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DX時代の観光体験を豊かにする、SNS活用の新たな標準とは

北海道富良野市の取り組み

SNSアプリを活用した地方創生策①

DX時代の観光体験を豊かにする、SNS活用の新たな標準とは

富良野市 経済部 商工観光課長 本田 寛康
[提供] インタセクト・コミュニケーションズ株式会社

※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


コロナ禍の厳しい環境にあっても、地方創生は自治体の課題であり続けている。地方創生の実現に当たって、来訪者がストレスなく観光できる地域づくりは、大切な取り組みのひとつだ。富良野市(北海道)ではこうした取り組みの一環として、観光の利便性を高めるさまざまな機能をひとつのSNSに集約し、提供し始めた。本来はインバウンド施策として始めた取り組みだったが、その効果から、現在は対象を国内客にも広げている。取り組みの詳細について、同市の本田氏に聞いた。

富良野市データ
人口:2万1,064人(令和3年2月末現在) 世帯数:1万704世帯(令和3年2月末現在) 予算規模:220億8,220万円(令和2年度当初) 面積:600.71km² 概要:北海道のほぼ中心、上川管内の南部、富良野盆地に位置する。東側に十勝岳連峰の富良野岳、西側に夕張山地の芦別岳がそびえ、南方には東京大学演習林があり、市域の約7割を山林が占める。ラベンダー畑を始めとした観光資源に恵まれ、第3次産業就業者の割合が増加している。
富良野市
経済部 商工観光課長
本田 寛康ほんだ ひろやす

充実した観光体験で、リピート客を増やしたい

―富良野市ではインバウンド需要を取り込むため、どのような施策を推進してきましたか。

 当市を含む6市町村で「富良野美瑛広域観光推進協議会」を構成し、海外へのトップセールスや紙・Web媒体などを通じた情報発信を行ってきました。

 当市を訪れる外国人観光客は中国をはじめとしたアジアの国・地域の観光客が主でしたが、訪れるシーズンは夏季に偏っていました。そうしたなか、令和4年の北京冬季オリンピックの開催が決まってからは、「中国人客のスキー需要も高まる」と期待。近年は中国への誘客策に特に注力していました。

 しかし、観光情報の発信にくわえ、一度訪れてくれた中国人のリピートを増やす施策を模索していたところ、新たに取り組むべき課題が見えてきました。

―どのような課題でしょう。

 ITの普及に伴い生活スタイルが急速に変化している中国の人々に対し、「いかに充実した観光体験を提供するか」という課題です。中国では、SNS内で提供される機能で二次元バーコード決済やオンラインショッピングなどを行うことが一般的です。そのため、デジタル技術を積極的に活用する中国人を呼び込むには、実際の訪問客が利便性を感じられる環境をつくる必要があると考えたのです。

 そこで当市は、SNS『WeChat』を提供している中国のテンセント社にアプローチ。中国で多くのユーザーをもつ『WeChat』を活用しながら、「スマート・トラベル・シティ」づくりに向け協力する内容の覚書を、同社と令和元年に締結しました。

―そこからどのような施策に取り掛かったのですか。

 『WeChat』のさまざまな機能を使えるよう、システムの整備を進めました。その際には国内事業者の協力も必要なため、公募型プロポーザルを実施。インバウンド施策で豊富な実績をもつインタセクト・コミュニケーションズと契約を締結しました。そこから、二次元バーコード決済やバス乗り換え案内、テーブルオーダーといったツールの提供を開始。これにより、観光客が旅マエから旅ナカ、旅アトまで、『WeChat』ひとつで便利な観光を楽しめる基盤ができたのです。特に二次元バーコード決済やテーブルオーダーといったツールには、利用者からの評価はもとより、地域の協力店舗からも「非常に便利だ」との声があり、施策の成果を実感し始めていました。

 しかし、この矢先にコロナ禍が深刻化。国を越えた人の往来ができなくなってしまいました。

『LINE』用機能を拡充し、施策を国内向けにも広げる

―インバウンド施策の大前提が崩れてしまったと。

 ええ。しかし、せっかくここまで力を入れて取り組んできた施策を「中断したくはない」という気持ちも強く、「スマート・トラベル・シティ」づくりの取り組みは継続することにしました。

 ただし、『WeChat』は国内ユーザー数が少ないため、同SNSで提供しているものと同様の機能を、日本で普及している『LINE』でも使えるよう、インタセクト・コミュニケーションズにツールを開発してもらいました。アフターコロナを見据えながらも、コロナ禍の現在、国内客も充実した観光を楽しめる環境づくりを進めているところです。


―地方創生をめぐる今後の方針を聞かせてください。

 デジタル技術を積極的に活用して富良野・美瑛地域の魅力を感じてもらい、人と人との交流をさらに増やしていきたいですね。コロナ禍の厳しい状況は続いていますが、海外との人的往来が再開した際には、より魅力的なまちとなっているよう、引き続き「スマート・トラベル・シティ」構想を推進していきます。



民間企業の取り組み

SNSアプリを活用した地方創生策②

「これからはアプリよりもSNS」 スマホ利用の新常識

※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


専用アプリのインストールは、ユーザーに敬遠されることも

 スマートフォン(以下、スマホ)が世界的に普及するなか、これまでもアプリを活用したデジタル施策を推進してきた自治体は多い。富良野市の取り組みを支援しているインタセクト・コミュニケーションズの担当者は、「コロナ禍のなか、人と人の接触を伴わないデジタルツールの活用は今後、さらに注目されていく」と指摘。「スマホは今後、ニューノーマルの生活を支える必需品として、その役割を増していく」と話す。

 同担当者によると、これまでもさまざまなアプリが提供されてきたが、現在はツール利用のトレンドに変化が起きているという。これまでユーザーは、用途ごとに専用のアプリを一つひとつダウンロードする必要があった。そのため、たとえ便利なアプリであっても、日常で利用する機会が少なければ、ダウンロード自体が敬遠されることもありえる。

二次元バーコードで開く、専用アプリも開発

 しかし今後は、「複数の機能の利用を、ひとつのSNSで完結できる仕組みが主流になる」(前出担当者)という。ユーザーは、必要なタイミングで使い慣れたSNSを開くだけで、さまざまな機能をすぐに使うことができるのだ。

 こうしたなかでインタセクト・コミュニケーションズは、中国で普及する『WeChat』のほか、日本を含む多くの国・地域にユーザーを抱える『LINE』などで使える多様な機能を開発。いずれのSNSも利用していないユーザーでも、スマホさえあれば二次元バーコードリーダーを使って立ち上がる専用アプリも提供している。前出の担当者は、「観光客や生活者が利便性を感じられるまちづくりに活かしてほしい」と話している。



 ひとつのSNSのなかで利用できる機能やツールは、『WeChat』では「ミニプログラム」、『LINE』では「ミニアプリ」と呼ばれている。ここでは、インタセクト・コミュニケーションズが提供するこうした機能の一部を紹介する。


 観光客へのアンケートを電子化。二次元バーコードを読み込むと、スマホ端末の設定に合った言語でアンケートに回答できるため、外国人客、国内客を問わず利用できる。ユーザーは二次元バーコードを読み取るだけで利用できるため、紙のアンケートに比べて配布場所が限定されず、回答率の向上が見込める。



 インタセクト・コミュニケーションズが開発したスマホ決済サービス『IntaPay』を導入することで、『WeChat Pay』や『LINE Pay』『PayPay』など、9つの二次元バーコード決済サービスで利用可能(令和3年3月現在)。自治体では、三鷹市(東京都)が『IntaPay』を搭載したセミセルフレジを市役所の市民課窓口に導入。決済手続きの利便性向上を実現している。



 乗車・降車場所を選択することで、バスの発車時刻と目的地への到着予定時間、運賃を調べられる。富良野市では、「北海道オープンデータプラットフォーム」により、富良野バスの時刻表のオープンデータを活用。『WeChat』や『LINE』、HTML5アプリを通じて国内外の観光客向けに提供している。



 飲食店のテーブルごとに二次元バーコードを準備するだけで、利用客が簡単に注文できる機能。事前に言語別のメニューを用意しておけば、読み取ったスマホの設定に合わせて言語が自動で変換される。飲食店向けの管理画面もあり、メニューや営業時間の変更などの設定が簡単に行える。



 『WeChat』では「ミニプログラム」としてECも利用可能。国内の自治体では、岐阜県が特設サイトを開設し、県産品を販売する事業を実施。販売期間中は「KOC(※)」と呼ばれるインフルエンサーによるライブコマースを実施し、県産品の魅力を発信するとともに販売促進を図っている。

※KOC:Key Opinion Consumerの略。インフルエンサーマーケティング用語のひとつで、SNSで高い発信力をもつ消費者を指す



識者の視点

SNSアプリを活用した地方創生策③

「越境EC」成功の要諦は、豊富な知見をもつ事業者との連携

日本情報経済社会推進協会 常務理事 坂下 哲也

人的な往来が制約を受けるコロナ禍においても実施できるインバウンド施策のひとつに、越境ECがあげられる。最近では、中国で普及している『WeChat』を活用した越境ECに取り組む自治体もある。しかしこうしたなか、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の坂下氏は、「国を越えるデータのやり取りにはリスクも伴う」と指摘する。データ移転で生じえるリスクの詳細や、円滑な越境ECを成功させるためのポイントを同氏に聞いた。

日本情報経済社会推進協会
常務理事
坂下 哲也 さかした てつや

個人データ移転のルールは、各国・地域で厳しさが異なる

―越境ECによるデータのやり取りでは、どのようなリスクが生じえるのですか。

 商品の決済に際しては、クレジットカードを含むユーザーの個人データの移転が伴うため、販売する側は、データの取り扱いをめぐるトラブルのリスクが生じえます。こうした国を越える個人データの移転に関するルールは、各国・地域によって異なります。たとえば、米国は原則自由ですし、日本やEUは個人が承諾すれば自由です。一方で、中国は原則規制されているため、その規制に反する事態が発生すれば取引そのものが継続できなくなるリスクが想定できます。


―そうしたリスクを防ぐにはどうすればよいでしょう。

 販売先の国でトラブルが発生した際に、スムーズに対処できるよう、現地の法律に知見のあるEC事業者との協力が重要です。さらに、その事業者が「CBPR認証」を取得していることも選定のポイントとなります。CBPR認証とは、おもにAPECにおいて流通する個人データの運用状況が、APECプライバシーフレームワーク(※)の基準を満たしている際に受けられる認証のこと。日本では、インタセクト・コミュニケーションズがこの認証を初めて取得(※)しています。

 今後、地方創生を実現するために、インバウンド需要の取り込みは欠かせません。越境ECを含め、インバウンドビジネスの豊富な知見や実績をもつ事業者と連携することは今後ますます重要になっていくでしょう。

※APECプライバシーフレームワーク:APECに加盟する21ヵ国・地域における整合性のある個人情報保護への取り組みを促進し、情報流通に対する不要な 障害を取り除くことを目的として制定されたルールの枠組み
※初めて取得:CBPR認証業務を実施する日本情報経済社会推進協会が、平成28年にインタセクト・コミュニケーションズを第一号認証事業者として認証した

坂下 哲也 (さかした てつや) プロフィール
OS等の開発に従事した後、平成15年に財団法人データベース振興センターで地理空間情報の利活用に関する調査研究に従事。平成18年に財団法人日本情報処理開発協会データベース振興センター副センター長、平成24年に一般財団法人日本情報経済社会推進協会・電子情報利活用研究部部長に就任し、平成27年より現職。

支援企業の視点

地方創生は長期的な視点で「いまできる」インバウンド策を

インタセクト・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長 譚 玉峰

※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


前ページまでは、インバウンド施策を国内の観光客向けにも広げて継続している富良野市の事例や、越境ECを成功させるためのポイントなどを紹介してきた。ここでは、自治体のインバウンド施策で豊富な支援実績をもつインタセクト・コミュニケーションズを取材。コロナ禍でも行えるインバウンド施策について、代表の譚氏に聞いた。

インタセクト・コミュニケーションズ株式会社
代表取締役社長
譚 玉峰タン ユーフェン

インフルエンサーの声は、宣伝広告より大きな効果も

―これまでインバウンド施策に力を入れてきた自治体の現状を教えてください。

 富良野市のようにコロナ禍以前から行っている取り組みを継続しているケースは珍しく、多くの自治体がコロナ禍を受け、従前のインバウンド施策を中断してしまっている状況です。

 しかし、現在の状況が永遠に続くわけではありません。観光を目的とした人的往来の再開に向け、いまできる施策を打つことが、長期的な視点で地方創生を目指すために重要だと私は考えています。そのために、旅マエの潜在的な観光客に地域の観光情報を自治体側から発信することもできますが、より大きな効果を目指すならば、旅ナカの観光客を意識した環境整備も大切になります。

―それはなぜでしょう。

 世界中の個人がSNSや動画で自由に情報を発信できるようになったいま、インフルエンサーの声は、時にオフィシャルな宣伝広告よりも大きな効果を発揮する事もあるからです。そのため、地域を訪れた外国人が感動するような環境の整備や施策に、いまから取り組むことが重要になるでしょう。

―たとえば、どのような施策があげられますか。

 私が有効だと考える3つの施策を紹介しましょう。まずは二次交通(※)をスムーズに利用できるようにすること。自分自身で車を運転できる外国人観光客は非常に限られるため、バス案内を含めた検索システムの構築が大切です。次に、スマホを使ったテーブルオーダーシステムの整備。コロナ禍のなか、不特定多数の人が触れるメニューを使わずに自身の端末で注文したいというニーズは今後高まっていくでしょう。3つ目は越境ECです。単なる商品販売のチャネルとしてではなく、地産品や地域のファンを増やす手段としても活用することが大切です。

 当社では、こうした施策の実現に向けて、SNSアプリ向け機能の提供を通じ、自治体を支援しているのです。

※二次交通:拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通のこと


―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 当社は、海外向けプロモーションやマルチ決済、越境ECなど、自治体のインバウンド施策を多数支援してきた実績があります。今後はこうした実績を活かし、インバウンド向けに限らない魅力ある地域づくりを通じ、地方創生のお手伝いをしていきたいですね。

譚 玉峰 (タン ユーフェン) プロフィール
昭和39年、中国吉林省生まれ。平成5年、大阪大学博士課程を修了後、アンサー株式会社に入社。平成12年、インタセクト・コミュニケーションズ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
インタセクト・コミュニケーションズ株式会社
設立平成12年11月
資本金9,856万円
売上高100億7,200万円(令和3年1月期見込み)
従業員数572人(令和3年1月末現在、連結)
事業内容二次元バーコードマルチ決済、海外インバウンドプロモーション、中国越境EC支援、アフィリエイト大規模運用代行・運用改善、システム開発サービスなど
URLhttps://www.intasect.com/
お問い合わせ電話番号 03-3233-3524(平日9:00〜18:00)
お問い合わせメールアドレスintapay-sales@intasect.co.jp
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