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継承と創造で未来を切り拓く県政運営方針

地域の魅力に惹きつけられた人々が、輝き挑戦し続けられる広島を築く

地域の魅力に惹きつけられた人々が、輝き挑戦し続けられる広島を築く

※下記は自治体通信 Vol.76(2026年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

湯﨑前知事の任期満了に伴う選挙で当選を果たし、令和7年11月に広島県初の女性知事に就任した横田美香氏。長年の国での行政経験を持つ同氏は、前知事の路線を継承しつつも、社会経済情勢の変化に柔軟に対応すべく、今年7月に県の総合計画「安心▷誇り▷挑戦ひろしまビジョン」を改定した。「既定路線化する人口減少を見据え、誰もが幸せになれる社会をつくる」と決意を示す同氏に、今後の県政ビジョンについて詳しく聞いた。

インタビュー
横田 美香
広島県知事
横田 美香よこた みか
昭和46年、広島県生まれ。平成7年に東京大学法学部を卒業後、農林水産省に入省。大臣官房参事官、経営局就農・女性課長、富山県副知事、内閣官房内閣審議官(内閣人事局)、広島県副知事を歴任。令和7年11月、広島県知事に就任。現在1期目。

家族で暮らしやすいまちは、誰もが暮らしやすい

―どのような使命感を持って広島県知事に就任しましたか。

 昨年の夏、退任を表明する前の湯﨑知事から広島県出身の私に知事選出馬の打診をいただきました。国の機関で長年行政に携わってきた経験を故郷のために直接活かせる機会を得たことは本当にうれしく、身の引き締まる思いでした。しかし実際にいまの広島に向き合うと、想定を上回る速度で進行する人口減少、とりわけ若い世代や女性が県外へ流出している深刻な課題に直面しています。この広島を、若者や女性が自らのチャレンジの舞台として選び、流入・定着してもらうための対策が急務です。

 今年度は、県のあり方を描いた10ヵ年の計画「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」が後半の5年間を迎えるタイミングにあたります。急速な社会経済情勢の変化に対応するため、私たちはこのビジョンを改定しました。

―改定のポイントはなんですか。

 今後5年間の方向性としては、「シン・ファミリーフレンドリー “家族で暮らしやすいまちは、誰もが暮らしやすい"」というキーワードを掲げています。多様な形態の家族が暮らしやすい社会をつくり、県内外の人々を惹きつけられる魅力的な県を目指します。

 特に注力する重点項目として、5つの項目を設定しました。そのうち3つは、人を惹きつけるための「若者に選ばれる広島県」「女性に選ばれる広島県」「子育てしやすい広島県」です。4つ目は「強固な社会経済基盤の確立」です。農林水産業や観光、ものづくり産業のほか、半導体関連産業などの先端・成長産業の振興や生産性の向上に加え、これらを支える担い手として外国人にも選ばれる環境整備によって県経済の成長を促し、賃金と物価の好循環を定着させます。防災・減災対策も着実に進めます。県民の命と暮らし、経済活動を支えるとともに、すべての県民が質の高い医療などのサービスを受けて地域で暮らし続けられ、安全・安心を実感できる広島県の実現に取り組みます。

新しい挑戦へ踏み出せるよう、背中を押せる社会を目指す

―5つ目はなんですか。

 「広島の財産と経験の継承」です。広島には、瀬戸内海の島々が織りなす多島美、田畑が広がる豊かな原風景や食文化、地域に根差したスポーツチームや文化芸術、グローバルに展開するものづくり産業など、多彩な宝があります。こうした広島が持つ強みや魅力を通じて、本県でしか得られない価値を提供するとともに、それらの財産を将来世代に引き継いでいきます。また、原子爆弾による破壊を経験し、その廃墟から力強く復興してきた地として、その使命と役割を果たし、核兵器廃絶と恒久平和に向けた取り組みを着実に進めていきます。

―ビジョンを推進していくうえで、どのような横田県政カラーを出していきますか。

 私は広島県で初めてとなる女性知事に就任しました。この立場にあるからには、県内の女性がライフイベントと両立しながら自らの夢やキャリアを追求し、新しいチャレンジへ踏み出せるよう背中を押してあげられる社会にしていきたいという思いを強く持っています。公務員として30年間仕事をするなかで環境は変わってきたと実感する一方、いまだに目に見えないアンコンシャス・バイアス*によって女性が活躍しにくい環境が残されています。先人の努力を引き継ぎ、男性の育児休業取得や共家事・共育ての定着など、総合的な対策を打っていきます。

 同時に力を入れていきたいのは、関係人口と交流人口の増加です。人口減少が避けられない時代だからこそ、地域の内外で活発な交流が生まれるよう、楽しさや新しさといった魅力を高める必要があると考えています。

―魅力を高めるため、どのようなことに取り組んでいきますか。

 スポーツや文化芸術、エンターテインメントを軸に人々が集まる都市づくりを推進します。これらの分野は大きな経済効果を生むだけでなく、人々の生活に安らぎや幸せなどの豊かさをもたらす本質的な価値を持っています。たとえば、大規模なコンサートツアーが広島を通過してしまう「コンサートの広島飛ばし」という課題があります。これは地域経済にとっても県民の生活の充実にとっても大きな機会損失です。県としては、全国ツアーのコンサートなども行われている広島グリーンアリーナの運用を見直し、ライブやイベントの開催数は、昨年度から増える見込みとなっています。今後も、今ある資源を徹底的に活かし、魅力的なアーティストやアスリートが集まって発信していく仕組みを整え、国内外から人が集うまちづくりを進めていきます。

*アンコンシャス・バイアス:無意識の偏見や思い込み

新たなものを生み出し、世界とつながる土壌がある

―施策を推進した先に、どのようなビジョンを描いていますか。

 私たちが目指しているのは、安心の土台と誇りによって、県民一人ひとりが夢や希望に挑戦している広島県の実現です。私なりの具体的なイメージを重ねるならば、人々が創造性を発揮することにより、「最先端」がここ広島にあるという姿です。現在は情報や本社機能が大都市圏へ一極集中していますが、地方である広島に本社があることがかっこいい、おもしろいと言われるような環境をつくりたいと考えています。

 実際、そうした動きはすでに起きており、たとえば瀬戸内海の離島に位置する大崎上島町では、東京などのIT企業の人々が集まって研修やデジタル化の実証などを行う動きが生まれています。また、レモンの生産量が日本一の広島県を支える産地である強みを活かし、飲料メーカーが農業にまで携わりながら、ここでしかできない飲料製品などの開発に取り組む事例も形になっています。

―ポテンシャルは大きいということですね。

 はい。沿岸部だけでなく、中国山地を含む広島全域には大きなポテンシャルが眠っています。中国山地はかつて、和牛の発祥地として地域の産業を支え、瀬戸内海は朝鮮通信使が寄港する国際交流の要衝でした。広島には、新しいものを自ら生み出し、世界とつながる土壌が古くからあるのです。人口減少という既定路線のなかにあっても、こうした歴史的な強みを磨き、デジタル技術などの新しい手法で挑戦を積み重ねていけば、広島は再び最先端の価値を生み出せると信じています。地域の魅力に惹きつけられた人々が、それぞれの場所で輝き挑戦し続けられる広島を、みなさんとともに築いていきます。

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