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広範囲に通じて災害時に強い、MCA無線で確実な情報伝達を 

埼玉県滑川町の取り組み

防災行政無線の整備

広範囲に通じて災害時に強い、MCA無線で確実な情報伝達を

滑川町 総務政策課 課長 大塚 信一
[提供] 一般財団法人移動無線センター

※下記は自治体通信 Vol.19(2019年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

防災対策をよりいっそう強化していくため、各自治体ではさまざまな施策が行われている。防災行政無線の見直しも、その強化策のひとつだ。そうしたなか、滑川町(埼玉県)では移動系無線を平成30年度末からハンディ型のMCA*1無線に新しく切り替えた。同町の担当者である大塚氏に、切り替えた背景や導入した決め手などを聞いた。

[滑川町] ■人口:1万9,196人(令和元年7月1日現在) ■世帯数:7,793世帯(令和元年7月1日現在) ■予算規模:96億7,354万8,000円(令和元年度当初予算)■総面積:29.68km2 ■概要:埼玉県のほぼ中央にあり、都心から60km圏内に位置している。全町域の60%がなだらかな丘陵地で、北東部には国営武蔵丘陵森林公園が広がっている。町の中央を滑川が、南東部を市野川が流れ、かんがい用水として約200個のため池が点在。滑川を境に、北部は農業地帯、南部は住宅と工業地帯となっている。公共交通機関や自動車を利用して1時間という絶好の地理的条件を活かし、首都圏のレクリエーション地域として発展してきた。
滑川町
総務政策課 課長
大塚 信一 おおつか のぶいち

丘陵地という性質上、「車載型」では限界があった

―新たな防災行政無線を導入した背景を教えてください。

 きっかけは、防災行政無線をアナログからデジタルに移行するためです。それにともない、移動系無線を「車載型」から「ハンディ型」に変更しようと考えたのです。

 滑川町は丘陵地が多く、車では行けないエリアもあります。そうした場合は、一旦職員が徒歩で現場状況を確認し、車に戻ってから本部とやりとりしなければならない。それゆえ、時間のロスはどうしても起こりえます。その点、ハンディ型だと職員が現地に行って、その場で通信が可能ですから。

 くわえて、地域によっては防災無線が届きにくいエリアもありました。そのため、町内のどこでも通信がつながるようなハンディ型無線を検討していたのです。

―どのように検討していったのでしょう。

 まず、着目したのは「IP無線」です。こちらは携帯電話の回線を使った無線で、滑川町では全エリアで携帯が通じることから適しているのではないか、と。ただ、もし災害が起こった場合、たとえば携帯電話も含めたいっせい利用などで通信に輻輳(ふくそう)*2が起こらないとも限りません。そこで、過去の災害時において多くの活用実績をもつ「MCA無線」にも注目したのです。

 「広範囲に通じて、災害時に強い通信を」という観点で引き続き検討を続けるなか、IP回線と二重の通信が可能なMCA無線がリリースされることを聞いたのです。「これなら要件を満たしている」と考えました。

 また、定額制で初期導入費用が抑えられることも考慮し、導入することにしたのです。

普段から助けあえるような、コミュニティづくりを支援

―導入後はいかがですか。

 平常時ですが、いままで車載型では通じなかったエリアでも通信できるのを確認ずみです。庁舎内も含めて基本的にすべてMCAでカバーできていますが、万が一、MCAが通じなかった場合でも、IPで二重化されているため安定した通信が期待できます。災害時には、なにが起こるか予測がつきません。その点、IPもあわせて利用できるのはやはり心強いと感じています。

 また、これも災害時ではありませんが、町内における行方不明者の捜索にMCA無線を活用しました。ボタンひとつで通じるうえに、所持者全員といっせい通話が行えるためスムーズな情報伝達ができ、早期発見につながりました。

―今後の防災対策における方針を教えてください。

 災害は、まったなしに起こります。そのため、普段から防災に対する意識づけを行っていくことが重要。それは、職員はもちろん、町民の方も含まれます。

 滑川町では、昔からつき合いがあり、なにかあれば近所の方同士で声かけができる仕組みがすでにできているエリアがある一方、区画整理によって新住民が増えているエリアがあります。そういった新しい方たちにも、防災訓練の参加を働きかけるなどして、防災意識を高めてもらうとともに、普段から助けあえるようなコミュニティづくりの支援を行っていきます。

 MCA無線も行方不明者捜索のように、普段から使用することでいざというときに使い慣れておきたいですね。


支援企業の視点

複数の通信手段をもつことで、万が一の際に「安心の担保」となる

一般財団法人移動無線センター 関東センター利用推進部 防災・公共安全利用推進室長 本間 達也
[提供] 一般財団法人移動無線センター
一般財団法人移動無線センター
関東センター利用推進部 防災・公共安全利用推進室長
本間 達也 ほんま たつや

―防災行政無線の刷新を検討している自治体は多いのですか。

 ええ。アナログ方式における周波数の期限が迫っているのはもちろん、新スプリアス*3規格に対応できない無線も将来使えなくなります。老朽化も含め、そうした背景から入れ替えを検討している自治体は多いですね。

―そうしたなか、MCA無線はどのような特徴をもっているのでしょう。

 もともとは、運送会社で車と配送センターの業務連絡などに使用されていた無線です。それが阪神・淡路大震災で活用されたことで注目され、「災害時に強い無線」として自治体や企業に普及していったのです。

 特徴は、やはり「つながりやすさ」ですね。通信は同一ユーザーに特定されているほか、通信時間を制限しているため、輻輳もほぼありません。もしMCAがつながらない場合でも、IPと二重化されているので安定した通信が確保できるのです。

 また、自営の中継局には非常用発電装置が完備されており、停電でも通信が継続できます。さらに、定額制で初期投資費用も大幅に抑えられるのです。

―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。

 MCA無線は現在、338の自治体で導入されているほか、多くの中央省庁でも導入予定です。すでにデジタル防災行政無線を導入ずみでも、「安心の担保」として追加で導入している自治体もあります。災害時に強いMCA無線は、万が一の際に通信の「最後の砦」になるのです。通信認知・普及を進めることで、防災に貢献していきたいですね。

本間 達也(ほんま たつや)プロフィール
東京都生まれ。昭和59年に財団法人移動無線センター(現:一般財団法人移動無線センター)に採用される。利用推進事業を担当する。平成30年から、現職の防災・公共安全利用推進室長として中央省庁、地方自治体に対してMCA無線の推進を行っている。

一般財団法人移動無線センター
設立 平成24年4月(創業/昭和39年7月)
事業内容 MCA事業(マルチチャンネルアクセスと呼ばれる、複数の周波数を多くの利用者で共用する陸上移動通信システムの中継局を全国に整備した、業務用移動通信サービス)
URL https://www.mrc.or.jp/
お問い合わせ電話番号 03-5323-5509

*1:※MCA : Multi-Channel Accessの略

*2:※輻輳 : 電話回線やインターネット回線にアクセスが集中し、つながりにくくなること

*3:※スプリアス : 無線設備から発射される電波のうち、本来必要とされる所定の周波数を外れた不必要な電波のこと。従来の規格の使用期限は令和4年11月30日まで