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《庁内研修でも“Jとコラボ”》「Jをつかおう!」を本当に実践してみた~後編

【自治体通信Online 寄稿記事】
社会課題を解決する新しい政策「スポーツ×自治体」#5(宮代町 職員・伊藤 遼平)

前回に引き続き、宮代町がJリーグのクラブ等と実際に取り組んだ事業の詳細を紹介する今回の後編では、同町が行った庁内研修の事例を解説。どのような内容で実施し、スポーツチームと連携することでどんな効果があったのかをお伝えします。

新採用職員育成塾「スポーツ×社会課題解決~シャレン!って知ってる?~」

前回は、コロナ禍に生まれた「社会課題」を解決しようと浦和レッズと試みた事例「浦和レッズハートフルサッカー教室in東武動物公園」を紹介しました。後編の事例は、自治体職員が公共政策(地域)に活かせるスポーツの可能性を学ぶ機会を増やしたいと考えていたため、Jリーグと連携し、宮代町の「研修」にスポーツを掛け算した取組をお伝えします。

◎「スポーツ×社会課題解決」の実践例

宮代町には、「新採用職員育成塾」という若手職員が受ける庁内研修があります。この研修は、各種職員研修や配属先での先輩職員による育成(OJT)を補完するとともに、 職員相互が学びあえる場を設定することで、企画力・行動力の向上、それから組織全体で職員育成を図っていく機運を高めることを目的とした研修です。

◎企画・提案から事業実施まで

新採用職員育成塾は、基本的に先輩職員が講師を務めることとなっています。私は研修講師に手を挙げ、若手職員が「政策立案」の練習も兼ねて「スポーツ×社会課題解決」をテーマに考える研修を提案しました。そこにJリーグ社会連携部からゲスト講師を招き共同開催する道を模索し、以下の案が実現できないか相談しました。

〈研修案〉
  1. スポーツ×社会課題解決(宮代町)
  2. Jリーグ社会連携「シャレン!」について
  3. 若手職員による政策立案ワークショップ

Jリーグでは、常時HP上で、地域と連携するアイデアを募集しています。Jリーグ・Jクラブと一緒にやってみたい事業があれば、エントリーシートに必要事項を記入することで応募ができます。想いを込めて企画書を作成し、思い切って応募したのです。

参照リンク:アイデアを応募する|シャレン! Jリーグ社会連携(jleague.jp) https://www.jleague.jp/sharen/program/

応募後は、Jリーグ担当者から連絡がくるのでやり取りを重ねて、クラブとのマッチングが行われます。今回の研修では、浦和レッズと大宮アルディージャの2つのクラブから社会連携担当、Jリーグ社会連携部の担当者が想いに応えてくれて参加してくれることになりました。
募集内容に対して、詳細イメージの確認や調整、事前打ち合わせなど、快く対応してくれたので、万全の準備を行うことがでました。

〈完成した研修内容〉(カッコ内は講師)
  1. スポーツ×社会課題解決(宮代町・伊藤 遼平)
  2. Jリーグをつかおう! 社会のために(Jリーグ社会連携部・鈴木 順さん)
  3. クラブ事例共有(浦和レッズよりパートナー・ホームタウン本部 ホームタウン社会連携担当・森 俊之さん、大宮アルディージャより事業本部 社会連携担当・小沼 航士さん)
  4. 若手職員による政策立案ワークショップ・発表

◎新たな公民連携「スポーツチーム×自治体」が地域にもたらしたもの

Jクラブとの研修を迎えると、誰よりも自分が一番興奮しました。ホームタウンでない自治体にJリーグ・Jクラブが集い、地域連携から社会課題解決の方法を考える―。こんな贅沢で学びのある研修があるのかと。
若手職員からも事前に「実はファンで、スタジアム通っています」など、喜びの声が聞こえてきました。普段の会議室で行う研修よりも、ワクワクしている様子でした。

宮代町の新採用職員育成塾で使用した教材(左)とJリーグ社会連携部・鈴木 順さんの話に熱心に耳を傾ける同町の新採用職員たち(右)

研修内では、クラブからの事例共有と考え方のヒントを得た後に、所属する課や他部署の課題の共有を行います。次に、班内で社会課題をひとつに絞り、シャレンの応募シートに沿ってスポーツをどのように活用して解決していくか検討を行いました。

〈若手職員が考えたアイデアの一例〉
  • プロ直伝ストレッチ/健康介護事業
  • みやしろLearnRun/郷土資料学習
  • みんなでつくろう!ウォーキングマップ/産業観光事業

新採用職員育成塾では大宮アルディージャと浦和レッズのクラブ事例も共有
◎研修担当者と参加した若手職員の声

元研修担当だった、総務課 庶務職員担当の須原 大輔さん(現教育推進課)に、この研修について聞きました。

▼社会連携活動をテーマにJリーグやクラブとの研修提案を聞いたとき
率直にびっくりしました。Jリーグやクラブと合同で研修する自治体はおそらくないのではないでしょうか。県内の2つの有名なクラブが宮代町に来てくれるということだけでも驚きました。
新採用職員の中には、ワークショップ形式で主体的に話し合うことが初めての職員もいました。また、プロスポーツチームの方々と一緒に「スポーツ」をテーマに話し合うことで、日常の業務では見ることがない新鮮な反応を見ることが出来ました。当日は、どの地域(自治体)でもJリーグやスポーツチームとの連携の可能性を広げる・考えるきっかけとなる研修になったと思います。

▼Jリーグやクラブスタッフの方々の印象は?
Jリーグや浦和レッズ、大宮アルディージャといったスポーツチームの方々が、貴重なお時間を割いて宮代町の研修事業に快く協力してくれたことに感謝しています。その中で、クラブが実践する社会連携活動をご紹介いただき、リーグやクラブとして、地域を大切していくという強い想いを感じました。

この研修に参加したある若手職員は「Jクラブの方と同じチームとなり少し緊張しましたが、試合中に声をかけてくれて日頃から、地域の方々へ温かく接している様子が目に浮かび、緊張はすぐ和らぎました。今回の講義はただの研修としてだけではなく、大切な経験として残しておきたいと思います」と話してくれました。
若手職員も地域が抱える課題に対して、様々なアプローチから効果的な事業を考えて、地域課題を解決していかなければなりません。社会課題解決のアプローチを考える前段階(研修)として、「スポーツ×自治体」「スポーツ×社会課題解決」という、普段考えたことのないテーマに検討を行うことは良い機会になったと思います。

「ボッチャ体験」も実施~スポーツを通じて“気づき”を得る機会に
この研修の最後に「スポーツ×ダイバーシティ」の取り組みとして、ボッチャ体験も行いました。ただ体験を行うだけではなく、職員やクラブスタッフを混ぜたチームを作り、車いすに乗って投げるなど、スポーツを通じた障がい者理解の機会に繋げました。
ボッチャ体験をした職員は「はじめてのボッチャ体験でした。残念ながら今日は全部負けてしまいましたが、とても楽しめました。車いすに乗ったのは小学4年生以来。乗って投げても立って投げても難しさは変わらず、障がいの有無に関わらず楽しめるスポーツだと感じました」と話してくれました。
ボッチャ体験の模様。上智大学 GoBeyond(2020東京オリンピック・パラリンピックをきっかけとして、共生社会の実現を目指し活動しているソフィア オリンピック・パラリンピック プロジェクトの学生プロジェクト)の学生たちがサポートしてくれた

広がる「Jリーグをつかおう!」の波

複数回に渡りJリーグ社会連携活動「シャレン!」についてご紹介してきました。私が紹介する事例以外にも、富山県では地域イベント経由で富山県をホームタウンとするJリーグクラブのカターレ富山と「スポーツ×防災キャンプ」へと発展した事例もあるようです。「Jリーグをつかおう!」は、思うよりも身近にあるのかもしれません。

参照リンク:シャレン活動を通じて見ることができた景色|やしき|note https://note.com/masakatoha/n/nb50727fc45c8

Jリーグが地域と共に歩むシャレン!活動は、社会課題解決のヒントになるのではないでしょうか。私も参考にしていますが、Jリーグのサイト上で過去の事例を無料公開しているので、参考にしてみてください。

参照リンク:2022シャレン!アウォーズ開催決定【Jリーグをつかおう!社会のために。シャレン!Jリーグ社会連携】 (jleague.jp) https://www.jleague.jp/sharen/awards2022/

(続く)

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■ 伊藤 遼平(いとう りょうへい)さんのプロフィール

宮代町(埼玉県)教育推進課 生涯学習・スポーツ振興担当
1991年生まれ。2014年FC東京(東京フットボールクラブ株式会社)へ就職。同クラブバレーボールチームに所属。2017年宮代町へ入庁。2部署目となる子育て支援課で、子育て支援センター・児童館の担当となり、地域の親子イベントにプロスポーツチームや選手と連携した「スポーツ×社会課題解決」型事業を多数企画。「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2021」受賞。
プライベートでは、子育て中のパパ。バレーボールトップリーグのコーチ経験を活かしたイベント講師や「スポーツ×社会課題解決」をテーマにした講演など〈スポーツ系公務員〉として活動を行う。
<連絡先>ito626@town.miyashiro.saitama.jp