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組織の力を引き出すリーダーシップで、群馬のポテンシャルを最大化させる

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新型コロナとの持久戦の先に描く県政ビジョン

組織の力を引き出すリーダーシップで、群馬のポテンシャルを最大化させる

群馬県知事 山本 一太

※下記は自治体通信 Vol.30(2021年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


新型コロナウイルスの感染拡大の収束がいまだ見通せないなか、各都道府県では感染対策と経済の両輪をいかに回していくか、難しいかじ取りを強いられている。そこでは、知事のリーダーシップの在り方が、クローズアップされる局面が多い。群馬県でも、就任2年目の山本氏が県政の先頭に立ち、明確な目標値を掲げ、新型コロナウイルスとの「持久戦」に挑んでいるという。取り組みの詳細や、リーダーシップの取り方などについて、同氏に聞いた。
(インタビューは3月16日に行いました)

「第4波」が到来しても、持ちこたえられる体制を整備

―新型コロナウイルス感染拡大の収束がいまだ見通せないなか、群馬県ではどのような対策を行っていますか。

 県民の健康、命、暮らしを守ることに尽きます。新型コロナウイルス感染症対策と地域経済の活性化を両立させていくためにも、まずは感染症対策をしっかりと進めなければなりません。

 そのために、群馬県では1つの明確な指針を打ち出しています。それは、1週間平均の1日当たり新規感染者数を20人未満に抑えること。それによって、新型コロナの病床稼働率を2割台に抑える。そのうえで、県としては現在400ある病床数を450まで増やす。この450床も、決して希望的観測に基づいた数字ではなく、医師や看護師の配置も想定した現実に稼働可能な病床という前提においてです。県の医師会や県立病院、民間病院とも交渉し、積み上げてきた数字です。

―感染症対策において、明確な数値目標を打ち出していると。

 その通りです。この水準を維持できれば、今後「第4波」が到来し、かりに県内で1日当たり100人規模の感染者が出たとしても、医療提供体制はかなりの期間、もちこたえられ、その間に新たな対策も打てます。この現実感をもった数値目標を掲げるなかで経済を回していくことが重要であり、一時は県内9市町に出していた飲食店の営業時間短縮要請も、現在ではすべて解除することができています。

 私は、新型コロナ対策は持久戦だと覚悟しています。クラスターの発生を完全に抑え込むことはできず、ウイルスを根絶することもできないでしょう。その前提で、いかに実現可能な目標を設定して、備えを強化するかが重要です。その備えに少しでも希望的観測があれば、決して乗り切ることはできません。

知事のパフォーマンスに頼らず、県庁としての総合力で勝負

―この持久戦を率いるうえでは、知事のリーダーシップが問われる場面が多いです。

 いろいろなリーダーシップのカタチがあると思います。知事のタイプもそれぞれでしょう。群馬県の場合は、県庁としての総合力で勝負しようと思っています。私は、知事個人のパフォーマンスに依存する体制では、持久戦を戦い抜くことはできないと思っています。あらゆる事業は知事の決定が必要なのは当然ですが、いかに県職員を信頼し、その能力を引き出すことができるか。そこに知事の本当のリーダーシップが発揮されるべきだと思っています。

 そのために、私が重要だと思っていることが、3つあります。

―それはなんでしょう。

 1つ目は、組織の人心を掌握することです。組織が一枚岩となって同じ方向を目指す体制をつくらなければなりません。私は、知識・見識や発想力、モラルといった点から、「群馬県職員ナンバーワン説」を提唱しているのですが、その優秀な職員を信頼し、活躍を引き出すことこそが、知事の役割だと認識しています。

 そのためには、ときには自ら先頭に立つ姿勢を示すことも大事です。私自身、国会議員を24年間務めてきた経験を活かし、国への陳情・要請を率先して行ってきました。ここでは、政府の対策を批判するのではなく、いかに協力体制を構築できるかに重きを置くことを心がけてきました。

あらゆる県民が幸福な、自立分散型の社会の実現へ

―2つ目はなんでしょう。

 県内の市町村との連携強化です。知事は大統領なみの強い権限をもっていると思われがちですが、県が事業を進めるうえで基礎自治体の協力がなければ、それは絵に描いた餅に終わってしまうのが現実です。私は日頃、県内35市町村の首長とは、「私ほど頻繁に連絡を取り合っている人間はいない」と自負するほど連絡を取り合っており、信頼関係の醸成に努めています。

 そして3つ目が、県議会との協力関係の構築です。車の両輪に例えられる知事と県議会は、是々非々で議論を戦わせるべき関係ではありますが、今回のような緊急時においては、いかに協力関係を築けるかが、政策実現を大きく左右します。昨年度は過去にない数の補正予算案を策定することになりましたが、そのすべてを可決していただき、そのうちのいくつかは全会一致でした。

―この持久戦の先に、どのような群馬県のビジョンを描いているのでしょう。

 群馬県では、20年後をターゲットに、あらゆる県民が性別や年齢、障がいの有無や人種・宗教などを超えて、それぞれが幸福を手にできる自立分散型社会の実現を掲げています。それに向けて県が策定した令和3年スタートの総合計画は、20年後を見据え、バックキャスト思考で描いた長期の「ビジョン」と、今後10年間に重点的に取り組むべき具体的な政策を体系化した基本計画の2本建てへと装いを変えています。

 これらの計画を通じて我々が目指すべきは、「群馬県がもつポテンシャルを起爆させていく」ということに尽きると考えています。

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ニューノーマル時代に向けて、アドバンテージがある

―群馬県がもつポテンシャルを、山本知事はどう捉えていますか。

 コロナ後のニューノーマルの時代には、地域の価値が再定義されてくるはずですが、そのなかで群馬県は非常にアドバンテージがあると考えています。新幹線で首都圏から1時間以内の距離にありながら、雄大な自然や住環境に恵まれ、物価も安い。

 なによりも、都会に生じる「密状態」を回避できる環境があります。総合計画のなかでも、「快疎」というコンセプトを打ち出しているように、テレワークやワーケーションを行うにしても、ニューノーマル時代の快適な環境が群馬県にはあります。

 こうしたポテンシャルを最大限に発揮させていくビジョンを掲げながら、まずは現下のコロナ対策で私なりのリーダーシップを発揮していく覚悟です。

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山本 一太 (やまもと いちた) プロフィール
昭和33年、群馬県吾妻郡草津町生まれ。昭和57年に中央大学法学部を卒業。昭和60年に米国ジョージタウン大学大学院国際政治学修士課程(MSFS)修了。国際協力事業団(JICA)、国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部での勤務を経て、平成7年に参議院議員当選。以後4回連続当選を果たす。その間、外務政務次官、参議院外交防衛委員長、外務副大臣、内閣府特命担当大臣などを歴任。平成28年9月には参議院予算委員長を務める。令和元年7月、群馬県知事に就任。