
北海道富良野市の取り組み
SNSアプリを活用した地方創生策①
DX時代の観光体験を豊かにする、SNS活用の新たな標準とは
※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍の厳しい環境にあっても、地方創生は自治体の課題であり続けている。地方創生の実現に当たって、来訪者がストレスなく観光できる地域づくりは、大切な取り組みのひとつだ。富良野市(北海道)ではこうした取り組みの一環として、観光の利便性を高めるさまざまな機能をひとつのSNSに集約し、提供し始めた。本来はインバウンド施策として始めた取り組みだったが、その効果から、現在は対象を国内客にも広げている。取り組みの詳細について、同市の本田氏に聞いた。

充実した観光体験で、リピート客を増やしたい
―富良野市ではインバウンド需要を取り込むため、どのような施策を推進してきましたか。
当市を含む6市町村で「富良野美瑛広域観光推進協議会」を構成し、海外へのトップセールスや紙・Web媒体などを通じた情報発信を行ってきました。
当市を訪れる外国人観光客は中国をはじめとしたアジアの国・地域の観光客が主でしたが、訪れるシーズンは夏季に偏っていました。そうしたなか、令和4年の北京冬季オリンピックの開催が決まってからは、「中国人客のスキー需要も高まる」と期待。近年は中国への誘客策に特に注力していました。
しかし、観光情報の発信にくわえ、一度訪れてくれた中国人のリピートを増やす施策を模索していたところ、新たに取り組むべき課題が見えてきました。
―どのような課題でしょう。
ITの普及に伴い生活スタイルが急速に変化している中国の人々に対し、「いかに充実した観光体験を提供するか」という課題です。中国では、SNS内で提供される機能で二次元バーコード決済やオンラインショッピングなどを行うことが一般的です。そのため、デジタル技術を積極的に活用する中国人を呼び込むには、実際の訪問客が利便性を感じられる環境をつくる必要があると考えたのです。
そこで当市は、SNS『WeChat』を提供している中国のテンセント社にアプローチ。中国で多くのユーザーをもつ『WeChat』を活用しながら、「スマート・トラベル・シティ」づくりに向け協力する内容の覚書を、同社と令和元年に締結しました。
―そこからどのような施策に取り掛かったのですか。
『WeChat』のさまざまな機能を使えるよう、システムの整備を進めました。その際には国内事業者の協力も必要なため、公募型プロポーザルを実施。インバウンド施策で豊富な実績をもつインタセクト・コミュニケーションズと契約を締結しました。そこから、二次元バーコード決済やバス乗り換え案内、テーブルオーダーといったツールの提供を開始。これにより、観光客が旅マエから旅ナカ、旅アトまで、『WeChat』ひとつで便利な観光を楽しめる基盤ができたのです。特に二次元バーコード決済やテーブルオーダーといったツールには、利用者からの評価はもとより、地域の協力店舗からも「非常に便利だ」との声があり、施策の成果を実感し始めていました。
しかし、この矢先にコロナ禍が深刻化。国を越えた人の往来ができなくなってしまいました。
『LINE』用機能を拡充し、施策を国内向けにも広げる
―インバウンド施策の大前提が崩れてしまったと。
ええ。しかし、せっかくここまで力を入れて取り組んできた施策を「中断したくはない」という気持ちも強く、「スマート・トラベル・シティ」づくりの取り組みは継続することにしました。
ただし、『WeChat』は国内ユーザー数が少ないため、同SNSで提供しているものと同様の機能を、日本で普及している『LINE』でも使えるよう、インタセクト・コミュニケーションズにツールを開発してもらいました。アフターコロナを見据えながらも、コロナ禍の現在、国内客も充実した観光を楽しめる環境づくりを進めているところです。


―地方創生をめぐる今後の方針を聞かせてください。
デジタル技術を積極的に活用して富良野・美瑛地域の魅力を感じてもらい、人と人との交流をさらに増やしていきたいですね。コロナ禍の厳しい状況は続いていますが、海外との人的往来が再開した際には、より魅力的なまちとなっているよう、引き続き「スマート・トラベル・シティ」構想を推進していきます。


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