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【自治体通信Onlineレポート 2019/03/13】災害時医療・いじめ相談

「使いやすさ」重視のフェーズへ 住民の命を守る情報ネットワーク

地域住民の安全・安心にかかわる自治体情報ネットワークについて、従来の枠組みを超えた開発・整備・運用が進んでいる。先進自治体の具体的な取り組み事例などをまじえ、その背景や現状をレポートした。
【目次】
■ EMISにスマホアプリ化の動き
■ 浜松市がビジネスチャットアプリを選定した理由
■ 「使いやすさ」が命を守る

EMISにスマホアプリ化の動き

災害・いじめといった重大かつ緊急性が高い住民の「命を守る」ための情報ネットワークのあり方が大きく変化しつつある。利用者が技術的あるいは心理的な負担を感じない「スマホアプリ化」だ。

そのひとつがEMIS(広域災害・救急医療情報システム)。EMISは、災害時における被災地内・被災地外における医療機関の活動状況など、災害医療に関わる情報を収集・提供し、被災地域での迅速かつ適切な医療・救護活動を支援することを目的とした広域情報ネットワーク。

平成7年1月17日に発生した阪神淡路大震災における救急医療の混乱を教訓に、災害拠点病院をはじめとした医療機関・医療関係団体・消防機関・保健所・市町村等および国・都道府県の間で構築された災害時医療における重要な情報共有インフラだ。

運用状況は、平成25年度には全国47都道府県の加入が完了し、病院登録率も93%にのぼっている(平成30年度)。平成28年4月14日に発生した熊本地震ではEMISによる情報収集に基づき、1500名を超える病院避難搬送が行われた。

だが、思わぬ課題も浮上している。平成30年7月豪雨、台風第21号、同年北海道胆振東部地震において必要な情報を十分に把握できず、現地確認など時間のかかるアナログな全数調査を余儀なくされたことだ。(下図「EMISの課題と対応案の整理・システムのさらなる操作性向上等」を参照)

出所:厚生労働省、自治体通信Online編集部が加工(記事末「資料出所一覧」の①を参照)

上図にあるように、EMISがうまく機能しなかった原因について厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」は
①システムの操作性が悪いこと
②入力を促すプッシュ型システムとなっていないこと
などを挙げ、EMISのスマホアプリ開発を提言。緊急時だからこそ、特別なリテラシーがなくても使用できる実効性の高い災害時医療情報ネットワークへとバージョンアップする必要性を指摘した。

EMISの部門システムに位置づけられる、自治体における災害時の医療情報共有ネットワークでは、すでにスマホアプリ化の実績がある。

全国に先駆けて“浜松方式”といわれる救急医療体制の先進モデルを構築した浜松市の災害時医療情報ネットワークだ。

参照記事:「使い慣れたITツールの活用が緊急時の情報連携を飛躍的に強める」
https://www.jt-tsushin.jp/interview/jtsp_worksmobile/

浜松市がビジネスチャットアプリを選定した理由

これは、大規模地震発災直後における情報伝達手段の確立を図るため、市内の73ヵ所の応急救護所にスーマトフォンを配備し、医療機関等との間で構築した浜松市独自の情報ネットワーク。

災害時における情報伝達手段の迅速性・正確性を確保することが目的で、市内に所在する病院および産科・透析機関ならびに医療関係団体にビジネスチャットアプリ「LINEWORKS」(※後述)のIDを付与することで情報ネットワークを構築した。(下図「浜松市災害医療ネットワークの連携イメージ」を参照)

出所:浜松市(記事末「資料出所一覧」の②を参照)

「LINEWORKS」とはSNSアプリ「LINE」をベースに開発されたビジネスチャットアプリ。利用者のITリテラシーに左右されることなく、誰でも使いこなせる操作性の高さが特徴。多くのスマホユーザーが利用している「LINE」をベースにしているだけに、緊急時にも“普段使いの延長”の感覚で利用できるという。

浜松市がスマホアプリに着目したのは、操作性の高さだけではない。地震など災害発生時には大量の情報通信が発生するため、電話による音声は通信制限がかかる一方で、文字情報などのパケット通信は制限がかかりにくいからだ。

また、関係者が同時に利用する性質上、グルーピング機能と導入のしやすさは必須条件でもあった。これら種々の条件に合致したのが「LINEWORKS」だった。

利用者の心理的ハードルは低いという利点を活かし、災害時の情報ネットワーク以外の分野でもSNSアプリの利活用が開始されている。

参照記事:「ビジネスチャットは職員の働き方を変え住民サービスの向上にもつながる」
https://www.jt-tsushin.jp/interview/jtsp_worksmobile/2/

「使いやすさ」が命を守る

そのひとつがSNSを使った「いじめ相談窓口」だ。主に高校生までを対象にしたSNS相談は、平成29年に長野県が初めて「LINE」を使った相談を実施して以降、全国に急速に広まっている。従来、自治体は専用電話でいじめ相談などを受け付けていたが、SNS相談を開始すると一挙に相談件数が10倍以上になるケースが続発したからだ。

学校で登録用QRコードと利用案内のプリントを配布し、友だち登録すればすぐに利用できる。電話では相談しにくいことも、SNSなら気軽に相談できることが、専用電話に比べて相談件数が大幅に増える理由のようだ。(下図「SNS相談の仕組みの一例~大阪市のSNSを活用した、いじめ等相談の流れ」を参照)

出所:大阪市(記事末「資料出所一覧」の③を参照)

平成30年度にSNS相談を実施した自治体では実証実験として位置づけで期間限定のケースが多かったが、平成31年度から通年運用することを決めている自治体もある。SNSを活用した相談体制の構築については、文科省も平成30年度に初めて予算措置を行い、後押ししている。

災害時医療情報ネットワークと“いじめ相談”。領域が異なる分野で同時進行しているスマホアプリ化の動きはけして偶然ではないだろう。多様な住民に寄り添った「使いやすさの追求」が、あらゆる分野における機動的で実効性の高い行政対応を実現する際の重要なキーワードになることを象徴しているのかもしれない。

【資料出所一覧】
厚生労働省「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)を活用した情報収集体制の強化について」
浜松市「平成30年度当初予算の主要事業(46)」
大阪市「SNSを活用した、いじめ等相談の流れ」


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