍は省内共有の図書室へ移管し、執務に必要な書類は電子化するなど、徹底した書類削減を進め、レイアウト変更の余地をつくりました。オフィス改革後のアンケートでは、「コミュニケーションがとりやすくなった」「部屋が明るくなり、仕事のモチベーションが上がった」などの声が寄せられています。
―オフィス改革を成功に導いた要因はなんだったのでしょう。
途中、一部の課員から「そもそも、なぜオフィス改革が必要なのか」という疑問が寄せられた場面もありました。その際は、ABWによる「課内の有機的な連携」という目標を掲げて、オフィス改革を単なるレイアウト変更に終わらせず、働き方そのものを変え生産性向上を目指すことを課内全体へ説明しました。こうした丁寧な合意形成をしたことが重要なポイントだったと思っています。
現在も、他部署からの見学が相次いでいますが、一様に「あの法規課が」と驚きをもって受け止められているようです。オフィスや働き方の改革は楽しむことが大事だと思っています。こういった私の経験や思いを少しでも省内外に発信し、行政のオフィスや働き方が一番だといわれることが私の夢です。

ここまで紹介した財務省主計局法規課におけるオフィス改革を、専門事業者の立場から支援したのがコクヨである。同社はこれまで、多くの中央省庁におけるオフィス改革の支援実績を重ねている。ここでは、同社TCM本部で中央省庁を専門に担当する岡﨑氏と小川氏に、中央省庁におけるオフィス運用の課題や、オフィス改革の要諦などを聞いた。


独自概念に基づくサーベイで、優先課題を見える化
―オフィス運用をめぐり、中央省庁が抱える課題はなんでしょう。
小川 まずは、オフィスが狭隘であることです。そのうえ、デスクなどの家具にも可変性がないため、人数の増加に伴いレイアウトがどんどん非効率になり、より一層狭隘さを感じてしまいます。そのことは、働き方の変化にオフィスが追従できていないという、もう1つの課題ともつながっています。たとえば、各省庁においてペーパーレスの働き方がめざされていますが、依然として書棚があるため、書類削減のモチベーションが上がらないといった例がよく見られます。こうしたオフィス環境では、人材採用の際にもよくない印象を与え、優秀な人材を確保することがますます難しくなってしまいます。
そこで当社が力を入れているのが、今回の財務省主計局法規課で行ったような、ABWの発想に基づくオフィス改革への支援です。

―具体的に、どのような支援を行っているのですか。
小川 先進的な什器の紹介はもとより、ABWの発想を体現した霞が関のライブオフィスの見学や先進事例の紹介など、さまざまな情報提供を行っています。さらに、オフィスで働く行動を7つに分類した当社独自の概念「7アクティビティ」(下図参照)に基づくサーベイを提供し、「エリア機能」ではなく「アクティビティ」という切り口でオフィスへのニーズを割り出しています。現状の執務空間に対する「重要度」と「満足度」を測定し、その差分を分析することで、課題の優先度を定量的に明確化できる点が、このサーベイの特徴の1つです。
岡﨑 オフィスリニューアルでは、「個人ブース」や「カフェスペース」などエリア機能を基点に検討してしまいがちです。しかしその場合、実際の行動を考慮していないため、「整備はしたが使われない」ケースも少なくありません。各職場における職員の行動に基づき、「その空間がどのように使われるか」を見据え、さらに将来の変化にも柔軟に対応できる実効性のあるオフィス設計・什器提案を行えるのが、当社の強みです。

働き方改革とオフィス改革、両面から支援
―中央省庁に対するこれまでの支援実績を教えてください。
小川 数多くの省庁においてオフィス改革のご支援をしていますが、財務省大臣官房総合政策課、文部科学省科学技術・学術政策局、厚生労働省職業安定局総務課などの例が代表的です。それらの事例をまとめるかたちで、令和7年3月には、内閣官房内閣人事局の委託事業として「オフィス改革ガイドブック」を作成し、中央省庁におけるオフィス改革の実施プロセスやポイントなどを紹介しています。
―オフィス改革を推進する中央省庁にメッセージをお願いします。
岡﨑 当社では、行政型ABWオフィスを実現する際のポイントは、将来の働き方の変化に追従できる余白のあるレイアウトと、多様な用途に使える自由度・機能性の高い空間設計だと考えます。
それらを実現する柔軟性ある什器の提案のほか、ライブオフィスの見学や先進的なグッドナレッジの共有を通じて、働き方改革とそれを支えるオフィス改革の両面から支援できるのが当社の強みです。全国に広がる当社の営業ネットワークを背景に、国全体の働き方改革を先導する中央省庁や出先機関のオフィス改革を後押ししていきます。

| 創業 | 明治38年10月 |
|---|---|
| 資本金 | 158億円 |
| 売上高 | 3,382億円 (連結:令和6年12月期) |
| 従業員数 | 7,647人 (連結:令和6年12月末現在) |
| 事業内容 | 文房具の製造・仕入れ・販売、オフィス家具の製造・仕入れ・販売、空間デザイン・コンサルテーションなど |
| URL |




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