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「公共木造」の未来~町のビジョンと私自身のビジョン

【自治体通信Online 寄稿記事】従来工法より低コスト~杉戸町の「公共施設木造化」実践ノウハウ⑦(杉戸町職員・渡辺 景己)

「公共木造」の未来~町のビジョンと私自身のビジョン

公共施設の木造化は従来工法と比べてコストが高い―。こうした“常識”を独自の手法で覆し、注目されている杉戸町(埼玉)。その“実践ノウハウ”を公共木造化を推進している同町職員の渡辺 景己さん(建築課 主幹)に公開してもらう本連載の第7回は、大規模施設木造化についての社会環境の変化や今後を官民両側面の動向から展望してもらいます。SDGsの取り組みの一環として、あるいは住民の暮らしの質向上に資する事業として、公共施設木造化という選択肢はその意義と価値を高めています。
【目次】
■ 「大規模木造化プロジェクト」が大きな潮流に
■ 自治体が木造化に取り組む意義と価値
■ 百聞は一見に如かず

「大規模木造化プロジェクト」が大きな潮流に

近年、民間事業者の間ではSDGsの観点などから大規模な木造化プロジェクトが積極的に進められています。

仙台駅東口エリアでの純木造ビル(2021年2月竣工予定)、日本橋での高層木造ビル(2025年竣工予定)、神田での日本初の木造ハイブリッド高層マンション(2021年3月竣工予定)など、多くの木造プロジェクトがゼネコンやデベロッパーからこのところ相次いで発表されています。今後、大規模木造建築は社会的にも高い注目を集めていくでしょう。

仙台駅東口エリアでの純木造ビルの建設現場と完成予想模型。2020年9月の「仙台駅前7階建て木造ビル構造見学会」にて筆者撮影
仙台駅東口エリアでの純木造ビルの建設現場と完成予想模型。2020年9月の「仙台駅前7階建て木造ビル構造見学会」にて筆者撮影

上記のような大型木造プロジェクトが杉戸町みたいな人口5万人弱の小さな自治体の公共施設で頻繁に起きるかと言えば、なかなか厳しいのが現実です。ただ、町内には役場庁舎や小中学校の校舎など上記プロジェクトに次ぐような規模を持った公共施設もあります。

他自治体の事例ですが、長門市(山口)では木造自治体庁舎としては国内最大規模の新市庁舎を2019年8月に竣工されました(下の囲み記事参照)

上記プロジェクトのように公共施設更新の際には木造が選択肢として入ってくるようになると公共木造の可能性は大きく広がります

~長門市 木造市庁舎の概要~
上左写真は2019年2月に行われた「長門市庁舎構造見学会」の模様(筆者撮影)、同右写真は長門市庁舎の内部(提供:長門市)。同市庁舎は木造+RC造のハイブリッド構造で5階建て・延べ面積7,000平方メートル超。1~5階すべてを耐火木造構造としており、1階に用いる梁の2時間耐火部材は国内初の取り組み。すべての木材を地元市産材として適材適所に使用。木架構のあらわし(柱や梁など、構造材が見える状態で仕上げること)やフラットな天井面による快適性の向上を図るとともに、内部仕上げなどの積極的な木質化も図っている。

そのような提案ができるように大規模事例は自主的に施工見学に行ったりして注視しています。おそらく最新の技術及び法規制では、既存の新築物件の9割以上は木造建築に変われる規模であると言われていますので民間プロジェクトもたいへん楽しみにしています。

自治体が木造化に取り組む意義と価値

杉戸町では最近、議会の一般質問でもSDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みが取り上げられています。執行部においても各分野でSDGsに考慮した計画が位置付けられるようになってきています。

私自身は、平成16年に実施された埼玉県の公共施設に対する木造基本方針や埼玉県が実施していた公共木造の研修会等を通して木造公共施設というのは環境にやさしい施設だということを実感できたため、一貫して積極的に推進してきました。

但し、地球温暖化対策や国内の森林資源の有効活用という視点では、杉戸町のような県内でも川下に位置する小規模自治体が単独で公共施設の木造化を図っても効果は限られています。

全国の自治体に当町のような取り組みが広がって行くことで初めて効果的なものになってくると思っています。そのような意味では、取り組みを広めなくてはなりません。

木造率の推移と木促法(公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律)の抜粋
木造率の推移と木促法(公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律)の抜粋

最近では国や県(他府県を含む)、地元の建築系大学から杉戸町の取組みを発表して欲しいと依頼されることがあります。事例発表は、広める意味ではたいへんありがたいことです。そのような場では、公共施設の木造化を積極的にPRさせてもらっています。事例発表を行うことで他自治体でも公共施設の木造化に少しでも関心を持って頂ければ良いのではないかと思っています。

百聞は一見に如かず

また、最近新たなプロジェクトが次々と登場しているCLT(直交集成板、Cross Laminated Timberの略、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着したパネル)は他構造に負けない強度を持っています。そのような良さを理解し、新たに取り組む自治体が増えて行けば、SDGs達成に少しでも貢献できるのではないでしょうか。

国も菅政権が温室効果ガスの2050年の排出目標をゼロに掲げました。環境問題の観点からも公共木造が日本の大きな流れになって欲しいです。

そして公共施設の決定権を持っている方には是非、木造公共施設を見て欲しいです。まさに百聞は一見に如かず、です。天然の素材である木材はあらわしで使用すれば人々を癒す効果があります。是非、実感して欲しいです。
 

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本連載「従来工法より低コスト~杉戸町の『公共施設木造化』実践ノウハウ」のバックナンバー
第1回:林業なき“まち”が証明した「公共木造は低コスト」
第2回:低価格な「“国産”一般流通材」を使うコツ~前編
第3回:低価格な「“国産”一般流通材」を使うコツ~後編
第4回:全体の7割を越える「木構造部分」以外のコストカット法
第5回:「担当者の役割」と「プロポーザルの注意点」
第6回:“10年の経験”から見えた「公共木造化」推進の4要素

渡辺 景己(わたなべ かげき)さんのプロフィール

前橋工科大学建築学科卒。鶴ヶ島市(埼玉)職員を経て、前橋工科大学に入学し建築を学び、杉戸町(同)の職員に。現在、建築課主幹。一級建築士、一級管工事施工管理技士、第二種電気工事士など建築系の幅広い資格を取得。木造については設計・施工ともに経験があり、埼玉県木造建築技術アドバイザーとして他自治体への講師も務める。

<連絡先>
電話: 0480-33-1111 (杉戸町役場)

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