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自著書評(関東学院大学 法学部 地域創生学科 教授・牧瀬 稔)
明日から活用できるまちづくりの実践的な視点

牧瀬流 まちづくり すぐに使える 成功への秘訣

プロフィール
牧瀬 稔
《今回の「自著書評」の著者紹介》
関東学院大学 法学部 地域創生学科 教授
牧瀬 稔まきせ みのる
法政大学大学院人間社会研究科博士課程修了。民間シンクタンク、横須賀市役所(横須賀市都市政策研究所)、(公財)日本都市センター研究室(総務省所管)、(一財)地域開発研究所(国土交通省所管)を経て、現在関東学院大学法学部地域創生学科教授。関東学院大学地域創生実践研究所長、社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科特任教授、沖縄大学地域研究所特別研究員等を兼ねる。政策づくりのアドバイザーとして関わった自治体は、北上市、中野市、日光市、ひたちなか市、春日部市、戸田市、東大和市、町田市、多摩市、新宿区、鎌倉市、熱海市、寝屋川市、東大阪市、西条市、高浜町議会など多数。近年は、民間企業の地方創生に関するアドバイザーも増えてきている。

多くの自治体の政策アドバイザー等を務める関東学院大学の牧瀬 稔 教授が、自治体のまちづくりの現場を自らの脚で歩いた経験・知見をもとに、新著『牧瀬流 まちづくり すぐに使える成功への秘訣~明日から活用できるまちづくりの実践的な視点』(一般財団法人経済調査会)をこのほど上梓しました。具体的な自治体事例を豊富に盛り込み、「牧瀬流 まちづくり」の要諦を完全網羅した同書の内容と、本書に寄せる“ある特別な想い”を牧瀬教授がお伝えします。

「自治体通信Online」寄稿記事を土台に

今年の6月に本書『牧瀬流 まちづくり すぐに使える成功への秘訣~明日から活用できるまちづくりの実践的な視点』(一般財団法人 経済調査会)を出版しました。筆者にとっては、たぶん26冊目の著書となります(単著に限定せず編著も含む)。

本書の表紙カバー

本書の目次
  • 第Ⅰ部「地方創生のいま」
  • 第Ⅱ部「公民連携を知る」
  • 第Ⅲ部「まちづくりのヒント」
  • 第Ⅳ部「まちづくりの注意点」
  • 第Ⅴ部「条例活用でまちづくり」
  • 第Ⅵ部「まちづくりを支える議会の役割」

今回は「自治体通信Online」のwebスペースをお借りして、本書を紹介したいと思います。
 
最近は「自治体通信Online」等に記事を執筆できず申し訳ないのですが、過去の記事のエッセンスは本書に記述されています。
 
例えば、成功させるシティプロモーションのポイントや正しい地方創生の歩き方、近年注目を集めているシビックプライドの動向、的を射た議会改革の取組み方などです。これらの内容で、過去「自治体通信Online」に記事を執筆しました。その時の記事を土台にバージョンアップして、同書に書き込んでいます。
(参照:牧瀬 稔 関東学院大学 法学部 地域創生学科 教授の寄稿連載記事一覧)

民間の活力を生かすべき

◎第Ⅰ部「地方創生のいま」

本書は6つの章から構成されています。第Ⅰ部は「地方創生のいま」です。筆者は、現時点の地方創生は「人口減少の克服」と「地域経済の活性化」が主眼にあると捉えています。そこで第Ⅰ部においては、それらを実現していく視点を言及しています。
 
また、過去にはない、新しいまちづくりの実践(新機軸)も取り上げています。新機軸(イノベーション)は地方創生の原動力となります。また、イノベーションは自治体を発展させる原動力でもあります。
 
地方創生を成功させるためには、民間の活力を生かすべきです。ここで言う民間は、民間企業に限定せず、大学や地方銀行や信用金庫など、自治体の外に位置する主体です。民間活力が地方創生を強くすることを指摘しています。また地方創生の前提には確実な行政運営が必須です。筆者が考える行政運営の基本的視点も述べています。

ここでは、民間活力を少し述べています(それを受けて第Ⅱ部は「公民連携を知る」としています)。公民連携の定義は多々ありますが、筆者は「行政と民間が相互に連携して住民サービスを提供することにより、行政改革の推進、民間の利益拡大に加え、住民サービスの向上や地域活性化等を目指す取り組み」と捉えています。

第Ⅱ部「公民連携を知る」

ここでは、公民連携の現状と課題、そして展望を記しています。公民連携はダイナミズムがあります。そのダイナミズムは現場から生じます。その意味では「現場感覚」が極めて重要です。現場感覚を捉えてほしいため、具体的な事例として、町田市、日光市、加賀市の公民連携を取り上げています。

現在、筆者は大学の立場から、自治体と連携し地方創生に取組んでいます。ゼミナールに所属する学生を地方創生の現場に総動員しています(もしかしたらゼミ生にとっては迷惑かもしれませんが…)。同時に、民間企業が地方創生に進出する際のアドバイスも多くしています。これらの経験も踏まえながら、第Ⅱ部を執筆しました。

ヒントと注意点

第Ⅲ部「まちづくりのヒント」

ここでは、筆者がアドバイザーとして関わったり、審議会委員として関係したりした経験を詳述しています。ヒントの提供が主眼ですから、読者なりに考えていただきたいと思っています。

具体的事例として、北上市、西条市、東大和市、相模原市を記述しています。それぞれの事例は特徴的なまちづくりと言えます。

各事例のキーワードは、協働、コンパクトシティ、シティプロモーション、教育ICT、子ども・子育て支援、シビックプライド(市民の誇り、愛着)などです。いずれも、まちづくりにおいて注目を集めている要素です。

本書の内容の一部。丁寧なキーワードをコンパクトに解説した(画像左)ほか、図・グラフ等を多用し(画像右)、まちづくりの実践的な視点をわかりやすく解説

第Ⅳ部「まちづくりの注意点」

筆者がまちづくりの現場に行くと、間違った考えがあります。その結果、まちづくりが成功の軌道に進まないことが多くあります。

自治体職員は、とても真面目です。その真面目さに、日々感服しています(心から、そう思っており、筆者にはない能力です)。そのため地方創生も真摯に取組んでいます。ところが、「間違った考え」を持ち「間違った努力」をしているため、成果が現れません。
 
正しい考えや正しい努力とは何でしょうか。
 
例えば、ある人が「大会」に出るために、毎日、腕立て伏せを500回、スクワットを500回に加え、1日あたり10kmを走ることを自分に課していました。そして、努力の成果を発揮する大会を迎えることになります。しかし、その大会は「合唱コンクール」だったりします。
 
合唱コンクールで優勝するのに、腕立てやスクワットなどが全く役立たないとは言いません。しかし、実は無駄な努力です。これが「間違った努力」です(間違った努力の前には、間違った考えがあります)。当人は、一生懸命に努力をしているのに、方向性が間違っているため、何も成果が得られません。

第Ⅳ部は、間違った考えや努力に行かないように、「注意点」という観点から、まちづくりトピックスを取り上げて検討しています。

いずれのトピックも、まちづくりの現場で注目されている内容です。取り上げるトピックスは、雇用創出、シティプロモーション、DX、スマートシティ、関係人口などです。概念の説明という趣旨もありますので、基本的な用語を理解するのに役立つと思います。

条例と議会にも論及

第Ⅴ部「条例活用でまちづくり」

ここで取り上げた条例は「子ども」「高齢者」「公共交通」「自然災害」「協働」です。これら5つのテーマは、筆者が関わっている審議会で、頻繁に議題に上がるものです。

特に、人口減少が進む地域の重要事項として取り上げられる傾向が強くあります。5つのテーマに関して、経緯や動向、特徴的な条例を紹介しています。

第Ⅵ部「まちづくりを支える議会の役割」

議会は直接的にはまちづくりに関わりません。しかし、まちづくりにおいては重要な存在です。そこで「議会」を取り上げました。

 第Ⅵ部は、議会運営の基本的な視点や今後の議会の展望を記しています。「議会の当事者でないお前(牧瀬)が言うな」と指摘されそうですが、当事者でないからこそ、客観的に把握できることも多くあります。第Ⅵ部では基本的な内容を書いています。ところが、議会(議員)と関係を持つと、意外と基本的なことを押さえていないケースがあります。読者が議員の場合は、復習の意味で読んでいただけたら幸いです。
 
やや長くなり恐縮ですが、上記のとおり6つの観点で構成しているのが本書『牧瀬流 まちづくり すぐに使える 成功への秘訣』です。手に取っていただけると幸いです。

実践的な“牧瀬流”まちづくりの要諦を余すところなく網羅

「本間先生」の背中を追って…

最後になります。個人的なことになりますが、記しておきたいことがあります。
 
筆者の愛読書は『まちづくりの思想』(有斐閣選書)です。昨年、86歳で亡くなった本間 義人先生(ジャーナリスト、都市政策学者、法政大学名誉教授)が執筆した図書であり、筆者は本間先生に師事しました。
 
大学院時代は、「論文を書いて、本間先生に提出し、指導を受ける」という繰り返しでした。本間先生は、とても寡黙な方でして、研究室でふたりっきりで、ずっと黙っている…ということが何度もありました。この黙っている時間の雰囲気がとても重たかったです。
 
そして、突然、提出した論文の難点を指摘され、筆者が謝る…という繰り返しでした(筆者は、すぐ謝る傾向があります。子どもから電話があっても、筆者の第一声は「すみません」からはじまります)。
 
本間先生は、とても怖いのですが、けど、とても温かい方でした。筆者も、そういう教員になりたいと思っています。念のため指摘しておきますと、筆者は「怖い教員」になりたいのではなく、「温かい教員」になりたいのです。
 
筆者の単著の中で「まちづくり」という言葉が付いたはじめての図書です。本間先生の図書と比較すると、「軽薄短小」の感はありますが(軽薄短小と書くと、誰も手に取ってくれなくなりそうですが、あくまでも「本間先生の図書と比較して」です)、今回「まちづくり」の5文字が筆者の単著にあり、とてもよかったと実感しています。少しは本間先生に恩返しができたと思っています。改めて、本間先生に感謝申し上げます。
 
また、書名は編集者からご提案いただきました。その意味で編集者にも感謝いたします。


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