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元気で明るい家庭を築ける環境整備、それが目指す「まちづくりの原点」です

地域の特徴を活かして描く将来のまちの姿とは

元気で明るい家庭を築ける環境整備、それが目指す「まちづくりの原点」です

野田市長 鈴木 有

※下記は自治体通信35号(Vol.35・2022年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

日本全国の自治体が、それぞれの特徴を活かしたまちづくりを進めている。たとえば野田市(千葉県)では、豊かな自然環境を活かし、コウノトリをシンボルとした自然再生のまちづくりに着手している。市長の鈴木氏は、まちづくりの原点について、「住民に元気で明るい家庭を築いてもらうこと」だと語り、「一つひとつの家庭の幸せが、まちに活力を生み出す源泉になる」と捉えている。野田市では、まちづくりと家庭の幸せをどう結びつけているのか。鈴木氏に詳しく聞いた。

野田市長
鈴木 有 すずき ゆう

首都圏近郊にありながら残る「豊かな自然環境」を活かす

―野田市では、コウノトリをシンボルとした自然再生のまちづくりを進めていますね。

 はい。持続可能な地域づくりに向けて、「地域経済の発展」と「自然環境の保護」は両輪の関係ですが、特に首都圏エリアでは、都市化の進行で自然環境が壊され続けています。その解決策として当市は、「自然と共生する地域づくり」に取り組んでおり、その中心的活動が、国の特別天然記念物であるコウノトリの飼育・放鳥活動です。平成24年度から開始しており、「コウノトリが生息できるくらい、人間にとっても安心・安全な環境が野田市には広がっている」といった評価を、多方面からいただいています。

 ただし、コウノトリの飼育自体は目的ではありません。たとえば、コウノトリの餌場となる水田では、農薬や化学肥料を極力使わないお米づくりに市全体で取り組んでいます。今では水田から姿を消していた生物も戻り始め、生物多様性の再生につなげられています。

―野田市では、なぜこうした取り組みを行っているのでしょう。

 首都圏近郊にありながら、豊かな自然環境が残っている当市の特徴を活かしたまちづくりを進めるためです。私には、まちづくりとは、「住民に元気で明るい家庭を築いてもらうために推進するもの」という信念があり、まちづくりの原点として考えています。まちが持つ特徴は、住民に元気で明るい家庭を築いてもらうための資源であり、それを実現する手段として、豊かな自然環境を活かしたまちづくりがあると考えているのです。

 当市では豊かな自然環境のほかにも、地域にあるさまざまな特徴を活かしたまちづくりを進めており、「元気で明るい家庭を築けるまち」として、住民から「いつまでも住み続けたい」と思ってもらえる自治体になることを目指しています。

「しょうゆのまち」として、一大産業を築き上げた歴史

―まちづくりに活かす特徴とは、どのようなものですか。

 たとえば、東京都心から30 km圏に位置する交通利便性の高さ。この特徴を活かして、現在、東京と当市を直接結ぶ鉄道として「地下鉄8号線」の誘致活動に市をあげて取り組んでいます。新たな人の流れを生み出す新鉄道は、まちの経済を活性化させる起爆剤になるでしょう。また、当市最北端は、かつて徳川家康の弟である松平康元を初代藩主に迎え入れた関宿城の城下町であり、内閣総理大臣として日本を終戦に導いた鈴木貫太郎翁が、幼少期と最晩年を過ごした地でもあります。

 さらに中央地区には、江戸の食文化を支える「しょうゆのまち」として発展し、一大産業を築き上げてきた産業都市としての歴史もあります。これに由来する歴史的建造物も多数あり、豊富な文化遺産や観光資源は、住民にとって誇りとなりうるまちの大きな特徴としてあげられます。

 そのほかにも、スポーツを通じたまちづくりに注力しており、江戸川や利根川のサイクリングロードの活用をはじめ、自然環境を活かしたスポーツイベントも多数開催し、住民が健康的に楽しめるまちとしての特徴も備えています。

住民の感受性を、豊かにするまちづくり

―地域の特徴を活かしたまちづくりを進めるにあたり、大切にしていることはなんですか。

 私は、「まちづくりは人づくり」という考えを大切にするようにしています。もう少しわかりやすく言えば、「まちづくりを通じて、住民の感受性を豊かにできる」ということです。

 たとえば、豊かな自然環境を活かしたまちづくりのなかで、生物多様性の維持がいかに大変なことであるかの理解が住民の間で進みます。そうなると、豊かな暮らしを守っていくためにも、自然と共存する生活スタイルを考えるようになるでしょう。また、先人たちがたゆまぬ努力で築き上げた歴史や文化に接すれば、地域に誇りと愛着を感じてくれるようになるはず。そしてスポーツについては、肉体的・精神的な鍛錬だけでなく、裏方として支えてくれるさまざまな人との係わりを学ぶことで、人間力を磨くことにつながります。私は、そういった豊かな感受性を持つ一人ひとりの住民が築き上げる、元気で明るい家庭こそが、まちに活力を生み出す源泉になると考えています。

未来を担う子どもの意見にも、耳を傾ける

―鈴木さんが、行政を推進していくうえで重視していることを教えてください。

 まちづくりにもつながることではありますが、住民の意見をしっかりと聞くことです。私たち行政側が思い描く姿があったとしても、それが正しいかどうかはわかりません。それを決めるのは、住民ですから。それぞれの地域の魅力や課題は、そこに住む住民が一番わかっています。その意見を汲むことで、私たちは行政を的確に推進することができ、逆に住民にとっては、自分の意見が反映されることで、まちづくりへの参画意識がさらに高まるでしょう。

 この姿勢はなにも、現役世代に対するものだけではありません。たとえば私は、平成29年度からすべての公立小中学校を訪問し、子どもたちと意見交換をする「市長と話そう集会」を実施しています。さらに、その場ではなかなか言葉にできなかった子どもの考えも聞こうと、手紙を通じた意見交換も行っています。未来を担う子どもたちが今何を考え、何を望んでいるのか。素直な意見を聞く貴重な機会だと捉えており、それをこれからのまちづくりに反映させたいと考えています。

―今後のまちづくりに対するビジョンを聞かせてください。

 これまでお話しした通り、当市には豊かな自然環境があり、地域経済のさらなる発展を期待できる交通利便性や観光資源もあります。それを活かしたまちづくりを今後も進めていきますが、最終的なゴールは、一つひとつの家庭が幸せになることだと私は考えており、そのために、まちはあるものだと思っています。「元気で明るい家庭を築ける野田市」に向けて、「ひと」と「まち」に活気がみなぎるまちづくりを、住民のみなさんと一緒に推進していきたいですね。

鈴木 有 (すずき ゆう) プロフィール
昭和31年、千葉県野田市生まれ。昭和55年、拓殖大学政経学部卒業。平成6年、野田市議会議員に当選し、平成19年、野田市議会議長に就任。平成28年、野田市長に就任し、現在2期目。