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「滞納整理現場」という“荒れたオフロード”が天職に変わったワケ

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【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体職員のための心の運転方法 #1(寝屋川市 職員・岡元 譲史)

熱い志を抱いて入庁したのも束の間、“現実の洗礼”を浴びて心が折れかける―。こんな思いをした自治体職員の方は少なくないのかもしれません。「私もそのひとり。“人の役に立つ仕事だから、多くの人から感謝されるに違いない”と信じ込んでいました。しかし、実際に待っていたのは市民のみなさんから激しくも厳しい声を浴びる毎日…」。こう話すのは寝屋川市(大阪)職員の岡元 譲史さん。岡元さんは同市入庁後、税金や保育料等さまざまな滞納整理に従事し、市税滞納額70%削減に貢献したスゴ腕職員。「最初は辞めることばかり考えていました。それが、やがて滞納整理を自らの天職と言えるまでになったのには、あるワケがあります」(岡元さん)。この連載では、理不尽との戦いに心身をすり減らすことが少なくない全国の自治体職員の仲間へのエールとして、岡元さんが滞納整理というハードな仕事を通じて得た経験、気づきなどをシェアします。

あらゆることが「心」という形のないものに左右される

皆さん、はじめまして。岡元譲史と申します。大阪府にある寝屋川市という自治体で働いております。この度、ご縁を頂きまして、こちらで連載させてもらえる運びとなりました。どうぞよろしくお願いします。

記念すべき第1回目は、連載に至った経緯や、この連載にかける私の想いを綴らせてもらいます。

私は2006年度に寝屋川市に入庁後、12年間にわたり「滞納整理」という税金や保育料等を徴収する業務に従事しました。その際の経験をまとめ、2021年の5月21日に『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』(学陽書房)を上梓したのですが(参照記事:自著書評「現場のプロがやさしく書いた自治体の滞納整理術」)その本を読んだ方から

「滞納整理術という専門技術ではあるが、どの仕事にも通ずる仕事のあり方、人との接し方が学べた」
「滞納整理に従事される職員だけでなく、全ての自治体職員に読んでいただきたい一冊」
「公務員とは全く違う仕事をしているが、どんな仕事にも活かせる知識やエッセンスが詰め込まれている」

といった、大変有り難い感想を頂きました。

自分で言うのもなんですが、私は非常に素直な人間でして、人からのほめ言葉をそのまま有り難く受け入れることができます。たとえ、それらがお世辞や皮肉であったとしても「有り難うございます!」と全力で感謝し、自分に都合よく解釈して受け取れるのは、もはや「特技」といって差し支えないでしょう。

そんな私ですから、こうした感想を受け、「もしも自分の経験が滞納整理担当者だけでなく、多くの方に役立つのであれば、こんなに素敵なことはない」と素直に感じ、そのような機会がないものかと模索しておりました。

そこにタイミングよく連載のお話が舞い込んできたものですから、選択肢は「はい」か「イエス」か「喜んで」の3つしかないといった具合で、極めて高いモチベーションで原稿と向き合っております。

本連載では「心」という形のないものを扱います。この捉えどころのない「心」次第で、仕事の業績や成果だけでなく、人生における幸福感や満足度までもが左右される―。そんな感覚を持たれたことはありませんか? 少なくとも、私自身はそうした経験があります。

それは次のような経験です。

……2006年度に寝屋川市に入庁して滞納整理業務に就いた頃の私は、毎日のように「こんなはずじゃなかった」と、辞めることばかり考えていました。

「自治体職員は人の役に立つ仕事をするわけだから、きっと多くの人から感謝されるだろう」と信じていた私(なんて純粋で、頭の中がお花畑なんでしょう!)にとって、窓口や電話で滞納者から罵られるという現実は耐えがたく辛いものだったのです。

それらはとても理不尽なことであり「なぜ、私がこのような侮辱・屈辱に耐えないといけないのか」という憤り、憎悪が常に私の中に渦巻いていました。

ところがその後、滞納整理業務は私にとって“天職”と呼べるものになりました。「滞納者から滞納金を徴収する」という仕事の内容自体が変わったわけではありません。そう、私の「心」が変わったのです。

もしかしたら皆さんの中にも現在の状況に対して「こんなはずじゃなかった」と感じている方がいらっしゃるかもしれません。理不尽な状況は、組織の内外において様々な所で散見されるからです(これは自治体職員に限った話ではありませんね。「世界の9割は、理不尽でできている」という言葉もあるぐらいですから)。

十数年前の私が様々な本や人と出会って救われたように、「今度は、私が誰かの支えになるんだ!」なんて言うと大げさですが、ちょっとした気休めにでもなればいいなと、祈るような気持ちで書いています。

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満ちていく月なのか、欠けていく月なのか、どちらに見えるかは心のありようで左右される…

心の運転方法を一緒に学ぼう

仕事を含めた人生は「旅」に例えられることが多いのですが、人生を旅とするならば、皆さんの心は、乗り物に例えることができるでしょう(余談ですが、“乗り物”と言われた時に浮かべるイメージも千差万別ですよね。ある人は「馬」かもしれないし、「私の心はプライベートジェット」という豪快な方もいるかもしれません。ここを掘り下げても面白いのですが、それはまた別の機会に。とりあえずは自動車をイメージしてください)。

ところがこの乗り物、なかなかうまく思い通りには動いてくれません。頭ではアクセルを踏んで前に進む必要があると分かっているのに、心にはしっかりとブレーキがかかっていたりします。そのブレーキの外し方が分からなくて右往左往してしまい、時にはアクセルとブレーキを同時に踏んで、心が壊れてしまうことも…。

自動車の運転方法は教習所に行けば教えてもらえますが、自分の心の運転方法を教えてくれる場所や機会は、なかなかありませんよね。

マニュアルがある自動車の運転方法とは違って、心の運転方法には正解がありません。まさに千差万別。100人いれば100通りの最適解があるでしょう。

そこに正解や絶対解はありませんが、長年にわたり怒号や罵声が飛び交う「滞納整理現場」という荒れたオフロードを運転してきた私の経験が、何かしらの参考になればと思います。

この連載を通じて、私自身も皆さんと一緒に心の運転方法や整え方を学んでいきたいと考えています。できる限り長く続けたいと思っておりますので、どうぞよろしくお付き合いください。

 次回は、私が大切にしている「戦略」の話をしたいと思います。

(「余計な争いに時間を費やすほど人生は長くない」に続く)

《お知らせ》
本連載執筆者・岡元譲史さんの「出版記念オンラインセミナー」が開催されます。
2021年5月に発刊された岡元さんの初めての著書『現場のプロがやさしく書いた自治体の滞納整理術』(学陽書房)の出版を記念した無料オンラインセミナーです(主催・岡元譲史出版記念セミナー実行委員会)。

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今や、滞納整理の第一人者として研修を開催し、北海道から沖縄まで日本全国で延べ3,700名が参加する人気講師でもある岡元さんが、自著のポイントについてわかりやすく解説します。
書籍の中に登場する人物のゲスト出演や、出版の裏話など、盛りだくさんの内容。
※書籍をお持ちでない方もご参加いただけます。
日時:2021年9月18日(土) 20:00~22:00(放課後タイムあり)
場所:オンラインセミナー(Zoom)
費用:無料
詳細および申し込みはコチラ
https://sites.google.com/view/okamotojyoji/home

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岡元 譲史(おかもと じょうじ)さんのプロフィール
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寝屋川市(大阪)経営企画部 企画四課 課長代理 兼係長
1983年生まれ。2006年に同市入庁後、12年間にわたり、様々な債権の滞納整理に従事し、市税滞納額70%(約25億円)削減に貢献。2020年より現職。
「滞納整理に価値を見出して伝えることで、受講者の不安や葛藤を取り除く」という独自スタイルによる研修を全国で実施し、6年間で延べ3,700人が参加。受講者が給食費の滞納ゼロを達成するなど、すぐに使えて再現性の高いノウハウを伝えている。
執筆に「滞納整理のための空地・空家対策」(『税』2018年2月号)など。
「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2018」受賞。
プライベートでは2男児の父。PTA会長を務めるなど地域の活動も行う。
2021年5月21日に『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』(学陽書房)を刊行。同書の印税は「全額、寝屋川市の発展のために使う」としている。
<連絡先>okamoto.joji@city.neyagawa.osaka.jp