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【自治体通信Onlineレポート 2019/04/01】自立型電源確保という国土強靭化

地域の「防災拠点」の共通課題“ブラックアウト対策”

災害対策本部が設置される「自治体庁舎」、指定避難所となっている「学校」、緊急車両基地や孤立した避難民の受け皿などとなる「道の駅」―。大規模災害発生時に地域の安全・安心を守るこれら3つの重要インフラの“強靭化”に、ひとつの共通課題がある。想定される大規模停電に備えた「非常時の自立型電源確保」だ。その状況、今後の展望などをレポートした。
【目次】
■ 北海道胆振東部地震では“ブラックアウト”も発生
■ 「72時間」に未対応の市町村が半数以上
■ 「避難所のスマホ充電」に高い住民ニーズ
■ 避難所に指定されている学校の状況
■ 「平時も使える」が鍵

北海道胆振東部地震では“ブラックアウト”も発生

巨大地震などの自然災害によって電気・ガス・水道といったライフラインが損壊した際、もっとも復旧が速いのは電力とされる。それでも、過去の大規模災害を振り返ると、人命救助の緊急対応で重要視される「72時間の壁」を越えて電力供給がストップする事態は十分に想定される。

・東日本大震災(平成23年3月11日)~ほぼ1週間
・熊本地震(平成28年4月14日)~5日
・北海道胆振(いぶり)東部地震(平成30年9月6日)~2日

上記はそれぞれの巨大地震で停電が発生した後、通電再開までに要した日数だ(カッコ内は地震発生日)。

このうち北海道胆振東部地震のケースは発送電システム停止よる北海道全域での一斉停電、いわゆる“ブラックアウト”の発生から通電が再開するまでの日数。震源地に近い、厚真町、鵡川(むかわ)町、安平町の3自治体では、電柱倒壊などの甚大な被害発生により、停電の完全解消まで約1ヵ月近くを要した。

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「72時間」に未対応の市町村が半数以上

巨大災害発生時における自立型電源の役割、意味は重い。たとえば、救助・復旧など、地域の被災現場の“総指揮”をとり、国や関係機関などとの連絡・調整などにあたる災害対策本部が設置される自治体庁舎がブラックアウトに陥った場合、業務継続性が危ぶまれ、相当な混乱が起きかねないことは容易に想像できる。

そのため国は災害対策基本法に基づく防災基本計画のなかで、防災中枢機能を果たす自治体庁舎や指定避難場所、災害拠点病院などの施設などについて「代替エネルギーシステムの活用を含め自家発電設備等の整備を図り、十分な期間の発電が可能となる」ような準備を各自治体に呼びかけている。

太字部分の「十分な期間の発電」について、内閣府(防災担当)の「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続手引き」(平成28年2月)はふたつの具体的な時間・期間を提示している。ひとつは、外部からの供給なしで非常用電源を稼働させる時間として「人命救助の観点から重要な『72時間』」。もうひとつは、災害対応に支障がでないよう「停電の長期化に備え、『1週間程度』」といった期間だ。

しかし現状は、総務省消防庁の調査によると、非常用電源設置済みの自治体1,597団体のうち、半数以上の970団体で稼働可能時間が72時間未満にとどまっている(平成30年6月1日現在の状況)。(下グラフ「非常用電源の設置状況」および「非常用電源の使用可能時間」を参照)

出所:総務省消防庁、自治体通信Online編集部が加工(記事末「資料出所一覧」の①を参照)

こうした調査結果を受け、総務省消防庁は「地方公共団体の業務継続性確保のための非常用電源の整備について」(消防災第181号、平成30年11月)で各都道府県に「防災・減災・国土強靱化のための緊急対策を3年集中で講じることとしており、この緊急対策の中に、地方公共団体の非常用電源の整備やその稼働時間の確保も盛り込まれる」と前置きしつつ、非常用電源の整備やその稼働時間の確保について「各地方公共団体の取組を強く促していく」と通知している。

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「避難所のスマホ充電」に高い住民ニーズ

避難所においては、スマートフォン(以下、スマホ)や携帯電話の充電に対する住民ニーズが高まっているのも近年の特徴だ。

国が一般市民を対象に避難所環境ニーズをアンケート調査したところ、飲料水、食料、トイレといった生命維持や衛生環境にかかわる項目に次いで、冷暖房やスマホなどの充電といった非常用電源にかかわる項目についての関心が上位に入っている。(下グラフ「最低限の避難所環境ニーズ」参照)

出所:内閣府(防災担当)、自治体通信Online編集部が上位6項目を抽出し、加工(記事末「資料出所一覧」の②を参照)

その背景には、家族や知人、職場などとスマホなどで安否確認などの緊急連絡を取り合うほか、災害・復旧などの状況も従来のテレビ・ラジオ・防災無線ではなく、スマホでインターネットから情報収集する人が多くなっていることがありそうだ。

突然の災害という逼迫した事態だからこそ、スマホなどは個人の“情報インフラ”として不可欠なものなっているのだ。それだけに、停電が長引いても避難所においてスマホなどの充電ができるかどうかは、住民の安全・安心を守るうえで重要な意味がありそうだ。

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避難所に指定されている学校の状況

それでは、避難所の非常用電源の状況はどうか。代表例として、ほとんどの自治体が避難所に指定しているは学校(小・中・高)における状況を振り返ってみる。

文部科学省の調査によれば、自家発電設備(可搬発電機を含む)や災害時に使用可能な太陽光発電設備、蓄電池のほか、民間事業者等との協定等により発電機を優先的に使用できるケースを含み、避難所に指定されている学校で非常用電源を確保しているのは、全体のおよそ半数という結果になっている。(下表「避難所に指定されている学校の防災機能の保有状況」を参照)

出所:文部科学省、自治体通信Online編集部が加工(記事末「資料出所一覧」の③を参照)

自治体庁舎と避難所に指定されている学校の非常時における自立型電源確保は、現状を振り返る限り、課題解決に向けて一層の取り組みが必要とされているようだ。

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「平時も使える」が鍵

意外な場所でも災害に備えた非常用電源の設置ニーズが高い。「道の駅」だ。

東日本大震災では、ホテルなどの宿泊施設を出て観光地などにいた県外の被災者や近隣に避難所がないなど孤立した被災者が「道の駅」に緊急避難するケースが多かったとされる。救助や復旧のための緊急車両基地として「道の駅」の駐車場などが活用されたケースも多くあった。

そのため、東日本大震災以降、防災拠点としての「道の駅」の機能や設備の整備が進められているところだ。

では「道の駅」における非常用電源の設置状況などはどうか。全体像をイメージするデータとして、平成28年8月に総務省東北管区行政評価局が総務省青森行政評価事務所及び同山形事務所と共同で、宮城、青森、山形の3県内にある「道の駅」全57駅と、岩手、秋田、福島県内で災害時に防災機能を発揮した13駅の合計70駅による防災機能向上の取組状況についての調査がある。

この調査によると、非常用電源の設置状況は、宮城など3県内57駅のうち、45.6%(26駅)と半数に届いていないという結果だった。一方で非常用電源の設置について「必要だ」との声が90%を超えた。(下グラフ「防災設備の整備の意向と実績」を参照)

出所:総務省東北管区行政評価局、自治体通信Online編集部が加工(記事末「資料出所一覧」の④を参照)

さまざまな防災拠点における非常用電源の設置状況に課題が残されている原因のひとつに、燃料の保存と自家発電機のメンテナンスの負担の問題があるとされる。

自家発電機の燃料は軽油や重油がメインだが、劣化の問題があり、定期的に入れ替える必要があるほか、発電機は年1回の点検が義務づけられている。

こうした負担を軽減するため、たとえば平時においては電力のピークカット電源として、あるいは電気自動車(EV)の電力供給ステーションとして稼働しつつ、非常時には自立型電源として機能するシステムも民間で開発されており、工場やオフィスビル、商業施設などで普及が進んでいる。(下図「非常時はEV・PHVが移動電源として、電力供給の役割を果たす」を参照)

出所:自治体通信Online(記事末「資料出所一覧」の⑤を参照)

従来の「非常時に使用する」ことを念頭に置いた対策だけではなく、「平時に利用できて負担が軽減され、災害時には非常用の自立型電源として使用する」という、2方向からのアプローチが可能な2wayの柔軟な考え方が、突発する自然災害に備えた重要な視点になりそうだ。

【資料出所一覧】
総務省消防庁「地方公共団体における業務継続性確保のための非常用電源に関する調査結果」
内閣府(防災担当)「指定避難所等における良好な生活環境を確保するための推進策検討調査報告書」
文部科学省「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果について」別紙
総務省東北管区行政評価局「『道の駅』の防災機能の向上に関する調査の結果」(報道資料)
自治体通信Online「車を活用した移動電源の確保で災害時の避難所生活を守る」


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