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独自の感染症対策の先に描く「島根創生計画」を加速

人口減少に打ち勝ち、県民が豊かに暮らし続けられる未来へ

人口減少に打ち勝ち、県民が豊かに暮らし続けられる未来へ

独自の感染症対策の先に描く「島根創生計画」を加速

人口減少に打ち勝ち、県民が豊かに暮らし続けられる未来へ

島根県知事 丸山 達也

※下記は自治体通信 Vol.36(2022年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


2年以上にわたって全国を覆ったコロナ禍の混乱から、いま一時的に落ち着きを取り戻そうとしているなか、各自治体ではそれぞれの課題を前にした独自の地方創生の動きが再び本格化しようとしている。島根県では、「島根創生計画」のもと、長く課題とされてきた「人口減少問題」に向き合い、持続可能な県民生活の実現を掲げている。取り組みの詳細や、そこでの知事としての役割などについて、同県知事の丸山氏に話を聞いた。
(インタビューは令和3年11月25日に行いました)

県の実情に合わせた対策で「新型コロナ」を封じ込め

―いま全国的に新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せています。島根県の状況はいかがですか。

 この間、全国的に見れば大変少ない感染者数で抑えることができています。本県では、早くから民間の設備も積極的に活用することで、PCR検査の対象者を濃厚接触者のみに絞ることなく、感染者周辺で幅広く実施してきた経緯があります。実際、県内の大学で1人の感染が確認された際には、学生や職員など700人規模のPCR検査を実施しました。結果的にそこでの感染確認はゼロでしたが、このように感染状況を早期にキャッチし、感染拡大の抑制を徹底してきたことが、島根県の特徴であったと考えています。

―検査実施に対する住民の理解が得られず、苦労していた自治体も多かったようですが。

 匿名性の高い社会構造の大都市とは違い、本県の場合は、周囲に対する影響を考慮した県民のみなさんが、迅速な検査の実施に協力してくださいました。幅広くPCR検査を実施する方針に対して、一部からは「検査費用がムダになる」といった批判もありました。しかし、感染が拡大し、行動自粛で経済活動を止めることに比べれば、「よほど経済合理性がある」というのが、当初からの県の方針でした。もちろん、これらの取り組みは島根県の人口や当時の感染規模だったからできたことではありますが、県の実情に合わせた対策を打ち出せたからこそ、県民の協力を得られたのではないでしょうか。

人口減少への危機感を背景に「島根創生計画」を推進

―「コロナ後」を見据えて、現在もっとも力を入れている重要課題はなんでしょう。

 平成31年の知事就任後、1年をかけてじっくり議論してつくり上げた5ヵ年の総合計画「島根創生計画」の推進です。現在人口約67万人を数える本県は、高度経済成長期以降、一貫して人口減少に苦しんできた経緯があります。3つの柱と8つの基本目標からなる「島根創生計画」も、人口減少に対する問題意識が最大の背景になっています。

 とは言え、最盛期の昭和30年代の県民人口が約90万人と、もともと人口規模が小さい本県の場合、人口を倍増させるといった過大な目標は必要ありません。人口を安定的に推移させるための前提条件として、まずは合計特殊出生率を現在の1.69から2035年に2.07へ、人口の社会移動を2030年に±0へと均衡させることを目標に掲げています。

―そこに向けて、具体的にどのような政策を掲げているのですか。

 島根県に生まれた若者には県内に残ってもらい、県外の若者には移住・定住を働きかけることで「若い世代の人口を増やす」こと。同時に、子育て環境を充実させて島根に「生まれてくる子どもの数を増やす」こと。おもにこの両軸の施策が必要だと考えています。

 前者においては、「産業政策」によって県内企業の活力を高め、働く場の数や種類を増やし、魅力を高めるための支援に力を入れます。また、昨今のコロナ禍で企業の一部機能を地方に移転する動きがありますが、これもひとつの追い風にして、島根の良さを理解される方々に来ていただきたい。そのためには、交通網をはじめとした、さらなる「インフラ整備」も必要です。高速道路の未整備区間の開通も急がなければなりません。

人口減少に歯止めをかけ、活力ある社会を実現へ

―後者の「子どもを増やす」政策についてはいかがですか。

 「子育て環境の充実」をめぐっては、平成30年度以降、基本的には4月時点の保育所の待機児童ゼロを実現しているほか、私が知事に就任してからは小学6年生までの児童の医療費負担軽減を県内全市町村で実現しています。現在は、小学生を対象とした放課後児童クラブの定員拡充、時間延長といった環境整備を進め、保護者の子育てと仕事の両立を支援しています。こうした取り組みによって、すでに沖縄県に次ぐ全国2位の水準にある本県の合計特殊出生率をさらに引き上げることで、人口減少に歯止めをかけ、生産年齢人口の比率が高い、活力ある社会を実現できると考えています。

 これらの若い世代への取り組みのほか、離島や中山間地域における生活機能の確保もくわえた4つの政策を人口減少対策の柱と位置づけ、重点的な予算措置を講じていきます。

県民全体の福祉という視点で、時には毅然たる発信も大事

―いずれの政策でも、いかに島根県の魅力を発信していくかが成功のカギになりそうですね。

 そう考えています。これまでは交通インフラをはじめとする大都市圏の利便性と比較し、どうしても島根県の「不便さ」が指摘されることがありました。しかし、そこで言う便利さ・不便さとは、壮健な若者の視点を基準にした価値観だと思うのです。島根県の子育て環境は充実しており、住宅事情は良い。たとえ公共交通機関が少ないとしても、県内どこでも自動車で移動でき、駐車場に困ることはありません。人生のライフサイクル全体を考えた場合の「住みやすさ」では、島根県には、アドバンテージがあると考えています。こうした島根県の魅力を、まずは県内の若者に再認識してもらうこと。そのための情報発信は、知事としての私の役割だと思っています。

―特にコロナ禍の昨今は、都道府県知事のリーダーシップについては注目が集まっていますね。

 本来、島根県の県民性は謙虚で控えめ。長期的な関係性を重視するため、事を荒立てない。しかし、多くの情報があふれる現代は、ある程度強いアピールをしなければ注目してもらえない局面もあります。必要なアピールを県外に行うことは、私が担うべき役割だと思っています。そのひとつの典型が、昨年の東京五輪の聖火リレーをめぐる「中止検討」の表明でした。本来の県民性からは外れる振る舞いだったかもしれませんが、県民の生活を守るために必要な場合には、今後も毅然たる発信をしていくことも大事だと考えています。

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丸山 達也 (まるやま たつや) プロフィール
昭和45年、福岡県生まれ。平成4年、東京大学法学部卒業後、自治省(現:総務省)に入省。総務省自治財政局交付税課課長補佐、飯田市(長野県)副市長、総務省情報流通行政局地域放送推進室長などを経て、平成25年4月に島根県環境生活部長に就任。その後、島根県政策企画局長、総務省消防庁国民保護室長、地方公共団体金融機構地方支援部長などを歴任し、平成30年12月に総務省を退職。平成31年4月に島根県知事に就任し、現在1期目。
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