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佐賀県多久市

平成30年度におけるICT教育の取り組みが総務大臣賞を受賞

「児童生徒の学び方改革」にくわえて「教職員の働き方改革」も行った多久市の挑戦

多久市長 横尾 俊彦

※下記は自治体通信 Vol.20(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


平成21年度に佐賀県で最初に小中学校の全校普通教室へ電子黒板を設置するなど、早くからICT教育を積極的に推進してきた多久市(佐賀県)。同市が平成30年度に取り組んだ、「学校ICT環境の整備による、児童生徒の学び方と教職員の働き方改革」が総務大臣賞を受賞した。いったい、どのような取り組みなのか。市長の横尾氏に、ICT教育に熱心な理由も含めて聞いた。

セキュリティを担保しつつ、システムをフルクラウド化

―多久市が進めている「学校ICT環境の整備による、児童生徒の学び方と教職員の働き方改革」の詳細を教えてください。

 プロジェクト名のとおり、学校に教育ICT環境を整備することによって、児童生徒の学び方改革だけにとどまらず、教職員の働き方改革も実現させる取り組みです。

 具体的には、小中一貫校である多久市立東原庠舎(とうげんしょうしゃ)中央校、多久市立東原庠舎東部校、多久市立東原庠舎西渓(せいけい)校の3校において、各学校に設置していたサーバをなくしました。その代わりにパブリッククラウド(※)を利用し、学習系と校務系のシステムにおいて最先端のセキュリティを担保しつつ、フルクラウド化を実行したのです。

 そして、「児童生徒の学び方改革」の取り組みとしては、3校にタブレット端末190台を整備。ICT環境を通じた、「学びあい・協働学習」を進めていくことを目的としました。各教室にブロードバンド環境を整備しているため、いわゆる「サクサク状態」で通信が滞ることなく授業を進めることが可能に。体育館にも同じ環境を整備しているため、災害時に避難所になった際、避難者も利用できます。

※パブリッククラウド:業界・業種を問わず企業もしくは個人に向けてクラウドコンピューティング環境を提供しているオープンな形態を指す。専用のハードウェアなどを所有することなく、企業でも個人でも利用したい人が必要なときに必要なだけ自由にサーバやネットワークリソースを使えるシステム

―「働き方改革」としてはどのようなことを実施したのですか。

 3校の全教職員を対象に、190台のノートPCを整備。文章のデジタル化によるスムーズな情報共有やペーパーレス化、さらにはテレワークの運用を実施することにより、校務の効率化と時間外労働の削減を図るのが狙いでした。

これまでの取り組みを土台に、新たなICT教育を実践

―なぜそのような取り組みを行おうと考えたのでしょう。

 そもそもの発端としては、ICT教育が子どもの未来をつくるためには必須だと考えたからです。

 子どもたちが大人になるときは、IoTやAIがさらに進化するでしょう。すると、就職先の仕事や地域活動において、ICTを使いこなすのは大前提になっているはず。では、「そのトレーニングはどこで受けるのか」というと、やはり学校なのです。だったら、そこを行政がしっかりと支援しないとダメだよね、と感じたのです。

 そのため、当市では平成21年度に小中学校全校の普通教室へ電子黒板を設置し、専属の指導員を配置。平成28年度には、総務省の「先導的教育システム実証事業」に参加し、小学5年生を対象にクラウドを活用したタブレット端末による授業を行うなど、ICT教育に取り組んできました。

―今回もそうしたICT教育の延長ということですね。

 はい。平成28年度の取り組みによって、その有効性が確認できたうえに、近年は「教職員の多忙化」が社会問題となってきていました。そのため、平成28年度の事業をベースに、教職員の働き方改革にも着手しようと考えたのです。

―予算はどのように工面したのでしょう。

 総務省の「地域におけるIoTの学び推進事業」の実証事業に応募し、採択されました。また、実際の運用面においては、平成28年度の事業で支援を受けた日本マイクロソフトとソフトバンク コマース&サービス(現:SB C&S)と再び連携し、官民による取り組みを行えるようになったのです。

 当市のようなローカルな自治体では、十分な予算があるわけではありません。そのため、国による補助金の活用や官民連携で民間の知恵や技術の支援を受けることは大切だと考えているのです。特に民間の方が、ローカルなりに一生懸命ICT教育に取り組んでいる教職員をみて、熱心に、身も心も入れ込んでくれました。現場で新しい提案をいっぱいしてもらっているのが、ありがたいことですね。

教職員の約3分の1が、テレワークを活用した

―成果はありましたか。

 教育委員会からの報告によれば、児童生徒のなかに、「学びあい・協働学習」は浸透しているようです。タブレット端末を使ってグループワークを行い、それをオンラインで発表する、ということが以前はできませんでした。また、私が授業を視察した際には、休み時間を使って自主的に遊び感覚でプログラミングの学びをしていたりするんです。やらされるのではなく自ら興じてやるという点は、かなり評価できますね。

 そして教職員にも、着実に成果は出てきているようです。全員がノートPCをもって会議を行うため、ペーパーレス会議の常態化につながっていますし、ICT機器による勤務管理も定着しています。さらに、教職員同士で資料や教え方の共有がスムーズになり、校務の効率化の促進につながっています。教職員間に「効率化はやればできる」という意識が広まっているのも意義が大きいですね。

 また、教職員の約3分の1がテレワークを活用しています。

―ニーズがあったのですね。

 ええ。育児や介護で時間的に制約がある教職員も、休日にわざわざ学校に出向く必要がなく、家で空いた時間を調整しながら作業ができますから。そのため、教職員の超過勤務時間は実際に減っているようです。

 また、以前は家の事情でどうしても残業ができず、休職あるいは退職というケースが全国的にもあったようでしたが、その解消にもつながると期待しています。


ソリューション体験を、子どもに学ばせるのは重要

―今後の教育ビジョンを教えてください。

 引き続き、ICT教育を強化していきます。以前、ICTにかんするあるイベントで、実際に小中学生が「こういうプログラムをつくりました」と発表している展示ブースがあったんです。そのなかのひとりが、「掃除の当番表」を端末で共有できる掲示板方式に変えた話をしていました。すると次は、「これで誰かを喜ばせたい」と思ったそうです。そして、その子はお母さんのために、近所の掃除当番表にも導入しようと考えて実行し、喜ばれたということでした。

 私がこの話で思ったのは、子どもたちはソリューションを体験すると、手ごたえを感じてうれしくなり、それで人を喜ばせるためのソリューションをまたつくりたくなるんだということです。これって、大人の人が仕事でやっているのとまったく同じですよね。

 私は造語でICTを「I Create Tomorrow」だと思っています。子どもに、「僕が、私が未来をつくる」と思ってもらえるようなICT教育を行っていきたいですね。


横尾 俊彦 (よこお としひこ) プロフィール
昭和31年、佐賀県生まれ。昭和55年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、松下政経塾に1期生として入塾。松下幸之助氏から、直接に薫陶を受ける。松下政経塾を卒塾後は、地域活性化などにかかわる。平成9年、多久市長に就任。現在は6期目。内閣府の地方分権改革推進委員会委員など歴任。平成28年に全国ICT教育首長協議会を立ち上げ、会長に就任。
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