書籍や雑誌をはじめ、SNS、セミナー、オフサイトミーティングの主催など個人の立場で同じ職員向けに情報発信する自治体職員が増えています。本連載ではそうした「発信する自治体職員」のみなさんがどんな想いや狙いでそうした活動をしているのかなどをお伝えします。第1回は福岡市職員の今村寛さん。noteの記事本数は約300本を数えます。(肩書・所属は記事公開時)
“コロナ禍”がきっかけ
私がSNSを始めたのは15年くらい前。最初はYahoo!ブログ(注:2019年にサービス終了)でした。当時、東京財団の主催でアメリカのポートランドで2ヵ月間の派遣研修プログラムを受けるという贅沢な研修を受けた時に、ある先輩から「ブログを書いた方がいいよ」と勧められたのがきっかけでした。研修が終わって役所に戻ったら報告書を書くことになりますが、その先輩から「イチから書くのは大変だから日報代わりにブログをつけておけば後が楽だよ」というアドバイスをもらったんです。
ただ、日記代わり、自分のための備忘録ということではなく、研修を受けてこんなことを考えた、 これは福岡市役所ではどう当てはまるんだろうかといった観点をもち、役所の職員のみんなにもブログを一緒に読んでほしいな、ということを考えながらブログを書いていました。
研修が終了して福岡市役所に戻ってしばらくしたらFacebookブームが起き、私も始めました。しかし、しばらく続けていたら Facebookは長文を書くのには向かないなと感じて、それで長文をアーカイブするSNSとして2020年からnoteを始めました。
コロナ禍が起きたことも大きな動機になりました。私は2014年から全国の自治体に出向き自治体財政について職員向けに講座を行う「財政出前講座」(以下、講座)をやっていたんですが、コロナ禍のせいでそれが全然やれなくなってしまった。それで誰とも財政の話をしないのがちょっと寂しくなってしまい、自治体財政について長文の記事をnoteにたくさん書くようになりました。
■今村 寛(いまむら ひろし)さんのプロフィール
福岡地区水道企業団 総務部長。1991年福岡市役所入庁。2012年より福岡市職員有志による『「明日晴れるかな」福岡市のこれからを考えるオフサイトミーティング』を主宰し、約9年間で200回以上開催。職場や立場を離れた自由な対話の場づくりを進めている。
また、2012年から4年間務めた財政調整課長の経験を元に、地方自治体の財政運営について自治体職員や市民向けに語る「出張財政出前講座」を出講。「ビルド&スクラップ型財政の伝道師」として全国を飛び回る。好きなものは妻とハワイと美味しいもの。2022年より現職。財政担当者としての経験をもとに役所や公務員について情報発信する「自治体財政よもやま話」(note)を更新中。
難しい財政を誰でもわかるように
全体の記事本数は約300本(注:2024年12月時点)。記事本数が多い順にマガジンをご紹介すると、
- 自治体財政よもやま話
- 自治体経営の話(自治体財政よもやま話⑥)
- 対話っていいな
- 財政と対話(自治体財政よもやま話④)
- 働き方の話
- 財源のことも考えよう(自治体財政よもやま話⑤)
- 枠予算バンザイ(自治体財政よもやま話③)
- 査定の裏側教えます(自治体財政よもやま話②)
- つれづれなるままに
- コロナになりました
- 自治体予算のイロハ(自治体財政よもやま話①)
こういうラインアップになっています。
最初のうちはいろんなことを書いていたんですけど、気がついたら「自治体財政よもやま話」というマガジンにすごくコンテンツが集まり、今ではもうなんでも「自治体財政よもやま話」の括りで書いています。講座では話さないこと、講座で質問を受けた時にだけしか答えないような一歩踏み込んだ内容を書くようにしています。
また、財政がわからない人が読んでも「実はこうなっているんだ」ということがわかるように、専門的な話は極力避けて、平易に書くことを基本コンセプトにしています。たとえば「予算が余るのは悪いことか」という素朴な疑問に財政のプロが答えますみたいな感じで。
オススメ記事3+3
人気の高いものから3つのオススメ記事を自治体職員のみなさんにご紹介します。
①「これからの自治体職員に求められるもの」 https://note.com/yumifumi69/n/nf3a1d084d68c
「対話ができる自治体職員がこれから必ず必要になるよ」ということを書いています。一見、財政とは関係がないタイトルですけれど、財政も実は対話がもっとも大事だと私は思っています。2020年の記事ですが、いまも反響が高いですね。
②「もっと効率的な方法はないですか」https://note.com/yumifumi69/n/n8296de6d0e97
めちゃくちゃ忙しかった財政課時代にいろんなことに気がついたのですが、そのことをまとめています。
「もっと効率的な方法はないですか」という言葉は財政課職員が予算査定の際にいつも現場に投げかける常とう句。予算要求担当課の皆さんにとっては聞きたくないフレーズだと思いますが、あえて意地悪な問いかけをタイトルにしました(笑)。財政課長になってから不夜城と言われた財政課や予算要求を行う担当課も含めた大幅な時間外勤務の縮減を果たした経緯やそのきっかけとなった問題意識、財政課と予算担当課は争うのではなく協力しあうことにエネルギーを費やしたほうがいいのではないかという問題提起などを書いています。詳しい内容は是非、記事をお読みください。
③「情熱と異能の人」https://note.com/yumifumi69/n/n71e6026c3e35
卓越した能力や熱い情熱を持ち、持てる限りの力を尽くして懸命に仕事をしている「情熱と異能の人」は自治体の中でどう扱われているのか、本当はこうあるべき、こうあってほしいという意見や提言を私なりにまとめた記事です。
自治体職員の読者のみなさんから反響がとても高い記事ですね。この記事をきっかけに私に関心をもってくれる自治体職員の方も多いです。
自治体財政をテーマにしたnoteを書いていますと言いましたけど、もちろん財政の話もたくさんあるんですが、公務員としての働き方についての記事が人気です。「公務員としてどう生きるか」ということは、自治体業界や公務員界隈の新しいテーマになっているように思います。
人と対話をしたい
私が情報発信している根本は「人と対話をしたい」ということです。ですから、私が一方的に発信しているだけでリアクションがないのは嫌なんですよね。いいねでもコメントでもスキでもなんでもいいです。「今村の言っていることは間違っている」「そうじゃなくて、こうだろう」という議論や論戦を挑んでこられるのもアリだし、「このテーマについて今村だったらどう書く?」とお題を振っていただくのもありがたい。何かしらのリアクションが対話になり、対話が膨らんで次のお題になって新しい展開が生まれる。それが私の目指すところです。
そうした対話が生まれる情報発信をこれからもしていきたいと思っています。
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