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Tourism1.5~ツーリズムフォワード~(vol.7)持続可能な地域づくり

この記事の配信元

インバウンド需要の回復や観光産業の拡大に伴い、あらためて地域の在り方が模索されています。「持続可能な開発目標(SDGs)」の広がりとともに、地域づくりの考え方も変わってきているのではないでしょうか。本記事では、有識者の解説や日本各地の事例をもとに「持続可能な地域づくり」を紐解いていきます。

提供:笛吹市

1 日本の価値観や環境を踏まえたサステナブルツーリズムの推進にむけて

持続可能な地域づくりを進める際に、ツーリズムは、これまで以上に重要な役割を果たすようになります。サステナビリティへの理解と実践を進めていくことは、これからの観光セクターにおいて大変重要なことになってきます。

本稿では、サステナブルツーリズムの推進・定着について、JTB総合研究所 主席研究員の熊田 順一が解説します。

プロフィール
熊田 順一
JTB総合研究所
主席研究員 国際関係・サステナビリティ領域担当
熊田 順一
訪日インバウンド事業および国連世界観光機関(UNWTO)での業務経験を活かし、世界情勢やトレンドを 踏まえたマーケティング、ビジネスソリューション、調査を得意とする。

サステナブルな地域社会づくりへの取り組み

昨今の地域づくりにおいて、サステナビリティの考え方は欠かせません。世界中で、SDGsが掲げられ、産官学民それぞれの立場で検討・取り組みを進めています。

日本においても公共セクターや民間セクターでさまざまな取り組みが進められています。特に製造業のバリューチェーンに関連する事業会社や、融資・投資を担う金融セクターでは、SDGs達成に貢献する取り組みが進んでいます。持続可能な生産と消費の観点で、地球環境の存続なしに事業の推進は難しく、この考え方は、観光セクターにおいても同じことが言えます。

観光地においてサステナビリティを導入していくには

日本の公的セクターが開発した持続可能な観光推進のフレームとしては、「日本版持続可能な観光指標:JSTS-D」や「観光を活用した持続可能な地域経営の手引き」「観光プロジェクトのための指標ツールキット(TIPs)」等があり、これらを参考にすることが推奨されています。

図1:日本版持続可能な観光ガイドライン表紙
出典: 観光庁HP

図2:観光を活用した持続可能な地球経営の実現ステップ
出典:運輸総合研究所「観光を活用した持続可能な地球経営の手引き」P13図表7


観光セクター内外の事業者が連携し、新しいライフスタイルを提案する

観光地のサステナビリティ推進への諸課題に対応するには、観光地域の着地側事業者と市場の送客側事業者の協力・連携・共創が大変重要です。また、観光地や訪問地の課題にソリューションを提供する観光セクター外の事業者が、観光地の官民セクターや事業者と繋がり、サービスだけでなく事業連携に継続して取り組む環境づくりも必要です。観光セクターのサプライチェーンやバリューチェーンのつながりの中でサステナビリティを考え、各事業者の取り組みを消費者である旅行者へきちんと伝えていくシームレスな官民連携ができる議論と合意形成のプラットフォームの場の形成が求められています。

観光セクターのバリュー/サプライチェーン間をつないでいく

ツーリズム産業は、それぞれのサービスが抱えるサステナビリティ課題が多様です。観光セクターに所属する各事業者が、他事業者のサステナビリティへの取り組みについて理解を深め、消費者である旅行者とサービスを提供する事業者との距離を縮めていくことで、ツーリズムセクターのサステナビリティへの取り組みは格段に進むと思います。

また、旅行者の協力も重要になります。それぞれの観光地における旅行者に求める行動を提案し、そのルール順守を宣誓してもらう「観光地における『旅行者のプレッジ(宣誓)』」を起草し、旅行者に伝えていく継続的な取り組みも有効だと考えます。

サステナビリティを観光セクターで推進する組織づくり

現在、観光セクター内外の仲間を募り、サステナビリティ推進の取り組みを共有・議論・実践していくプラットフォームとして、日本サステナブルツーリズムイニシアティブ(JSTI)の設立と事業計画づくりが行われています。


JSTIの設立の背景

日本政府は2018年に持続可能な観光推進本部を設置し、2019年G20大阪サミットとG20観光大臣会合(倶知安)では「持続可能な観光」をテーマに議論をリードし、その具体的なアクションとして2019年に「日本版持続可能な観光ガイドライン」を発表しました。民間においても、SDGsに関わる研修機会やアワードを設けられており、日本の観光セクターにおけるサステナビリティへの取り組みの機運は上昇しています。

海外では、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)やサステナブルツーリズムグローバルセンター(STGC)等を軸に持続可能な観光を推進する基準が設けられており、グローバルな情勢を踏まえたガイドラインや実践手法について、共通の認識を持っていくことも課題となっています。

JSTIの設立目的

JSTI設立の目的は、UNWTOが1988年に定義したサステナブルツーリズムの考え方※1に賛同し、サステナブルツーリズム推進に関心の高い団体が集い、日本のライフスタイルや価値観を踏まえた、実践的な持続可能な観光の考え方とフレームを共創・普及することです。UNWTOが推進している国際基準を踏まえつつ、日本の観光地域が置かれた環境や、日本人が大切にしてきたサステナビリティ推進に貢献する価値観を、国内外に伝えていきたいと考えています。

設立に当たっては、観光地を抱える地方自治体と民間事業者が主体の組織づくりを考えており、旅行・観光セクターの大多数を担う中小零細事業者や個人事業者が持続的に実践できる共通の枠組み作りを念頭に、プラットフォームの形成を重視しています。

JSTIの活動について

設立初年度は、持続可能な観光を推進・支援する団体の議論のプラットフォームとネットワーク形成、日本の価値観を踏まえたグローバルで持続可能な観光サービス基準の普及・推進に取り組んでいきます。

その後、会員メンバーと連携しながら、「持続可能な観光を実践する取り組み好事例の発掘・認定・表彰と連携促進」や、「持続可能な観光の実践・経営を担う人材育成・機会創出」、「持続可能な観光の推進のデータ駆動的管理枠組みの提供」などさまざまな取り組みを予定しています。

想定される参加メンバーについて

宿泊施設、鉄道会社、陸上輸送サービス提供事業者、航空会社、地域で持続可能な観光を担うさまざまなツーリズム関連事業者、小売事業者の皆さん、観光関連団体・協会、地方公共団体、観光事業者、アカデミアメンバーなど、多種多様な方々の参画が重要だと考えています。

また、公共セクターとの連携では、国際機関である国連世界観光機関(UNWTO)や国際協力機構(JICA)、中央官庁が進めるサステナビリティ推進政策と連携も欠かせません。

※1 1988年のUNWTOによれば「サステナブルツーリズム」は、文化的完全性、(地球に)不可欠な生態学的作用、生物多様性、生命維持システムを持続可能なものとしながら、経済的、社会的、審美的ニーズを満たす方法で、すべての資源を管理しているようなツーリズムと定義されています。

2 JTBの持続可能な地域づくり「地域交創プロジェクト」

JTBでは2006年に「地方創生に資する地域交流事業」を立ち上げ、地域と連携し、魅力を高め、旅の目的地になる地域が元気になることを目指して地域交流事業を推進しています。2023年度からは「地域」「旅行者」「社会」の皆がWIN-WINとなる考え方「三方よし」を基に、主体的に地域の多様な関係者と連携し、交流のチカラによる地域課題の解決を通じて、持続可能な地域づくりに貢献する「地域交創プロジェクト」を推進しています。その中で本誌では、JTB甲府支店での取り組みと、京都プロジェクトについて紹介をさせていただきます。

ケーススタディ
新たな人流を創造し、持続可能な地域を生み出す山梨県の取り組み

POINT01 「カイフジヤマロード構想」が目指す山梨県の持続可能な観光地づくり

国内外の旅行需要の回復に伴い、山梨県でも河口湖周辺を中心に賑わいを取り戻しています。しかし、旅行者の一極集中やマイカーによる交通渋滞などが問題となっています。

そうした観光課題を、インバウンドを中心とした観光客を山梨県内周遊させる事による、「新たな人流創出」によって解決すべく、JTB甲府支店では「カイフジヤマロード構想」を立ち上げ、推進しています。具体的には、山梨県内を4つのエリア(A:湯村温泉エリア、B:勝沼ワイナリーエリア、C:FUJIYAMAツインテラスエリア、D:河口湖エリア)に分け、それぞれのエリアにあわせた魅力的なコンテンツ開発を行い、Maas事業や再開発事業、拠点の整備を行うと同時に、山梨県全体をつなぐことでの人流を創出し、観光客の一極集中課題の解決に取り組んでいます。

POINT02 「カイフジヤマロード」の起点となる「Tourist Base Kawaguchiko」 ~山梨県内へ新たな人流を創造し、持続可能な地域づくりを推進~

2023年11月に、カイフジヤマロード構想の起点として、「Tourist Base Kawaguchiko」(運営:JTB甲府支店)が新規オープンしました。河口湖駅前に開設された「Tourist Base Kawaguchiko」は河口湖駅周辺のオーバーツーリズムの解消、さらに河口湖に集中している訪日旅行者の方々に対し、富士山の眺望と和の空間をカフェ施設として提供するとともに、河口湖周辺にて滞在時間を満喫できるモビリティのレンタルや、山梨県内の魅力ある観光地へ周遊するオプショナルツアーを提供しています。この拠点のオープンによって河口湖周辺はもとより山梨県各地の賑わいがさらに増すことが期待されます。

POINT03 DBO方式の事業運営がもたらす効率的な財源の活用と地域活性化

笛吹市では2021年の夏に新たな観光誘客施設として、富士山が一望できる展望スポット「FUJIYAMAツインテラス」を開業しました。2024年にはFUJIYAMAツインテラスエントランス施設がDBO(Design Build Operate)方式を用いて完成する予定です。DBO方式とは、行政が資金調達を行い施設等の所有権を有する一方で、その管理・運営について民間委託をするなど、設計や施工段階から民間のちからを活用することができる方法です。管理・運営を担う民間目線が設計・施工段階から一貫して入ることは、民間側にとってはより運営目線で収益化の可能性を高めることができるほか、行政側にとっても追加コストの削減等各種効率化や利用者満足度の向上につながるといったメリットが想定されます。

ケーススタディ
つなぐ・つなげる・つむぎだす これからの千年・京都

POINT01 京都における持続可能な観光の推進

京都のこれまでの観光消費額は順調に伸長していましたが、その大半が京都市に集中し、府域全体や幅広い産業への波及に課題を有していました。この課題に対し京都府は、「もうひとつの京都」というコンセプトのもと、京都府の各エリアを「海の京都」「森の京都」「お茶の京都」「竹の里・乙訓」としてブランディングを実施し、個性化・多様化する観光客一人一人のニーズに合致した満足度の高い観光を実現し、地域経済を活性化する取り組みを推進しています。

一方、京都市は、様々な観光客が、快適に観光ができる受入環境整備や、市民と観光客の交流による相互理解促進、観光客に対する敬意の醸成、「京都観光モラル(京都観光行動基準)」に、京都が京都であり続けるために、観光事業者・従業者等、観光客、市民と大切にしていきたいことを明文化する等、京都府・京都市がそれぞれ、持続観光な京都観光の推進に向けた取り組みを進めています。

POINT02 JTBグループが進める 京都プロジェクト

JTBグループは交流創造事業によって、京都府・京都市が目指すサステナブルツーリズムの実現に貢献するため、2022年に『京都プロジェクト』を立ち上げました。京都府内にあるJTBの各個所(JTB京都支店、JTB京都中央支店、JTB京都仕入、京都エリア各店舗、JTBグローバルマーケティング&トラベル西日本インバウント事業部)が一体となり、「つなぐ・つなげる・つむぎだすこれからの千年・京都~京都社会のサステナビリティ(持続可能な発展)に貢献~」をコンセプトに設定し、京都の知識人や地域事業者との接点の強化や、地域事業者との協業による波及効果の創出、そして、繋ぎ合わせた新たな価値を更に磨き挙げることで、新たな事業を創造する等、京都観光モラルやサステナブルツーリズムの具現化を目指しています。


POINT03 京都観光プラットフォーム LINK KYOTOの推進

京都観光プラットフォーム LINK KYOTO

京都プロジェクトにおいては、目的の実現に向けた取り組みの1つとして、「京都観光プラットフォーム LINK KYOTO」という観光コンテンツのプラットフォームの整備を進めています。観光の効果を府域全体や幅広い産業へ波及させるべく、地域事業者の皆さん、地域コミュニティの皆さんと共に作り上げた「京都観光コンテンツ」を国内外の人々へ発信することで、京都府下の回遊性向上に貢献することを目指しています。

実際のプラットフォームでは、サステナビリティや文化観光、教育旅行、ユニークベニュー、ふるさと納税、企業ワーケーションなど、京都を訪れる国内外の個人・法人向けにテーマごとにコンテンツを整備しています。同プラットフォームを整備していく中で、京都をもっと知りたい、心ゆくまで愉しみたい想う皆さんと繋がりつづけ、これからの京都を一緒に創っていくことを目指し、京都観光モラルの実現にも貢献していきたいと思っています。

3 アフターコロナにおける持続可能な地域づくり

「持続可能な地域づくり」は、地方創生、地域活性化の大きなテーマであり、アフターコロナの今、ふたたび論じるタイミングとなっています。ここでは、「経済面」に絞って解説します。

官民連携の重要性

各地域には、公園、図書館、公営住宅などの公共インフラがたくさんあります。これらをどのように維持し、地域住民や観光客にその利便性を提供し続けるかは、今後の大きな課題となっています。

図表1:PPP/PFIのイメージ
出典:国土交通省「官民連携の1stステップ」を基に作成

そこで出てきたのが官民連携=PPP/PFIという考え方です。PPPとはPublic Private Partnershipの略です。民間の資金と経営能力・技術力・ノウハウを活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行うことで、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図ろうとしたものです。PFIはPrivate Finance Initiativeの略で、PPPという考え方の中にある1つの手法で、公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金・経営能力・技術的能力を活用して行う具体的なやり方です。

この官民連携=PPP/PFIという考え方は、行政、民間の思惑の一致から、まちづくりにおいて注目されています。地方公共団体は各種のインフラ改修に加え、人口減少等により税収面が減少し財政は厳しさを増していることや、これからの時代のハード設備の集客・運営を行政で担っていくことは難しいという面があります。しかしながら、民間の資金と経営能力・技術力・ノウハウを活用することにより、効率・効果的な運営をすることが可能となります。

一方、民間においても、資金・知恵・ノウハウ等を出すことでその後にビジネス=実益につなげることや独占的に使用権を認められるなど普通のビジネス環境では得られないメリットがあると考えられています。

持続可能なまちづくりの観点では、地域であまり活用されていないインフラにこのスキームを活用することで、地域住民の利便性確保と観光客等への魅力度アップにつながることが期待されます。今までは地域住民が支えていた(正確には地域側の税金等で負担していた)インフラを観光客がフリーライダー的に活用していた側面もあったのですが、発想を逆転させて、観光客が訪れて消費したいという施設を作れば、民間事業者の参入が見られ、消費活動が刺激されることで税額アップにつながり、それら収益で施設の維持や更新が可能となるのです。

空き家を活用した宿泊施設づくり

図表2:古民家等の歴史的資源を活用した宿泊施設数の推移
出典:観光庁「古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくり推進のための調査事業 ナレッジ集」を基に作成

観光業界では、地域に宿泊施設があることは非常に重要であると言われています。観光客が宿泊することで滞在時間が延び、消費金額が増えるからです。

一方、この重要性をわかりながらも宿泊地となれない地域はたくさんあります。それは、温泉やホテル、旅館など宿泊に関わるインフラがなかったからです。このような流れを一変させたのが、古民家を活用した宿泊施設です。古民家を活用することで、今まで宿泊地となっていなかった地域が宿泊地になり、観光による直接消費や波及効果が生まれることとなります。古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりは、滞在時間や観光消費といった観光面への効果のみならず、地域コミュニティの維持、地域の農林漁業や伝統産業の活性化、地域の歴史・文化の保存・継承、さらには移住・定住といった社会的効果も期待されています。また、日本の古い街並みや家屋に興味を持つ訪日外国人観光客等も増えてきているため、長期滞在の可能性も出てきます。

まちに活気が生まれると、地域外から人が訪れ、新しいビジネスをやったり、人と地域の連携が生まれたり、様々な化学反応が起こります。これこそまさに観光を活用したまちづくり、観光というトリガーから生まれる持続可能な地域づくりとなるのです。

4 まとめ

本記事は「持続可能な地域づくり」をテーマに、有識者の見解や各地域の取り組み事例をご紹介しました。この記事ではダイジェスト版でお届けしましたが、ダウンロードしてお読みいただけるマガジン本編には、ご紹介しきれなかった情報も掲載していますので、ぜひご覧ください。

株式会社JTB
設立1912年
資本金1億円
代表者名代表取締役社長執行役員 山北 栄二郎
本社所在地

〒140-0002
東京都品川区東品川二丁目3番11号 JTBビル

事業内容

旅行を基盤としたツーリズム事業を中心に、地方創生にまつわるエリアソリューション事業、企業・地方自治体・教育機関に向けたビジネスソリューション事業を展開しています。

URLhttps://www.jtbbwt.com/government/

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