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時代がいかに変われども目指すは、県民生活における「安心・活力・発展」

約20年の県政運営で貫いてきた大分県づくりの理念

時代がいかに変われども目指すは、県民生活における「安心・活力・発展」

大分県知事 広瀬 勝貞

※下記は自治体通信 Vol.44(2022年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


「新型コロナ」という未曾有の危機対応をめぐっては、知事のリーダーシップがクローズアップされたが、コロナ後を見すえた独自の地方創生策においても、知事のリーダーシップには引き続き、注目が集まることになろう。そうしたなか、大分県では、現在の47人の都道府県知事のうち最長の在任期間となる知事の広瀬氏が、就任以来一貫した理念で県政運営を続けている。その施策の内容や成果、今後の県政ビジョンなどについて、同氏に聞いた。

「安心」実現に向けて目指す、3つの「日本一」

―5期目の最終年を迎えている今、もっとも力を入れていることはなんですか。

 私は、約20年の県政運営において、一貫して政策の柱に据えてきたキーワードがあります。それは「安心・活力・発展」の大分県です。県民に安全・安心な暮らしを提供すること。仕事を通じて知恵と努力が報われる、活力ある県であること。そして、人を育み基盤を整え発展する大分県の実現。政策の具体的な内容や重点は時代とともに変わりながらも、目指すべきはつねにこの3つであったことは変わりません。そのなかでまず、「安心」については、3つの「日本一」の達成を通じて、これを実現していく方針を掲げています。

―3つの「日本一」とは、具体的になんですか。

 「子育て満足度日本一」「健康寿命日本一」「障がい者雇用率日本一」の3つです。「子育て満足度日本一」に関しては、待機児童の解消を実現した当県では、お子さんが病気になった時の医療費の支援に加え、現在「病児保育制度」の充実を進めています。仕事を休まなくても預けられる病児保育施設の増設、県下全域での施設検索体制の整備などを進め、県民のみなさんから評価をいただいています。

 「健康寿命日本一」については、この間の地道な施策の結果、昨年公表の全国調査で男性が1位、女性が4位を獲得しています。じつは、これには秘策がありました。

―どのような秘策でしょう。

 当県の場合、これまで高齢者への対策を重点的に進めてきましたが、働く世代への対策を強化することが、健康寿命延伸に有効だとの分析結果が出たのです。そこで、健康経営事業所制度を創設し、企業と一体となった従業員の健康増進に力を入れてきたのです。

 そして、「障がい者雇用率日本一」については、当県は伝統的に身体障がい者雇用に力を入れており、雇用率日本一を続けてきた歴史があります。現在は、さまざまな障がいのある方々への支援を強化し、日本一を奪還しようと意欲的に取り組んでいます。

企業誘致では過去最高実績。米国の宇宙関連企業とも連携

―第2のキーワードである「活力」については、どのような政策を進めているのでしょう。

 この「活力」の観点では、やはり仕事を通じた自己実現を追求していくことが重要で、そのために就任以来、企業誘致に力を入れてきた経緯があります。私はよく「集積が集積を呼ぶ」と言うのですが、その発想のもと戦略的な誘致活動を進めてきた結果、自動車産業や半導体産業では、全国有数の厚い産業基盤を構築してきました。その帰結として、図らずも直近の令和3年度は、コロナ禍にもかかわらず、過去最多の誘致件数を実現することができました。

 ただし、「第4次産業革命」とも称される現在、技術の進歩は目覚ましく、旧態依然と誘致件数を追うだけでは将来の発展を支える産業集積はかないません。そこで当県では今、ドローンやアバターといった先端技術産業の誘致にも力を入れているところです。なかでも、宇宙産業の分野では近年、大きな成果があがっています。

―米国の宇宙関連企業とのパートナーシップ締結は、注目を集めました。

 航空機を利用した小型人工衛星打ち上げ事業を展開するヴァージン・オービット社とは2年前に、地球と宇宙ステーションの間を往復する新型の宇宙往還機を開発しているシエラ・スペース社および兼松とは今年2月に、パートナーシップを発表しました。画期的な新技術で宇宙開発に革新をもたらすこれらの企業は、いずれも大分空港をアジアにおける拠点にしようとしています。その決断の決め手となったのは、3,000mの大型滑走路をもつ大分空港の存在がもっとも大きいのですが、それに加えて、当県が誇る観光産業の基盤、さらには、この間当県が築いてきた産業集積の厚みがあったことは、両社が同じく指摘しているところです。

ふくらむ将来への夢。若者世代の人材育成にも弾み

―まさに、集積が集積を呼んでいるようですね。

 ええ。宇宙産業は2050年に約1兆8,000億ドルの市場に成長するとの試算もあります。時代とともに変遷してきた産業の歴史を考えれば、これからの時代の当県の主力産業に成長するのではないかと県民の夢がふくらんでいます。そんな想いが広がり、県内各地で新たな動きを生んでいます。たとえば、同じヴァージン・オービット社の拠点というつながりで、大分空港の近隣にある国東高校の生徒と英国コーンウォールの生徒との間で草の根の国際交流が生まれています。その動きに負けじと、国東高校に「宇宙コース」を新設し、将来の宇宙産業を担う人材育成を本格化させることも決めています。こうした若者世代の人材育成は、私が掲げる3つ目のキーワードである「発展」の核心をなす重要な要素でもあります。

自ら最高責任者として、庁内のデジタル変革を主導

―詳しく教えてください。

 「発展」という観点で、当県がいまもっとも力を入れているのは、デジタル変革を伴った人材育成にほかなりません。そのために、情報系学科の新設や、「STEAM教育」のような新しい教育を推進し、次世代人材を育成するための環境整備に取り組んでいます。それらの取り組みの基盤となるのが、社会全体の「デジタル変革」の動きです。この動きをけん引するために、まずは県庁内のDXを強力に進めようと考えており、最高責任者の私自身が庁内の「CXO*1」に就任し、DX推進の指揮を執っています。単なる行政の合理化にとどまらず、社会の仕組みそのものを変えられるように構想のデザイン設計から関与し、利用者目線のDX実現を主導していく考えです。

―最後に、今後の県政ビジョンを聞かせてください。

 「安心・活力・発展」を一貫して追求してきた結果、県政発展を導く多くのポテンシャルが育ってきました。今後、これらを花開かせるには、効果的な政策の力が問われます。「政策県庁」と呼ばれるに相応しい政策立案力に磨きをかけ、県民中心の県政をより一層進めていきたいと考えています。

広瀬 勝貞 (ひろせ かつさだ) プロフィール
昭和41年、東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。中小企業庁計画部長、内閣総理大臣秘書官、貿易局長、機械情報産業局長などを経て、平成11年に事務次官に就任。平成13年に経済産業事務次官となり、平成14年に同省退官。平成15年4月に大分県知事に当選。現在、5期目。

*1:※CXO  :Chief Transformation Officerの意