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「デジタル敗戦」の危機感の中で発足したデジタル庁の自治体DX戦略とは

単なるデジタル化では終わらせない、自治体DXは経済活性化の起爆剤になる

単なるデジタル化では終わらせない、自治体DXは経済活性化の起爆剤になる

「デジタル敗戦」の危機感の中で発足したデジタル庁の自治体DX戦略とは

単なるデジタル化では終わらせない、自治体DXは経済活性化の起爆剤になる

デジタル大臣政務官 尾﨑 正直

※下記は自治体通信 Vol.45(2022年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


社会全体のデジタル化を推進する役割を担い、令和3年9月に発足したデジタル庁。発足から1年が経過した今、情報システムの標準化など自治体DX推進の動きがいよいよ本格化している。このデジタル庁における司令塔のひとりが、令和4年8月の第2次岸田改造内閣でデジタル大臣政務官に就任した尾﨑正直氏である。高知県知事を3期務め、地方行政に精通した同氏に対しては、自治体関係者からの期待が大きい。いかに自治体DX推進のかじ取りを行うのか。今後の政策ビジョンなどを同氏に聞いた。

自治体DX推進に重要な、3つのポイント

―デジタル庁が発足して1年が経過しました。この間の成果を振り返ってください。

 社会全体のデジタル化を推進していく立場として、その基盤となる自治体DXは、もっとも重要なテーマとなります。その設計図を一定程度描くことができたのは、大きな成果だと考えています。

 ここで打ち出されているのは、従来のように各自治体が個別にDXを推進していくのではなく、全国共通基盤「ガバメントクラウド」に各自治体が接続するかたちで、住民サービスの向上と行政運営の効率化を図りながらDXを推進していく姿です。これにより、自治体間のデータ連携が容易に行えるようになり、DX本来のメリットを享受することができます。今年8月には、標準化対象の20業務について、標準仕様を定めています。これらの標準仕様に準拠した各業務システムを、ガバメントクラウドを活用して実装し、各自治体の利用を義務づけていくことになります。令和7年度までに、この体制へ移行する方針を政府として打ち出しています。

―この方針を推進していくうえで、デジタル庁が考える重要なポイントとはなんでしょう。

 3つあると考えています。1つ目は、単に従来の業務をデジタルに置き換えるのではなく、DXを機に従来の業務そのものを抜本的に見直すこと。いわゆる、BPRですね。デジタルの力で、業務の利便性と効率性をいかに高めていくか。その視点でDXを推進していくことが重要です。

 2つ目は、DXを阻む「アナログ規制」の改革です。業務全体をデジタル化しても、その一部で「捺印を義務づける」「フロッピーディスクでの提出」といった条例や内規があれば、DXの効果は大きく棄損してしまいます。

 そして3つ目は、首長のリーダーシップです。自治体DXを推進するには、行政とテクノロジー、それぞれに精通した人材が必要になり、両者をうまく融合できるチームをいかに組成するかがポイントになります。そこで求められるのが首長のリーダーシップであり、先進的な自治体では、共通して見られる特徴だと言えます。

業務改革の先進事例を、モデルケースとして紹介

―それらのポイントに対して、デジタル庁としてはどのような支援をしていきますか。

 まず、2つ目のアナログ規制の改革について先に申し上げると、すでに国が先駆けて取り組みを進めています。デジタル臨調での議論を通じ、令和4年6月時点で、5,000ほどあるアナログ規制のうち、4,000ほどの見直しの方針を確定しており、令和6年6月までに一括での法改正等により見直しを実現することとしています。さらに、本年中に、自治体向けにもアナログ規制の見直しのためのマニュアルを作成し、公表する予定です。

 また、1つ目にあげた「業務の見直し」については、現在私がデジタル大臣の特命で進めている取り組みが、ひとつのヒントになると考えています。

―どういう取り組みでしょう。

 業務改革を伴うデジタル化のモデルケースとなりうる具体的な先進事例を収集し、デジタル庁として発信していきたいと考えています。この『自治体通信』でも、数多くの先進事例が紹介されていますが、たとえば、「書かない窓口」といった場合、北見市(北海道)の取り組みなどは注目されている事例のひとつです。そこでは、どのような業務改革が行われ、その結果どういったプロセス設計がなされ、どのような仕様のシステムが活かされているのか。具体事例を紹介することで、全国の自治体で業務改革の参考にしてもらいたいと考えています。

クラウド上に生まれる、デジタルマーケットプレイス

―業務改革のプロセスや導入システムなどをひとつのパッケージにして紹介し、各自治体でのDXの後押しをしていくと。

 そのとおりです。たとえばそうした事例を、標準化される20業務において複数紹介できれば、それら先進自治体で導入されているシステムを、ガバメントクラウドを活用して横展開し、一つのSaaS*1として提供可能な状態にしていくのです。そうすれば、それらの中から全国の自治体は実情に合わせて、自らに適したものを選択し、導入していくことが可能になります。ガバメントクラウド上では、システムベンダー同士の競争原理も働き、より優れた提案も生まれるでしょう。ガバメントクラウド上に展開されているシステムであれば、仕様の互換性は担保されているので、システムの移行も容易で、各自治体での業務改革は加速度的に進む。そんなビジョンを描いています。

―民間企業にとっては、新たなビジネスチャンスが生まれることにもなりそうですね。

 それはまさに、ガバメントクラウドの構築によって得られるもうひとつの効果として期待しているものです。現在も、自治体とともに社会課題を解決している地域の民間企業はたくさんあります。そこで生まれたソリューションが優れたものなら、ガバメントクラウド上に新たな「デジタルマーケットプレイス」が生まれることで、一気に全国展開が可能になります。これからは、自治体業務の効率化そのものが公共事業になる時代がくるかもしれません。そこにビジネスチャンスを見出したソーシャルスタートアップが全国各地に次々と生まれてくる。自治体DXを機に、そんな新たなエコシステムが国内に形成されるのではないかと期待しています。

自治体DXを、経済活性化へつなげる好機に

―DX推進をともに担う自治体へのメッセージをお願いします。

 一昨年の「新型コロナ特別給付金」をめぐっては、自治体業務がひっ迫した結果、支給に何ヵ月も要してしまい、それを「デジタル敗戦」と表現されてしまいました。それを教訓に発足したデジタル庁としては、不退転の決意で推進していくことはもちろん、自治体DXを経済や産業の活性化へつなげる好機にできるとも考えています。そのために必要な支援、また新たな財政的な後押しも検討しているところです。自治体のみなさん、なんとしてもこの大きな改革をともに成し遂げていきましょう。

尾﨑 正直 (おざき まさなお) プロフィール
平成3年3月、東京大学経済学部を卒業後、大蔵省(現:財務省)に入省。主計局主査、理財局計画官補佐、内閣官房副長官秘書官などを経て、平成19年10月に財務省退職。平成19年12月、高知県知事に就任。令和元年12月まで3期務める。その間、全国知事会副会長などを歴任。令和3年10月の衆議院議員総選挙で当選。現在衆議院議員1期目。令和4年8月から、第2次岸田改造内閣のデジタル大臣政務官兼内閣府大臣政務官を務める。

*1:※SaaS : Software as a Serviceの略。利用者が独自の開発等をすることなく、クラウドサービスとして利用できるソフトウェアのこと

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