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滋賀県がグローバルに発信する新しい社会発展のカタチとは

環境を保全・再生しながら経済を成長させる「琵琶湖モデル」に世界が注目しています

滋賀県知事 三日月 大造

近畿地方にとっての貴重な水源、琵琶湖を抱える滋賀県。古来、自然や社会との共生を強く意識してきた歴史と風土は、「三方よし」の精神を受け継ぐ近江商人を輩出してきたことでもわかる。現在も、自然との共生と経済成長をともに追求する独自の成長モデル「琵琶湖モデル」を打ち出している。滋賀県が発信する経済成長の新しいカタチとは。同県知事の三日月氏に聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.16(2018年12月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

基本構想に盛り込まれた「新しい豊かさ」という発想

―滋賀県では、三日月知事就任以降、「新しい豊かさ」という理念を掲げて県政を進められてきました。その背景を教えてください。

 県政を担うにあたり、めざすべき滋賀県の姿を描くうえで、歴史や風土に裏打ちされた思想を軸にすべきと考えました。

 滋賀県は、圧倒的な存在感をもつ琵琶湖を間近に見ながら、琵琶湖に流れ込む山々からの水の流れ、また下流で水を使う人々などと向きあってきた歴史があります。そこからは、自然を育み、周囲の人々や社会とのかかわりを大切にする精神性が培われてきたと考えています。

 その精神を軸にしたとき、これから求めるべき豊かさとは、「自分」だけでなく、「今」だけでもなく、「もの」だけでもない。求めるべきは、みんなが調和しながら持続的に実感できる「心」の豊かさだと。それを、「新しい豊かさ」という言葉で表現したのです。

―「調和」と「持続可能性」がキーワードになりそうですね。

 そのとおりです。滋賀県では、国連が新たな開発目標として掲げるSDGs(※)を県政に取り込むことを、平成29年1月、全国に先駆けて宣言しました。

 これも、近江商人の「三方よし」など、滋賀に息づく、経済・社会・環境の調和につながる考え方が、SDGsの精神に合致すると考えたからです。

※SDGs:持続可能な開発目標の意味。2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標

―現在、新たな基本構想の策定に取り組まれていると聞きます。

 ええ。基本構想の最終年度にあたる今年は、2030年度までの新たな基本構想の策定を進めているところです。

 新たな基本構想の原案では、現基本構想の考え方をより発展させ、SDGsの特徴を取り入れることにより、経済、社会、環境のバランスが取れたものになっています。将来世代も含めただれもが新しい豊かさを感じながら、一人ひとりが尊重され自分らしく生きることができる、「未来へと幸せが続く滋賀」を、みんなの力でつくりたいと考えています。

 また、より多くの方の共感がえられる表現や理念となるよう、議論の場となる審議会の編成を従来から一新し、各分野の若手リーダーや、次代を担う高校生にもくわわってもらいました。

 その結果、従来にない多角的な視点を交え、一年半の議論を重ねて、一定の答申をまとめていただきました。

多くの県民の要請を反映し動き出した新施策「健康しが」

―知事就任2期目のポイントはなんですか。

 「健康」です。これは、人の健康にとどまらず、社会の健康、自然の健康も包含した概念です。知事就任以来、さまざまな施策を実行に移してきた過程で、県民世論調査も実施してきました。「どんなときに豊かさを感じるか」という問いに対し、7割の方々が「健康」と答えたのです。

 そこで、「新しい豊かさ」を追求してきた県政として、「健康」を主軸においた施策群を進めることを、強い意志をもって決めました。新たな基本構想に先立つ今年度から、「新しい豊かさ」をグレードアップし、具現化させる施策として「みんなでつくろう! 健康しが」をスローガンに掲げているのも、そのためです。

―「健康しが」の具体的な内容について教えてください。

 「人の健康」「社会の健康」「自然の健康」という3つのセクターから構成された施策群です。

 厚生労働省の調査を見ると、都道府県別の平均寿命は、男女ともに滋賀県は全国トップクラスです。ほかにも、健康寿命では全国1位という調査もあります。人生100年時代に、身体と心の健康を保ち、いかに自分らしく生きて豊かさを享受するか。そのための施策を準備しています。

 また、現基本構想でも重視し、一定の成果を上げてきた「社会の健康」では、近年多発する災害に対する備えを引き続き強化します。琵琶湖は滋賀県の貴重な財産ですが、一方で水害をもたらす恐れの対象でもある。日本でもっとも多い81の天井川を有するのも、滋賀です。防災力の強化は今後も重要課題と認識しています。

滋賀県にとって永遠のテーマ「琵琶湖といかに付き合うか」

―「自然の健康」についても聞かせてください。

 「琵琶湖といかに付き合うか」は、滋賀県にとっては永遠のテーマです。滋賀県ではかつて、経済発展の追求の結果として、深刻な水質悪化を招いた苦い過去があります。一方で、その環境破壊から立ち直り、環境を保全・再生しながら経済発展してきた経験もある。実際に、農薬や化学肥料をなるべく使わない「環境こだわり農業」を早くに打ち出したのが滋賀県であり、作付面積は日本一(※)です。工業廃水は厳しい規制を敷くなかで、国内外の有力企業を誘致し、経済を成長させてきました。

※作付面積は日本一:「環境保全型農業直接支払交付金」の取組面積が平成24年度から平成28年度まで5年連続日本一

世界が注目する取り組み「琵琶湖モデル」

―「自然保護と経済発展の両立は、不可能ではない」と。

 ええ。それは、滋賀県の歴史が証明しており、環境の保全・再生を進めながら経済を発展させる取り組みが「琵琶湖モデル」という名称で世界に知られています。たとえば、中国湖南省の洞庭湖周辺では、滋賀県の技術導入によって、水質浄化を図りながら環境保全型農業に取り組むプロジェクトが進行中です。また、ベトナムのハロン湾でも、環境浄化と経済発展を同時進行させる取り組みで滋賀県が協力しています。

 昨年、ベトナムのグエン・スアン・フック首相が来日した折、「ぜひ滋賀に行きたい」と希望されました。「琵琶湖モデル」に対する期待の高さを感じましたね。日程の都合で来県こそかないませんでしたが、会談の機会をえて、有意義な意見交換ができました。首相はベトナム発展の未来を滋賀に求められているのだと感じました。

―今後の行政ビジョンを教えてください。

 今後も、滋賀らしい生き方、価値観を自信と確信をもって、世界に向けて発信していきたい。その際に大切にしたいのは、終焉の地を滋賀に求めた俳聖・松尾芭蕉が提唱した「不易流行」の理想です。いつまでも変化しない本質的なものを忘れず、新しく変化を求めていく。その姿勢は忘れず、もち続けたいですね。

三日月 大造(みかづき たいぞう)プロフィール

昭和46年生まれ。滋賀県出身。平成6年に一橋大学経済学部を卒業後、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)に入社。平成14年に公益財団法人 松下政経塾に入塾。平成15年に衆議院議員に初当選し、以降4期連続当選。平成21年に国土交通大臣政務官、平成22年に国土交通副大臣に就任。平成26年に滋賀県知事に就任。現在は2期目を務める。

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