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「新型コロナ対策」を徹底しつつ、栃木県がもつ魅力を発信していく

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「とちぎ未来創造プラン」を基本方針とした行政づくりにまい進

「新型コロナ対策」を徹底しつつ、栃木県がもつ魅力を発信していく

栃木県知事 福田 富一

※下記は自治体通信 Vol.31(2021年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


新型コロナウイルスの感染拡大により、観光産業は全国的に大きな打撃を受けている。そんな先行きが見えないなかでも、各自治体は新型コロナ対策を主眼に置きつつ、「ウィズコロナ」を見すえたPR戦略を行っている。栃木県においても、5期目を迎えた知事の福田氏のもと、同県の魅力を発信するための取り組みが進められている。同氏に、新型コロナ対策も含めて詳細を聞いた。
(インタビューは4月15日に行われました)

クラスターを防ぐため、ポイントを絞った対策を

―栃木県では、どのような新型コロナウイルス感染症対策を行っているのでしょう。

 たとえば栃木県では、令和3年1月5日から12日までの期間で、約1,000人と県内でもっとも多くの陽性者が確認され、この時期にクラスターが多数発生しました。そこで、感染拡大の状況を把握するため、特に発生リスク、重症化リスクの高い、高齢者施設、障害者施設、精神科病院の全職員を対象に、2月から3月にかけて検査を実施しました。結果、約2万7,000人中、陽性者は1人でした。その時期は、1月のピークを過ぎていたのかもしれませんが、職員には広まっていなかったのです。ただし、今後もクラスターには気をつけなければなりません。そのため、先ほどの3施設を中心に、感染状況に応じて、施設でのクラスターが発生した地域など、ポイントを絞って効率的な検査を行おうと考えています。

―そのほかに取り組んでいることはありますか。

 国と共同で、無症状者に対し、検査キットによるモニタリング検査を実施しています。企業や大学といった団体にお願いする方法と、駅前や通りなどで検査キットを住民にお渡しする方法の2面作戦を実行しています。現在、開始して7週目で約4,000人に検査キットを配布し、こちらも陽性者は1人という状況です。

 そのほか、県が管理する保健環境センターで陽性者の検体をゲノム解析し、変異株の型や割合を県独自で把握しようという取り組み。さらに、これまで自己申告制だった飲食店の感染予防対策を、県が基準を設けてチェックする認証制度に移行するなどの取り組みを行っています。こうした施策により、今後も気を緩めることなく先手の対策を行っていきます。

国内だけにとどまらない、栃木県の効果的なPR

―コロナ禍で観光産業は全国的に大きなダメージを受けています。「ウィズコロナ」を見すえた、栃木県の魅力を発信する新たな取り組みを教えてください。

 デジタルマーケティングを昨年度から導入し、国内・インバウンド向けに栃木県をPRする動画の作成・配信に取り組んでいます。残念ながら現時点では外国人観光客の誘客は望めませんが、情報発信は継続し、人の往来が活発化するようになったとき、「日本の栃木に行ってみたい」と思われる仕かけづくりは行っていきます。

 それに関連しますが、今年度から世界的な広告企業の日本法人であるキネッソジャパンの小林圭介氏を、栃木県のCMO*1としてお迎えしました。同氏には昨年4月から、マーケティングやデジタル技術に基づくアドバイスをしていただいてきました。こうした小林氏の実績や人脈が、国内だけにとどまらない、効果的なPR活動につながればと考えているのです。

 また、栃木県の魅力を伝えるという観点では、以前からですが別の取り組みも行っています。

―詳しく教えてください。

 「フードバレーとちぎ」という取り組みです。リーマン・ショック直後は、モノが売れなくなりましたよね。栃木県は、第二次産業が盛んなものづくり県でもあるため、不況の影響を受けない県をつくっていくにはどうすればいいかを考えたとき、人は不況でも飲食はする。だから、食品関連産業を振興していこうと。そこで、平成22年にフードバレーとちぎ推進協議会を立ち上げたのです。

 田畑で採れたものをそのまま売るのも大事ですが、フードバレーとちぎではそれらを加工することで、新しい食品の魅力を発信していこうと。たとえば、餃子をふりかけにしてごはんにかけて食べるようにしたり、近年では規格外のいちごを乾燥させてフレーバー状にして紅茶にしたり。まだまだ発展途上ですが、これから大いに期待ができる分野だと思います。

魅力度最下位を逆手にとった、期間限定プロジェクト

―その一方、昨年は「都道府県魅力度ランキング」で、栃木県が最下位という結果になりました。

 東京や大阪などの主要都市は大きな会議が開催され、ビジネスパーソンが訪れる機会も多いでしょう。一方で、栃木県は東京に隠れてしまうので、観光以外で訪れる機会があまりありません。訪れたことがない人に栃木県の魅力を聞いても、答えられないでしょう。結果、魅力度が低く出てしまう傾向にあると思います。

 しかし、日光国立公園をはじめとした豊かな自然。世界遺産の二社一寺*2、日本遺産の足利学校。ユネスコの無形文化遺産に登録された烏山の山あげ行事、鹿沼今宮神社祭の屋台行事。さらに、いちごの生産量は52年連続日本一ですし、宇都宮餃子やいもフライ、焼きそばといった地域に根づいた食もある。そこで、この機会を逆手にとり、期間限定プロジェクトを行いました。

―それはなんでしょう。

 「47(そこ)から始まる栃木県」プロジェクトです。具体的には、各界で活躍されている「とちぎ未来大使」による、リレービデオレター「ここがいいね!栃木県」。魅力向上につながるCMコピーを募った、「栃木県魅力発信ラジオCMコンテスト」。群馬県、茨城県も巻き込んだ、ご当地クイズ「きたかん3県みりょQイズ」です。こうした取り組みを行ってきたので、今年の魅力度ランキングについては少し期待したいと思っています。

5つの重点戦略のもと、施策を進めていく

―今後の行政ビジョンを教えてください。

 令和3年度を初年度とした5年計画、「とちぎ未来創造プラン」を基本方針とした県政に取り組んでいきます。Society 5.0の実現に向けて、国はデジタル庁を発足させ、デジタル化を進めています。それがコロナ禍による、接触回避の習慣化やテレワークの普及といった環境の変化で、結果的によりスピーディになったと思います。

 その初年度ということで、「Society 5.0の実現に向けたデジタル化の推進」、「新たな日常」の実現、世界的な取り組みとなっている「SDGsの達成」を、5年計画の内容に盛り込みました。そのうえで、「人が育ち、地域が活きる 未来に誇れる元気な〝とちぎ〟」を将来像に掲げています。それを「人材育成戦略」「産業成長戦略」「健康長寿・共生戦略」「安全・安心戦略」「地域・環境戦略」という5つの重点戦略のもと、プロジェクトを進めていきます

 「栃木県が日本をリードするんだ」という気概をもって、新しいとちぎづくりに挑戦していきます。

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福田 富一 (ふくだ とみかず) プロフィール
昭和28年、栃木県生まれ。昭和47年、栃木県庁に入庁。昭和54年、日本大学理工学部建築学科を卒業する。昭和58年、宇都宮市議会議員に就任。平成3年、栃木県議会議員に就任する。平成11年、宇都宮市長に就任。平成16年、栃木県知事に就任する。現在は5期目。

*1:※CMO:Chief Marketing Officerの略で、最高マーケティング責任者

*2:※二社一寺:日光東照宮、日光二荒山神社、日光山輪王寺