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現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術

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【自治体通信Online 寄稿記事】自著書評(寝屋川市職員・岡元 譲史)

多くの公務員が「やりたくない…」とされる業務に、いわゆる滞納整理があります。しかし、そんなキツい世界にも大きな実績を出した人がいるもの。たとえば寝屋川市(大阪)職員の岡元 譲史さん。同市入庁後、さまざまな滞納整理に従事し、市税滞納額70%削減に貢献したというから、まさに凄いのひとこと。どれほど「タフな公務員」かと思えば、ご本人いわく「私ほど交渉ベタな臆病者はいません。何度も心が折れかけて…」(岡元さん)。だからこそ、見えたこと、わかったことがあります。そうした岡元さんが自らの体験から得た知見をシェアするため『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』(学陽書房)を出版しました。同書の読みどころ、想いを岡元さんに解説してもらいます。

「争いの苦手な臆病者」が書いた滞納整理術

突然ですが、みなさんは「争いごと」の対応が得意ですか?

窓口や電話口で怒鳴られたり、「お前では話にならない。上司を出せ!」とにらみつけられたり…。そんな状況でも、「よっしゃ、かかってこんかい!」と血気盛んに立ち向かえる方には、きっと本書は必要ないと思います。

私が滞納整理という仕事についた頃、憧れたのはそのような勇敢な人達でした。

そして、単純な私は、伝え聞いた武勇伝をそのまま真似しようと試みます。「怒鳴ってくる滞納者に対しても、ひるまずに強気な姿勢で立ち向かっていくんだ!」と奮起し、窓口で実践―。

その結果、滞納者から「なんやその態度は! 寝屋川市は、どういう教育をしとんねん!」と返り討ちに遭い、上司と一緒に頭を下げる羽目に。知識も経験も少ない未熟な職員であるうえ、もともと争いごとが苦手で臆病な性格なのに背伸びをして無理をしているから、最後まで戦いきれなかったんですね。

この経験は私の心に深い傷を残し、憧れだった「パワースタイル」からの転換を余儀なくさせました。

そこからは自分なりのスタイルを模索する日々。最終的に滞納整理歴は12年という長きにわたり、その過程で試行錯誤の末にたどりついた「臆病者でもそれなりに戦える」方法をまとめたのが本書『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』(学陽書房刊)です。

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『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』の表紙カバー

 出版社の方が「現場のプロがやさしく書いた」と、かっこいいタイトルをつけてくださったのですが、「臆病者がやさしく書かざるを得なかった」というのが実態です(笑)

滞納整理の前に「心」を整理する必要がある

とはいえ、公務員には私のような「争いごとが苦手」な方が多いのではないかと感じています。志望動機に「戦場のような刺激を求めています!」なんてことを書くような人はほぼいないでしょうし、いたとしても採用されるかどうか…。

ところが、滞納整理現場における各種の法律には、滞納者に対して「財産を差し押えなければならない(地方税法第331条第1項)」とか「訴訟手続により履行を請求すること(地方自治法施行令第171条の2第3号)」などと書かれてあります。

「争いごと」の匂いがプンプンするというか、争う気満々じゃないですか。公務員試験で求められる人物像にそんな項目ありました? 聞いてないですよね?

公務員には真面目な方が多いので、滞納整理の現場に配属された時、そうした厳しい対応が求められていることを「頭」では理解するけれど、いざ実際に「行動」を起こすとなると、どうしても躊躇してしまうのではないでしょうか。

少なくとも、私自身はそうでした。「心」がブレーキをかけてしまって、法律が求める通りに対応できない。車で例えるなら、サイドブレーキはしっかりとかかっているのに、アクセルを踏んでいるような状態。そんな状態が続けば、いつか壊れてしまいますよね。

この本では、そうした「心」の部分に寄り添い、「まずはサイドブレーキを外しましょう」とやさしくお伝えする、そんな構成になっています。本書にも書きましたが、私達は滞納を整理する前に、自分自身の「心」を整理する必要があるのです。

職員はロボットではなく感情を持つ人間ですから、ボタンを押せば差押えができるわけではありません。これまでの滞納整理の専門書にはその視点があまりなかったので、そうした精神面をカバーできる内容にするよう心がけました。

自分は「たまたま」出会いに恵まれただけ

今ではこうして本を出版するぐらいに滞納整理という仕事を天職・ライフワークとして捉えることができている私ですが、それは理解ある上司や一緒に汗をかいてくれる同僚、辛い時に励ましてくれる仲間に出会えたおかげです。

また、過去の偉人達が残した素敵な本や言葉も、心の支えとなってくれました。

私は、これらの出会いに「たまたま」恵まれただけで、一歩間違えれば滞納者との厳しいやりとりに心が折れ、現場から離れ、公務員を辞めていた可能性もあります。実際、ストレスで心身の不調を訴える人を何人も見てきましたが、他人事とは思えませんでした。

さらに言うと、私は窓口を挟んで向かい合う滞納者の方にも同じ感覚を抱くことがありました。自分は、たまたま色々なご縁に恵まれたおかげで市の職員として働かせてもらっているけれど、ちょっとしたボタンの掛け違いで、望まない「滞納者」側に回っていた可能性もある。実際、本のコラムでも紹介しましたが、私が大好きで尊敬している父も、過去には思わぬトラブルから、一時期滞納者となっています。

「誰かの人生を好転させる1冊になれば」という祈り

このことは裏を返せば、「たった1冊との出会い」や「たったひとりとの出会い」といった、「ちょっとしたきっかけ」が、その人の人生を変えてしまう可能性もあるということです。

入庁して間もない頃、本当に苦しかった時期の私が本や人との出会いで救われたように、今、滞納整理現場でもがき苦しんでいる誰かにとって、この本がその人の人生を好転させる「一筋の光」になるかもしれない。

おおげさかもしれませんが、その可能性を強く信じて、祈るような気持ちで書きました。

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厳しい現場で汗と涙を流す“仲間たち”の「一筋の光」になれば…

もしも、この記事を読まれた方自身が滞納整理で苦しんでいるなら、ぜひ手にとって頂きたいですし、友人や同僚、後輩がそのような状況に陥っている場合は、教えてあげてください。なんなら、プレゼントしてあげてください。その方も、私も、出版社も喜ぶ三方良しの行動です。きっと、あなたにも良いことが起こるに違いありません!

発売から1ヵ月以上が経ち、おかげ様で

「この本がどれだけの徴収職員を救うことになるのか、非常に楽しみ」

「滞納整理に従事される職員だけでなく、全ての自治体職員に読んでいただきたい1冊」

「公務員とは全く違う仕事をしているが、どんな仕事にも活かせる知識やエッセンスが詰め込まれていて、メモの手が止まらなかった」

といった、有り難いお声を頂戴しています。

滞納整理の現場で働く方はもちろん、それ以外の公務員の方や、公務員以外の方であっても、「その内容を必要とする方に、本書が届きますように」と、今も祈り続けています。

最後までこの記事を読んでくださった皆様には、ぜひ本書が必要な方に届くよう、お力添え頂きたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします!

『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』の目次(抜粋)

1章 まずはこれだけ! 滞納整理のポイント

2章 これで安心! 「納付折衝」徹底対策

3章 滞納を解消! 使えるカードを増やそう

4章 今日から使える! 滞納者対応のテクニック

5章 さらにもう一歩! 滞納整理の極意

6章 ここが知りたい! 実務上のQ&A

滞納整理担当者にオススメのブックガイド

 自治体通信への取材のご依頼はこちら

 

岡元 譲史(おかもと じょうじ)さんのプロフィール

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寝屋川市(大阪)経営企画部 企画四課 課長代理 兼係長

1983年生まれ。2006年に同市入庁後、12年間にわたり、様々な債権の滞納整理に従事し、市税滞納額70%(約25億円)削減に貢献。2020年より現職。

「滞納整理に価値を見出して伝えることで、受講者の不安や葛藤を取り除く」という独自スタイルによる研修を全国で実施し、6年間で延べ3,700人が参加。受講者が給食費の滞納ゼロを達成するなど、すぐに使えて再現性の高いノウハウを伝えている。

執筆に「滞納整理のための空地・空家対策」(『税』2018年2月号)など。

「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2018」受賞。

プライベートでは2男児の父。PTA会長を務めるなど地域の活動も行う。

2021年5月21日に『現場のプロがやさしく書いた自治体の滞納整理術』(学陽書房)を刊行。同書の印税は「全額、寝屋川市の発展のために使う」としている。

<連絡先>okamoto.joji@city.neyagawa.osaka.jp